ある年の冬、みぞれ雨の夜に、クラシック・コンサートを聴きにいった。
最初に、いつも陽気な指揮者とオーケストラが、現代作曲家の作品を演奏した。
プログラムの2曲目はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲だった。
舞台に出てきたソリストはまだ高校生のような男の子で、恥ずかしそうにおじきをし、控えめにバイオリンを構えた。
ずいぶん若いソリストなんだなぁ・・・とのんびり眺めていた。
オープニング・トゥッティの後、彼の弓が弦に触れた時、目が見開き、両耳がぴんと立った。
天上からこぼれ落ちてきたような音だった。会場から一切の物音が消え、思わず姿勢を正していた。
彼のモーツァルトは歌うように軽やかで、時にとても哀しかった。
目を閉じると、春の雪融けのイメージが浮かんだ。
演奏が終わり、前に座っていた初老の女性が席を立ちながら、こちらを見て言った。「彼はすばらしかったわね・・・」
アウグスティンの演奏を初めて聴いた夜だった。
最初に、いつも陽気な指揮者とオーケストラが、現代作曲家の作品を演奏した。
プログラムの2曲目はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲だった。
舞台に出てきたソリストはまだ高校生のような男の子で、恥ずかしそうにおじきをし、控えめにバイオリンを構えた。
ずいぶん若いソリストなんだなぁ・・・とのんびり眺めていた。
オープニング・トゥッティの後、彼の弓が弦に触れた時、目が見開き、両耳がぴんと立った。
天上からこぼれ落ちてきたような音だった。会場から一切の物音が消え、思わず姿勢を正していた。
彼のモーツァルトは歌うように軽やかで、時にとても哀しかった。
目を閉じると、春の雪融けのイメージが浮かんだ。
演奏が終わり、前に座っていた初老の女性が席を立ちながら、こちらを見て言った。「彼はすばらしかったわね・・・」
アウグスティンの演奏を初めて聴いた夜だった。