都会を歩く 詩:金井雄二
都会の街中をあるいているとき
ふいに 自分の幼かったときのことを
思い出しませんか
そんなこと 想い出しませんよね
だって 都会には言葉があふれていますから
話し相手がいなくても不自由はしないのです
光だってどこに行ってもあふれていますから
闇の中をとぼとぼ歩いた記憶なんか
とっくにどこかに消えていますね
高層ビルの
窓ガラス
午後三時の陽ざしが
反射して
目が痛い
あのビルの向こう側に駅があるのです
さて、こちら側にいる僕は
あのビルの向こう側にどうやって
行けばいいのですか
ぼくにティッシュペーパーを
手渡して下さる方がいました
でも他には何もくださいませんでした
都会の街中を駅に向かって歩いています
幼かったときのことは
想い出さなかったのですが
自分が独りなのだということは想い出したのです