今、半分空の上にいるから

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殺人は眠り続ける 小説編その21

2014-12-05 03:42:48 | 殺人は眠り続ける(完結)
 2006年3月、春休みの日曜日。 吉田家に帰省していた美帆は、送ってくれた洋海と一緒に新幹線で戻りました。 線路の下に作られた通路を通り、在来線側の駅の前で待っていると、マスクをした康太が迎えに来ました。 「お父さん、風邪?」 「何か喉が膿んだ。」 「熱は?」 「ある。」 「何で昨日電話した時言わないの!?」 「今日は下がると思ったから…。」 「車運転して大丈夫なの?」 「まあ、何 . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その20

2014-11-19 08:13:15 | 殺人は眠り続ける(完結)
 2011年10月、金曜日。 康太の出張と文代の里帰りの日程に合わせて、美帆が鹿児島から晴海の家に泊まりに来ました。 ここにいた時に使っていた自分の部屋に、荷物を置いた美帆が、晴海の部屋に来ました。 「お前、今日学校は?」晴海が美帆に聞きます。 「金曜日、1日休んだ。日曜日にお父さんと帰る。お母さんと弟の竹志は、お父さんと一緒に、お祖父ちゃん家に泊まってから、お母さんの在所にしばらくいるの。」 「 . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その19

2014-11-16 02:39:47 | 殺人は眠り続ける(完結)
 2011年9月。 「え?おじさん、まだしばらく鹿児島なの?」 晴海が洋海に聞きました。 「同じとこで異動になったって。まあ、一応昇進らしい。」 「美帆どーすんの?受験とか。」 「このまま高校は鹿児島に住んで通うそうだ。受験とかはどうするかまだ分からん。」 「ふーん。」 もう少ししたら、美帆が帰って来るのかと思っていた晴海は、つまらなくて、少しがっかりしました。 「じゃあ、ちょっと出かけるから。」 . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その18

2014-11-14 18:16:31 | 殺人は眠り続ける(完結)
 1993年。 東京旅行からしばらく経った10月29日、陸がバイト先の飲食店に行くと、バイト仲間の津坂由雄が慌てて、近づいて来ました。 「円山。」 そう、東京に一緒に旅行に行った彼です。「星河が警察に事情聴取を受けてるって。」 「はぁ?何で?」陸が驚いて聞き返します。「大麻不法所持だって。」「ええ!?アイツが大麻なんてやってるの見た事ないけど。何かの間違いじゃね?」「本人も否定してて、全然身に覚え . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その17

2014-11-11 02:35:39 | 殺人は眠り続ける(完結)
 1993年10月。 「あー、何か緊張したー。」 ホテルを出た、円山陸と星河勲夫は待ち合わせ場所に向かいました。 「おー、お待たせ。」 待ち合わせ場所には、彼らと同級生のもう一人のバイト仲間が待っていました。 「どーだった?高級ホテルでディナーのコースは。」 「もー緊張して、味よく分からねー。」 「そうだ、ロビーに月森ひじりがいてさ…。」 「マジで!?。」 「急いで外出て、インスタン . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その16

2014-11-09 04:45:30 | 殺人は眠り続ける(完結)
 晴海が居間に戻ると、洋海と砥代子が何か深刻そうに話していました。「?どうかした?」 「今、九州に電話したんだけど、今度の土日でお父さん、美帆のとこに行くから。」 「ええ!?何かあったの?」 「ちょっと電話じゃ様子が詳しくわからないから。」 「俺も行く。」と晴海がいいました。 「お前も!?……まぁいいか。一緒にこい。」 そして、次の土曜日。 鹿児島の空港から、康太の社宅は近いので、飛行機を降りてそ . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その15

2014-11-06 14:59:07 | 殺人は眠り続ける(完結)
 「あれ?」 晴海は部屋の床に写真が落ちているのに気が付きました。 「これ……。」 高校生の文化祭か何かで、クラス皆で撮った様なスナップ写真です。 見覚えのあるセーラー服の少女が写ってます。 (おばさんだ……。)亡くなった宮子です。(かわいい。今の美帆に似てる。) あれ?と言う事は………、写真に写っている人達を見て見ると、(あ、おじさん、こっちは文代さんだ。 おじさん、若い。 やっぱり美帆はおじさ . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その14

2014-11-06 00:51:06 | 殺人は眠り続ける(完結)
 2010年8月。 晴海は居間の開き戸で、何やらごそごそ探してます。 「ちょっと、外で一回埃を払ってよ。」 母、砥代子に文句を言われてます。 「美帆はいつ帰るって?」テレビを観ていた父、洋海が聞きました。 「夏休みいっぱいって言ってたけど、何日かわかんない。」晴海が答えます。 「夏休み最後の土日に迎えに行かなきゃいかんかな?」と洋海。 「一回電話してみる。」 (本当に父さんは美帆には甘い。) 自分 . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その13

2014-11-03 16:01:12 | 殺人は眠り続ける(完結)
 岡山家の続き―――。 晴海は仏壇に手を合わせました。仏間には康太の祖父母の写真の横に、宮子の写真が飾られてます。 「お母さんにお供えありがとうって伝えてね。」康太が晴海に言いました。 「はい。」 晴海は立ち上がりました。 「じゃあ、これで帰ります。お盆にお墓参りに来ます。」 「ありがとう。」 駅まで美帆が晴海を送ります。 「お前いつまでこっちいるの?」晴海が尋ねます。 「15日。その後で、お父さ . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その12

2014-10-31 03:54:27 | 殺人は眠り続ける(完結)
 「…おじさん。」 晴海が話しかけると、美帆と話していた、康太が晴海の方に顔を向けました。 「この写真って、もっと鮮明に写し出せる?」  「パソコンを使って画像処理すれば、かなり細かい部分まで分かると思うよ。おじさんちに、その機材はないんだ、残念だけど。」 「ふーん。そうなんだ…。」 晴海はもう一度写真を眺めました。 「でも、話の流れからして、かなりヤバそうな感じだから . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その11

2014-10-29 23:28:46 | 殺人は眠り続ける(完結)
 康太の言葉に、美帆が驚きました。 「て、事は‐、星河さんが捕まって、円山さんが亡くなって、次の年にこのアイドルが引退して、私達が生まれた?なんか短期間に集中してるよね。」 「ちょっと、待て。薬物所持で捕まったの、まだ誰か分かんないだろ。」晴海が反論しました。 「星河ってヤツで合ってるよ。」と康太が言いました。 「……新聞記事の切り抜き見て思い出した。このホテルの写真を . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その10

2014-10-28 02:46:46 | 殺人は眠り続ける(完結)
 2010年8月。 「いらっしゃい!どうぞ、上がって。」 「お邪魔します。」 康太の妹の三根子に案内されて、晴海は中に上がりました。 ここは康太の実家、つまり美帆の父方の祖父母の家です。 康太が帰省してから、美帆も泊まりに来ています。 「晴海、こっちに来て。」 美帆が廊下から顔を出して、晴海を呼んでます。 「やあ、来たね。」 康太が狭い真っ暗な部屋から出てきました。 「ここは?」 「物入れ。暗室代 . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その9

2014-10-27 02:16:16 | 殺人は眠り続ける(完結)
 「九州まで高校生の女の子一人で!?」 「うん。」 「いや、危ないだろ。お義母さんと一緒に行けば?」 「お義母さん、里帰り出産したばかりだから、すぐにはお父さんの所に帰らないし。もうすぐ夏休みだから、大会終わってから。」 「でも、おじさんもお盆休みにはこっち来るんじゃないか?実家こっちだから。」 「あ、そうか。文代さん…、お義母さんも実家近いもんね。」 「お義母さんって、おじさんとおばさんの高校の . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その8

2014-10-26 10:53:06 | 殺人は眠り続ける(完結)
 「……怖い話?」 「ホラーじゃないよ。本格ミステリーだから。」 「あーそーなんだー…。」 「まあ、要するに、今現在は誰も知られてない殺人の話。………犯人以外は。」 晴海の言葉に、美帆はゾクッとしました。 「そうゆう事言うと怖いでしょ!」 晴海が続けます。 「今年(2010年)さ、4月に殺人事件の時効が廃止されて。」 「そうゆうニュースあったね。」 「円山さんのは1993年で17年前だから、201 . . . 本文を読む
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殺人は眠り続ける 小説編その7

2014-10-25 03:11:58 | 殺人は眠り続ける(完結)
 「警察に届ける?」 「もしお腹の子の事聞かれたら…。」   「困る。じゃあ、止める。」……沈黙の後、康太が話します。 「この前の葬式の時に詳しい同級生に聞いたんだけど、捕まったヤツ、薬物の常用は否定してるって。運び屋みたいに利用されたって、本人は言ってるらしい。」 「?何で知ってるの?」 「その陸の友達、死ぬ2日前に陸と話したらしい。」 「えっ?」 「宮 . . . 本文を読む
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