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殺人は眠り続ける 小説編その9

2014-10-27 02:16:16 | 殺人は眠り続ける(完結)

 「九州まで高校生の女の子一人で!?」

 「うん。」

 「いや、危ないだろ。お義母さんと一緒に行けば?」

 「お義母さん、里帰り出産したばかりだから、すぐにはお父さんの所に帰らないし。もうすぐ夏休みだから、大会終わってから。」

 「でも、おじさんもお盆休みにはこっち来るんじゃないか?実家こっちだから。」

 「あ、そうか。文代さん…、お義母さんも実家近いもんね。」

 「お義母さんって、おじさんとおばさんの高校の同級生だっけ?」

 「円山陸さんも。でも、文代さんは、陸さんとの件は全然知らないの。
 何か事件が絡んでたみたいだから、お父さんもお母さんも他の人には話さなかったって。」

 「そうなんだ。」

 「じゃあ、お盆休みにお父さんが来たら、話を聞いてみる。」

 「おじさん、単身赴任みたい。」

 「だって、九州に転勤になったから、結婚を決めたんだから。結婚後、すぐにお義母さん、妊娠して、早めに里帰りしたし、私は中3からずっとこっちだし。」

 「……おじさん、もしかしたら、このまま単身赴任?」

 「うっ…。あっ、ほら、でも、家族用の社宅借りてるから、単身赴任だとダメらしいし…。弟がちっちゃい内は、お義母さんも、こっちにいる事が多いかも。まあ、私もお義母さんこっちにいた方が近いしね。」

 「……。」
 おじさんに少し同情してしまう晴海でした。

 「文代さんて、亡くなったお母さんと同じクラスだったの?」

 「うん。お母さんとお父さんが結婚してからも、時々遊びに来てた。まだ私が小学生の時にね…………。



 「私、鈴木君にフラれた。」

 「ええっ?」
 家に泣きながら、突然来た文代にそう言われ、宮子は驚きました。

 「大学から27歳まで付き合ったのに別れてくれって、ひどくない?」
泣きながら、文代は言います。

 「確かに。27まで付き合ったなら結婚しないと。」

 「私の青春を返せ!」

 結局、文代はその日は泊まって行きました。

 それから、半年以上過ぎた、ある休日。

 「…そういえば、最近文代ちゃん来ないね。」
新聞を読んでた康太が、宮子に言いました。

 「大学生の彼氏が出来たんだって。」

 「大学生!?いくつだよ?」

 「22。4年生。」

 「いやいや、そこは大学生に行かないで、もうお見合いとかしといた方が…。無難に……。」

 「んー。でも、彼が文代の事、すごい好きなんだって。」

 「!?……そうなんだ。」

 やれやれと、康太は新聞に目を戻しました。


 結局、文代はその彼と4年以上付き合い、宮子が入院したり、亡くなった時も、色々世話を焼いてくれました。

 でも、2008年ついに……。

 「私、佐藤君にフラれた。」

 宮子の仏前にお参りに来てくれた文代が、康太と美帆に涙ぐみながら話しました。

 「ええっ!?なんで?二人はもうこのまま結婚するかと思った。」

 康太の言葉に、美帆も頷きました。

 「若い彼女が出来たから別れてくれって。」
涙を拭きながら、文代が言いました。

 「ひどい!」

 美帆が怒ります。そして、ふと気が付いた様に言いました。

 「…そうだ。文代さん、お父さんと付き合えば?」

 「はぁ!?」
二人合わせて驚きました。
 「ちょっと待って、美帆ちゃん!」

 「お前、文代ちゃんは彼と別れたばかりで。お母さんもまだ亡くなってから、そんなに何年も経ってないし。」

 「でも、お父さんが誰かと見合いするの、やだから。」

 「うっ。」
康太の言葉がつまりました。

 (こいつ、話を聞いてたのか…。)

 宮子が亡くなって3年。ポツポツと親戚から再婚話も出るようになりました。

 「まあまあ、お茶でも飲んで話そ。」

 美帆は二人をテーブルに付かせて、お茶の用意をしました―――。



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