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殺人は眠り続ける 小説編その8

2014-10-26 10:53:06 | 殺人は眠り続ける(完結)
 「……怖い話?」

 「ホラーじゃないよ。本格ミステリーだから。」

 「あーそーなんだー…。」

 「まあ、要するに、今現在は誰も知られてない殺人の話。………犯人以外は。」

 晴海の言葉に、美帆はゾクッとしました。

 「そうゆう事言うと怖いでしょ!」

 晴海が続けます。

 「今年(2010年)さ、4月に殺人事件の時効が廃止されて。」

 「そうゆうニュースあったね。」

 「円山さんのは1993年で17年前だから、2010年4月現在で、時効が成立してるんだけど、星河さんのは……。」

 「あんた、何でそんな怖い事言う訳?これだから、ミステリーファンは……。」

 「星河さんは1997年なんで、まだ時効が成立してない。」

 「………。」

 「……まあでも、別に単なる事故かもね。警察も結局事故で処理してるし。だけど……。」

 二人はお互いを黙って見つめました。

 (もし事故ではないとしたら?)

 「おじさんたち、亡くなったおばさんから、何か聞いてるのかな。」

 「多分知らないと思う。と言うか、お母さんも何があったかなんて知らないんじゃないかな。」

 美帆はお母さんが亡くなる少し前の事を思い出しました。



 今(2010年)から5年前の2005年、美帆11歳。

 宮子の病状が悪化し、重篤になりました。

 先が長くないと気付いた宮子は娘に、生まれた時の事を伝える事にしました。

 「実はあなたが生まれた時に色々あってね。昔はなかったんだけど、今は検査が出来るから、お父さんと本当の親子かちゃんと調べてほしいの。」

 「お父さんと私は本当の親子じゃないの!?」

 「多分間違いなく親子だと思うけど、一度はっきりとさせておく方がいいから。お父さんにもそう話す。」

 「なんで?」

 「理由はお父さんも知ってるけど、もう少し大きくならないと教えてくれないかも。」

 「何それ?」

 「この鍵なんだけどね。」
 宮子はそういうとある鍵を美帆に見せました。

 「これね、お母さんの実家……おじさんちにある、お母さんが使ってた机の引き出しの鍵。その引き出しに写真が入ってるから。」

 「写真?」

 「そういう事はないと思うけど、もしお父さんが違うって言われたら、写真の人がお父さん。」

 「ええっ!お父さんやおじさんは知ってるの?」

 「お兄ちゃんは知らないの。お父さんは知ってるんだけど。」

 「お父さん、写真の事知ってるの?」

 「知ってるけど、今は完全に忘れてると思う。もし、やっぱりお父さんとは本当の親子って分かったら、写真の事、お父さんに言わないでね。」

 「どうして?」

 「なんか、その話になるといつも気まずかったから…。」

 「ふーん。」

 「でも、もし写真を見て困った事があったら、必ずお父さんに相談してね。」

 「なんかよく分からないけど、分かった。」

 宮子から鍵を受け取りながら、美帆は答えました。



 そして、2010年。

 お母さんの言葉を思い出して、美帆は晴海に言いました。

 「私、お父さんのとこに行ってみようかな。」



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