今、半分空の上にいるから

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殺人は眠り続ける 小説編その7

2014-10-25 03:11:58 | 殺人は眠り続ける(完結)

 「警察に届ける?」

 「もしお腹の子の事聞かれたら…。」
  
 「困る。じゃあ、止める。」

……沈黙の後、康太が話します。
 「この前の葬式の時に詳しい同級生に聞いたんだけど、捕まったヤツ、薬物の常用は否定してるって。運び屋みたいに利用されたって、本人は言ってるらしい。」

 「?何で知ってるの?」

 「その陸の友達、死ぬ2日前に陸と話したらしい。」

 「えっ?」

 「宮子よりも前に。」

 「あっ、そ、そっか。」

………また、長い沈黙。

 「コーヒーどうぞ。冷めちゃう。ケーキも。」

 「あっ、じゃあ、頂きます。」

 康太はテーブルの上のカップに手を伸ばしました。

 宮子は写真の袋を机の引き出しにしまいました。

 「宮子」

 「ん?」

 「今日ここに泊まって、明日、一緒に俺の家に行くから」

 「あー、もうどうしよう。すっごい気が重たい。」

 「俺も」

 なんだか二人で気が抜けたように笑いました。

 

 

 「…写真?」
晴海が聞き返しました。

 「うん。お母さんが亡くなる前に言ってた。実家の自分の机の引き出しの中に、円山陸さんの写真があるって。」

 美帆が、自分のバッグの中を探しながら答えます。

 「あった。これ引き出しの鍵。」

 「おばさんの机って、そのまま部屋にあるけど。」
と晴海。

 「えっ?この部屋?じゃあ、今使ってるこの机?」

 「ああ。」

 (うわぁ、ちょっとドキドキ……。)

 「……開けてみる?」

 鍵穴に恐る恐る鍵を入れて回して見ると………。

 ガチッ。

 「開いた。」

 引き出しを開けてみると、カメラ屋の写真袋が入ってました。

 「本当にあった。」

 美帆が手に取り、中から写真を出しました。

 「3枚しかない。」

 3枚ともホテルのロビーで写したような写真です。

 「男の人二人いるけど、どっちが円山陸さんなのかな?」

 「うーん。分からん。おじさんはこの写真知らないの?」

 「お母さんが言うには、知ってるけど完全に忘れてるって。」

 「あれ?何か一緒に入ってる。新聞記事だ。」

 「1997年8月15日。お盆の帰省時に高速で事故。」

 「この人!!」

 「あっ、本当だ。亡くなった星河勲夫さん。」

 「この写真のこの人!」

 「じゃあ、こっちの男性が円山陸さんか。」

 「でも……。」

 「ああ……。」

 「確か円山陸さんもバイクの事故で…。偶然にしては、ちょっと。何か怖いね。」

 「うん。」

 「この写真と記事、引き出しにしまえ。」

 「分かった。」

 「で、鍵を閉めて…。美帆、この鍵、俺が持つわ。」

 「は?何で?」

 「何かすごい危ない感じがする。よく分かんないけど。」

 「えー!無くさないでよ。」

 「俺の机の鍵のかかる引き出しに入れて置くよ。……まあでも、木製の机の引き出しの鍵なんて、強く引っ張れば壊れちゃうけどね。」

 二人は晴海の机の引き出しに鍵をしまいました。

 「眠っていた殺人事件か。」
晴海がふと呟きました。

 「何それ。」

 「推理小説。」

 「えー!あんた推理小説読むの?意外。」

 「俺は2時間ドラマも好きなミステリーファンなんだぞ。」

 「あー、そーなんだー。()」



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