blueな日々

( Art で逢いましょう)

Internal self helper?

2006年11月02日 | 読書メモ

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Nも精神の病を~それは、うつであり不安であり焦燥感
などの不具合である~自分の内部に意識することがある
ようだ。たぶん生きる人、すべてがそうであるように。

………
『症例A』 図書館を利用
著者:多島斗志之  出版:角川書店 発行:2003.01

出版社の内容紹介:本作のテーマは「心の障害」である。
精神科医は、病院の問題児である17歳の少女を担当する。
前任者の診断に疑問を抱きはじめる。彼は臨床心理士と
力を合わせ、少女の病根をつきとめようとする。しかし、
本作はあまたのサイコ・ホラーとはっきり異なっている。
センセーショナルな描写や筋立ては極力排され精神疾患
という「異世界」で苦しむ患者たち、彼らを助けようと
する医師たちの姿が共感をもって描き出される。正常と
異常の間の境界とは、治療するとはどういうことなのか、
精神医療の現実を誠実な眼差しで繊細に描き出す。

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………
いい本との出逢いはこんな感じ。何気なく私を捕まえて
しまう。いつまでたっても事件らしい出来事は起きない。
しかし知らぬ間に、私は「精神障害やその治療」「患者
の苦悩」などについて多くのことを学んでいた~作者の、
物語の中に融合させた、その病の記述が正確なものなら。

物語はやがて、解離性同一性障害~いわゆる多重人格の
診断・治療へと転換してゆく。私にとって、この作品の
うえでは納得できる展開である。詳細に丁寧に真摯に?
だが、まったく飽きさせることなく、書かれている。

私は現実世界では、多重人格という病~精神疾患の存在
を疑問視している。しかしこの作品にはこれまで読んで
きた多くの安易でトリッキーなサイコ・サスペンスには
ない生真面目さがある。まるで役に立つ実用的な医学書、
および、青春~成長小説といったニュアンスもある。

サブストーリー~国立博物館の歴史的な謎も、悪くない。
本編とうまい具合にリンクしている。興味がつきない~
現実にありえる話であった。ただ、男性看護士の存在が、
患者との関係が、まぎれもないセクハラである。舞台に
なる良心的な?病院とのアンバランスさが気にはなる。

読みながら、私はずっとNのことも考えていた。彼女の
悩みの解消に、たとえばNがこんな本を読んでみるのも、
けっして無駄ではないだろう。自己の内面を、気軽に?
眺めてみることも可能かもしれない。この本の読後感は、
すがすがしいものでもあるから。物語の中での病の治療
~少女の未来の可能性にも、期待がもてるからである。


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