blueな日々

( Art で逢いましょう)

壊れても不思議ではない

2006年11月03日 | 読書メモ

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モノも、人の心も~一時的にせよ、壊れることがある。
同じ作者の分厚い2作品3冊を、2日間で読み終えた。
現実逃避への感覚~欲求がいかに深いか、甘い認識で
はあるが、自分でもわかるのだ。ある種の病気である。

………
『最悪』 図書館を利用(文庫本)
著者:奥田英朗  出版:講談社 発行:2002.09

出版社の内容紹介:お先まっ暗。出口なし。それでも
つづく人生。小さなつまずきが地獄の入り口。転がり
おちる男女の行きつく先は? 不況にあえぐ鉄工所の
社長は、近隣との軋轢や取引先からの無理な依頼に頭
を抱えていた。女性銀行員は、家庭の問題やセクハラ
に悩んでいた。ある若いチンピラは、ヤクザに弱みを
握られていた。無縁だった人生が交差した時、運命は
加速度をつけて転がりはじめる。比類なき犯罪小説、

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………
人を叱責することが重要な時もあるだろう。罪を理解
して受け入れ、激励することもたいせつなはずである。
私は、彼ら作品の登場人物たちを責められない。あく
までも正当な公平な意味で、私の、ある種の否定的な
側面も責めないでほしいと願う。

人間世界での~社会の中で生きることの、なんと肩身
の狭いことか、ゆううつなことか、時に危険なことか。
3人の主要な登場人物の描き方もうまい。それぞれの
転落が、見事に表現されている。しかし読後には救い
がある。結局、人間世界~社会は、懐が深いものでも
あるのだ。あきらめは禁物である。いい作品だった。

………
『邪魔』 図書館を利用(文庫本)
著者:奥田英朗  出版:講談社 発行:2004.03

出版社の内容紹介:この小さな幸せは誰にも壊させない。
彼女は34歳。サラリーマンの夫と子供2人と東京郊外の
建売り住宅に住む。スーパーのパート歴一年。平凡だが
幸福な生活が夫の勤務先の放火事件を機に足元から揺ら
ぎはじめる。彼女の心には夫への疑惑が。不信は波紋の
ように広がる。彼は36歳。本庁勤務を経て現在は警部補。
所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故でなくし義母を心の
支えとしている。同僚の素行調査を担当してから逆恨み
される。放火事件では被害会社の経理課長に疑念を抱く。
わずかな契機で変貌していく人間たちを、絶妙の筆致で
描きあげる、犯罪小説の白眉。日常の中にひそむ悪夢や、
やりきれない思いをドラマに織りこんだ傑作。

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先に読んだ『最悪』よりも好きかもしれない。もし私が
この刑事~主人公のひとり、だったらたぶん似た状況に
陥っていたかもしれない。その哀しみや孤独がよく理解
できるのだ。主婦の変わりゆく内面や行動にはリアルな
感覚があり、現実世界での、すべての女性に声援を送り
たくなった私である。『最悪』と同じように、読後には、
ある種の爽快感もあった。記憶に残る作品である。

警察内部の実態、主婦のパート勤務の裏側、家庭内での
さまざまな葛藤、暴力団の醜い裏世界、人権擁護団体の
きわどい内幕、非行少年の再生など、考えこんでしまう。
自分も係わらなければならない諸問題のようにも感じた。
他の作品も読んでみたい、そんな作家。


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