10歳代には登山をしていた。写真は高校生の頃のものだ
ろうか。今は体力的な問題があるので、せめて山歩き~
トレッキングをしたいと願う私。山は人を謙虚にさせる。
日々とは違った意味で、自己と向きあわせてくれるから。
この本の作中の、登山のシーンは、懐かしく読んでいた。
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『クライマーズ・ハイ』図書館を利用(文庫本)
著者:横山秀夫 出版:文藝春秋 発行:2006.06
出版社の内容紹介:1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機
事故が発生。衝立岩登攀を予定していた地元新聞の遊軍
記者が全権デスクに任命される。一方、ともに登る予定
だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子
の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは。あらゆる場面
で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。
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20年ほど前に、群馬県で実際に起きた日航機墜落事件を
もとに、人それぞれの生き方、葛藤を描いた作品である。
作者の若い頃の仕事~地方新聞の記者の実体験も作品の
背景にあるだろう。ジャーナリズムのあり方~プロ意識、
父親と子供~息子との関係、およびそれぞれの成長など、
真正面からとらえている。引き込まれ一気に読み終えた。
新聞社内の描写が圧巻である。新聞発行に伴うさまざま
な意見の衝突、派閥間の問題など、よくもここまで人間
たちは争うものだと感心した。そして人の命の差~現実
に存在する、重い軽いという格差についても考えさせる。
そんな人々の日々のいとなみの背後に、象徴的に孤高の
山~巨大な岩壁がそびえている。人は下りるために登る、
作者はそう書いている。それはもちろん人の生き方でも
あるのかもしれない。死ぬことも命を下りることだから。
この作品は、NHKでドラマ化されているようだ。DVDも
レンタルされているかも。いつか見ることになるだろう。
横山秀夫の作品はすべてを読んでみたい。私にとっては、
期待を裏切られない、まさに職人の技の作品群だろうと。