今は無きアイレス写真機製作所のレンジファインダーカメラ「Aires 35Ⅱ」
なかなかいいボディデザインだが、じつはあんがい大柄である．そして底面
の分厚い金属部分が奇妙な雰囲気．操作性は悪くない．シャッターはカメラ
正面のレンズ脇にある大きな三角状の金属部品がそれ．レンズ脇のチャージ
レバーをセットすると動作するようになる．だがシャッターが時々機能しな
いことが動作の確認中に判明．何かを撮影して次の撮影時にフィルムを巻き
上げてからチャージレバーをセットする．そして構図を決めてシャッターを
切る．この順番で操作すればなんの問題もないようす．しかしどこかで手順
を間違えたら不思議なことだが．シャッターチャージが未完のままになって
しまう．シャッターが切れないのだ．そんな時チャージレバーに軽く触れれ
ば何故かシャッターが切れることも判明．つまり結局、シャッターは切れる．
この個体独自の不具合なのかもしれないが，どこかがおかしくなっているの
は確かだろう．他の動作には問題がなかった．ファインダー内部もクリアで，
いい感じで撮影できそう．感度100/36枚撮りのカラーネガフィルムで試写．
レンズは 45mm/F3.2．シャッター B.1～1/500秒．ファインダーは採光式
ブライトフレーム=0.6倍．パララックスの補正マーク付き．焦点調節は直進
ヘリコイド距離計連動式．露光調節の機能はない．完全なフルマニュアル機．
フィルム送りはノブ巻き上げ．発売は1954年．私とほぼ同世代のカメラだ．
いい写りだった．撮影したほぼすべてのカットが適正な露出．かなり素敵な
落ちついた陰影や色あい．この懐かしい時代に作られたカメラを私はとくに
好きで，Aires 35Ⅱも動作に異常がなくうれしく思っている．しかもかなり
安価に入手することができたのだ．幸運の女神が近くにいたのかもしれない．
それはカメラに関してだけのことではあるが．確かなのは，欲しがる気持ち
があるゆえに、個性的でいいカメラたちとも出逢うことができるのだろう．
