blueな日々

( Art で逢いましょう)

神の沈黙、人の物語

2006年11月18日 | 読書メモ

F74bp1

この2冊も図書館で見かけ借りたミステリィ。
初めて読む作家の作品には期待も不安もある。

………
『神のふたつの貌 』図書館を利用(文庫本)
著者:貫井徳郎 出版:文藝春秋 発行:2004.05

出版社の内容紹介:神の声が聞きたい。牧師の息子に
生まれ、一途に神の存在を求める少年。彼が歩む神へ
と到る道は、同時におのれの手を血に染める殺人者へ
の道だった。三幕の殺人劇の結末で明かされる驚愕の
真相とは。巧緻な仕掛けを駆使し「神の沈黙」という
壮大なテーマに挑んだ、21世紀の「罪と罰」

F74bp2

………
いびつな世界に、いびつな人物が迷い込み、思い悩み
ながら連続殺人を犯す。親子二代にわたるキリスト教
プロテスタントの牧師の犯罪の物語である。神に会い
たい、救いの手を差しのべたいと、彼らは何故か人を
殺すのである。私の認識では、神は不在である。人間
は不可解である。そんな根源的?で、重たく暗い話が、
倒叙形式で描かれた物語である。

人それぞれに考えがある。作家も同様に、宗教を人生
を救いを表現したいだろう語りたいだろう。だが残念
ながら退屈ぎみな読書時間だった。何を伝えたいのか、
私にはよく理解できなかった。というよりも伝わって
くるものがなかった、と書くべきか。ましてや21世紀
の「罪と罰」なんて出版社のコピーも犯罪的である。

古書店でも、この作家の本は多く売られている。気に
なる作家ではあった。その書名など、私のイメージを
くすぐる雰囲気がある。だが期待はずれでは困るので、
長い間、読むことはなかった。今回、チャレンジして
みたが、微妙な違和感も感じた。何作かを読んでみる
つもりでいる。気にいる作家になる可能性もあるから。

記事のトップに使ったイメージ~本の表紙、の写真は、
この作家の作品~文庫本の表紙、の一部である。

………
『滅びのモノクローム 』図書館を利用(文庫本)
著者:三浦明博 出版:講談社 発行:2005.08

出版社の内容紹介:CM制作者が、骨董市で偶然に手に
入れた、古いフィッシング用のリールとスチールの缶。
その中から発見した、16ミリフィルムの映像を、CMに
利用しようと考えた彼だったが、そのことが戦時中の
封印された犯罪を暴き出し、新たな殺人を引き起こす
結果に。日本がひた隠しにしてきた忌まわしい過去の
歴史の闇に、あるフィルムが光をあてる。

F74bp3

………
小道具の使い方がうまい。この犯罪は充分にありえる
ことでもある。登場人物もそれなりに個性が与えられ
ている。推理小説のツボを押さえ、起承転結も備えた
作品である。だが印象が薄い。作品に力がない。どう
考えるべきか。終盤の展開が急ぎすぎて、また現実性
が乏しく~悪を追いつめる手法に安易さがあり、私は
そんなところに違和感を感じたのかもしれない。

戦前戦中戦後、日本に居住していた敵性外国人たちの
~あくまでも戦時での表現~過酷な運命である。この
ことは私には新たな認識である。我が国の歴史の暗部
を見つめる姿勢には共感できるが、もっとじっくりと
書かれていれば、いい作品になっていたと思う。


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。