作家の写真と、BUBBLONIAという、桐野夏生の公式
サイトのビジュアルを、ネットから転載・加工した。
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『残虐記』図書館を利用(単行本)
著者:桐野夏生 出版:新潮社 発行:2004.02
出版社の内容紹介:薄汚いアパートの一室。中には、
粗野な若い男と、そして女の子がひとり。失踪した
作家が残した原稿。そこには25年前の少女誘拐監禁
事件の、自分が被害者であったという驚くべき事実
が記してあった。最近、出所した犯人からの手紙に
よって、自ら封印してきたその日々の記憶が、奔流
のように溢れ出したのだ。誰にも話さなかったその
真実とは。一作ごとに凄みを増す著者の最新長編。
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現実の少女監禁事件に、作家が創作意欲を刺激され
て書いた作品らしい。ネットの書評では、興味本位
のワイドショー的な作品にすぎない、被害者の心を
逆なでしているといった、否定的な批判も多かった。
しかし私は思う。この作品はけっして安易な認識で
書かれたものではない。作家独自のダークな思想と
きちんと起承転結を備えた~うやむやで中途半端な
作家や作品があふれる中で、見事に人間の内面世界
を描いている。現実~実際に起きた事件と被害者の
心情などとの関わりからは、すでに離れたところに
ある独立した作品である。関連性を求める批判的な
読者の姿勢に問題があると感じるが~言論の封殺に
向う恐れもある。現実とフィクションを混同すべき
ではない~作家の表現を、魔女狩りすべきではない。
作品の完成度のみを評価すべきである。誤解を招く
かもしれないが、これが私の考えである。もちろん
被害女性に想いをよせないわけはない。この作家も
そうだろう。だからこそ書いたともいえる。腫物を
触るような社会だったら、どんな事件や災害などの
被害者も、逆にとまどってしまうだろう。悲しみや
苦しさが、いつまでも癒されることがないだろう。
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関連事項~ともにWikipediaより転載・編集
新潟少女監禁事件は、2000年1月28日、新潟県在住
の加害者宅に別件~母親への暴力、で訪れた職員が、
中にいた女性を発見・保護にいたり、発覚した事件。
被害女性は小学校4年生だった1990年11月、同県で
下校途中に行方不明になっていた。実に9年2ヶ月
にものぼる誘拐監禁事件であり、社会に大きな影響
を与えた。保護されたとき、被害者の女性は19歳で、
PTSDと診断され、現在も療養しながら生活を送って
いる。加害者~犯行当時28歳、の裁判では、被告が
問われた監禁致傷罪と窃盗罪を併せた併合罪の処理
が争点となり最高裁まで争われた。現在、男は懲役
14年が確定し服役中。
柳 美里~気になる作家だが作品は未読~のデビュー
小説である『石に泳ぐ魚』は、実在の韓国人女性を
モデルにしたことで訴訟問題に発展した。最高裁で
出版差し止めの判決。一部の図書館では、この判決
を受けて、同書および、同じ文章を掲載した文芸誌
『新潮』の該当部分を閲覧禁止にしている。
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この『残虐記』や『石に泳ぐ魚』などが、内包する
問題~小説の表現の自由は、私自身にとっても実に
むずかしいものである。自分が事件の被害者であり、
そのことを元に書かれた小説など~フィクションを
読んで、どう思うか想像してみる必要もあるだろう。
だがあくまで、作家の姿勢と作品の内容次第である。
表現されたすべてを一様に否定すべきではない。