職業、鍛冶手伝い。

現代の迷工、未来の虚匠

伝統的工芸品産業の振興に関する法律 「伝産法」について考える�

2013-08-02 19:12:09 | ひとりごと
 前回では「伝統的工芸品」と「伝産法」についての長い記述となってしまいました。

 そもそも、現在「伝統工芸」と呼ばれるものは、それが生み出された時代から長い間立派な「産業」として生活や社会を支えていたものです。感覚的に捉えにくいことですが、今「手仕事」と呼ばれる職業が、概念的に現在で言う「工業」だった時代があったということになります。
 工業技術の発達と人口の増加とともに生活を支える主体産業は「手工業」から「工業」へシフトし、「手仕事」と呼ばれる業種は徐々に間口が小さくなっていきました。戦後の高度経済成長期には海外からの安価な輸入品や大量生産品に押され手仕事の様々な業種は全国的に逼迫し、バブル期の高級品志向の風潮などで一時的に伝統的工芸品の生産額が上がる時期もありましたが、バブル崩壊後右肩下がりとなり、現在ではほぼ横這い状態が続いています。 
 時代とともに伝統的工芸品を含んだ地場産業や伝統産業を取り巻く状況が変化し「ものをつくるだけが職人の仕事ではない」時代となってしまいました。全国の伝統的工芸品産地、地場産業の産地が様々な工夫を凝らして奮闘しています。
 
参考 経済産業省 製造産業局 伝統的工芸品産業室
伝統的工芸品産業をめぐる現状と今後の振興施策について(pdf)」(平成23年2月)

 ここまでこのような書き方をしていると、伝統的工芸品産業があたかも苦戦を強いられているような印象を与えるかと思いますが、逆に現代の大量生産・消費型の産業にない、「手仕事」の持つ側面に着目されている方も大勢いらっしゃいます。
 作り手の立場である私の目から見ても、これだけ大量生産・既製品のあふれる世の中で手仕事・地場産業・伝統的工芸品が産業全体の中では狭いながらも確固たる地位を保ち続けているように感じることが多々あります。その陰には生産にあたる現場の人間のみならず、使い手の方、品物を使い手の方まで繋いでくださる売り手の方、また手仕事のよさを様々なかたちで広く伝える活動をしていただいている方のお力があってのことと思います。
 
 伝統的工芸品を含む「工芸」の世界は本当に多くの問題を抱えています。大学時代から数えて10年以上「工芸」というものに触れてきた私ですが、手仕事は本来それらの問題を覆せるほどの力を持っているはず、という考えを持っています。おそらく今、手仕事に着目されている大勢の方も「手仕事の持つ力」に魅了されたり、どこか確信めいた何かを感じ取ったうえでのことではないかと思います。
 「温故知新」という言葉通り、伝統的工芸品の分野でも小さな革新を繰り返しながら現在に至るものですし、伝統的工芸品を取り巻く環境の変化の中でいかに軸をぶらさずに対応していくかということ自体が一番大きな課題であるかと思います。
 伝産法の項目の一つとして「活性化事業」というものがあります。割と分かりやすい事例を挙げていくと

・新事業育成、新製品開発とその発表のための展示会開催など

・デザイナー、バイヤーの方との交流をはかるフォーラムなどの開催

・海外市場に対する事業展開への支援

・現代生活にマッチした企画製品の浸透


 まだまだありそうですが、これぐらいにさせていただきます。これらの事例を詳しく調べていくと、国による事業から自治体単位でのものなど様々な取り組みがなされていることが分かります。上手く産地の活性化に結びつくものもあれば、残念ながら失敗した事例もあるようです。
 あくまで個人的な意見なのですが、これらの活性化事業について、その内容が「長く続くもの、次につながるもの」でなくては意味(意義)のあるものではないと思います。特にこのような分野での場合、実施から効果が出るまでの期間が結果的に長期にわたるものだと思いますし、目に見えての効果が非常に分かりづらいということも多いです。
 少なくとも、伝統的工芸品の分野においての活性化というのは「大きな花火を上げて終わり」ではないように思います。極端な表現ですが「小さな熾きになっても火を絶やさない」ことが本来の旨ではないでしょうか。

 ここまで画像なしでの記事掲載となりましたが、次回からは伝産法の条文を引用しつつ出来るだけ画像を使っていきたいと思います。ご意見・ご指摘がおありでしたら是非宜しくお願い致します。