職業、鍛冶手伝い。

現代の迷工、未来の虚匠

アートフェスタいわて2012 岩手芸術祭受賞作品・推薦作家展+岩手県美術選奨受賞者作品展  のお知らせ

2013-02-17 19:05:59 | お知らせ


 
 
 記事タイトル長いですね。
 昨年いただきました平成23年度岩手県美術選奨の企画の一環として、3月5日より岩手県立美術館で開催される「アートフェスタいわて2012」に美術選奨作家の1人として出展させていただく運びとなりましたのでお知らせさせていただきます。2012年秋に開催された第65回岩手芸術祭美術展の重賞作品・各部門の推薦作品と、23年度岩手県美術選奨受賞作家5名の作品の企画展示となります。
 私が作家扱いされるとは・・・なんだか複雑な心境ですが、作者として選奨をいただきましたことを励みにしつつ、一緒に出展される作家の方々に失礼の無いよう自分なりに尽力します。
 


 アートフェスタいわて2012 
 ―岩手芸術祭受賞作品・推薦作家展+岩手県美術選奨受賞者作品展―

 2013年3月5日(火)〜2013年3月24日(日)
 
 岩手県立美術館 企画展示室

 9:30~18:00(入館は17:30まで) 月曜日休館
 
 観 覧 料: 一般500円(400円)、高校・学生350円(300円)、小・中学生200円(150円)
 ( )内は20名以上の団体料金および館内前売り料金
 *療育手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方に は割引制度があります。
 *企画展観覧券で常設展もご覧になれます。

 
 平成24年度の岩手芸術祭美術展の受賞作品や、各部門からの推薦作品、岩手県美術選奨 受賞作家による作品などを中心に展示します。



 分野も多岐にわたる多彩な展示です。ぜひ足をお運び下さい。 




二重の竹鉉

2013-01-20 18:17:56 | 古作に学ぶ

竹鉉だけでも珍しいのですが、竹鉉の中でも珍しい鉉がついた鉄瓶です。

真横から見ると普通の竹鉉ですが

竹が二本になっています。鉉としての正式な名称はあるのでしょうか。節がずらして配置しているところが、つくられた鉉鍛冶さんの意匠へのこだわりが感じられます。

竹らしい造りこみもしっかりとされています。

摘みは松の実で

模様が梅の花のようです。「松竹梅」を鉄瓶全体で表現しています。

鉉はつかみ鉉です。つかみ部分は溶接でしょうか。

羽はあとから欠いています。

模様の中にも松葉がありました。









残念ながら内側は状態がよくないです。









さりげないように取り付けられているこの竹鉉ですが、実はかなり手間のかかるものだと思います。いつか挑戦してみたいです。

愛すべき道具たち9 卓上ボール盤

2013-01-17 19:06:42 | 仕事

毎度おなじみの昭和な機械コーナーです。今回は「卓上ボール盤」です。

一定の精度で穴あけ加工をするためのいわゆる「電動ドリル」です。工房入口そばに鎮座しています。

ドリルの刃や加工対象を置くための作業台を隣に据えています。

採光が悪い場所なのでスポットで照らしながら作業します。

これが電源スイッチです。ビビットイエローが単調作業の際ボルテージを上げてくれます。ちなみに赤ランプは点灯しないのです。

ドリルの刃を取り付け取り外しする際に使用するチャックです。



このハンドルで台座を固定またはフリーにできます。

台座の昇降ハンドルです。

昇降幅は最大40cm程度です。



ドリルの刃は軸径13�まで使用可能です。

タイミングベルトを掛け替えることで回転速度を変えることができます。

万力を使って加工対象を固定することもあります。

ドリルの刃は様々あります。

こちらはホールソー。薄い材料に大穴を開ける際に使います。

手桶鉉

2013-01-13 19:36:31 | 古作に学ぶ

先日お預かりした鉄瓶です。「手桶鉉」がついていて、「変わり鉉」の中でも大変珍しいので資料として撮影させていただきました。今ではもうこの鉉が取り付けられる鉄瓶はつくられていません。



名前のとおり手桶の持ち手の形をしています。「手桶鉉」といいますが、鉄瓶本体が手桶であることで成立する鉉です。

一体で鍛造するのはほぼ不可能ですので3本の鉄の角棒を加工して、本物の手桶の持ち手と同じように組んで作っています。どうやってそれぞれを接合しているのでしょう。

接合方法が分からないくらい派手派手に「もやし」が施されています。本体の桶に対してあまりにも取っ手が朽ちすぎでは・・・?

つかみ鉉です。注ぎ口は「寸胴型」の鉄瓶でオーソドックスな感じです。

摘みは松の実、蓋にも木目の模様が入っています。



板の継ぎ目と「タガ」もしっかり再現してます。





内側の状態はあまりよくないです。





底がかなり荒れてしまっています。

湯口は押しているように見えます。

「古作に学ぶ」で取り上げた鉉の種類もこれでおおよそ出揃ったと思います。実はまだまだ知らない鉉もあるでしょうし、今後も新たな発見がありそうで楽しみです。

愛すべき道具たち8 万力

2013-01-02 04:02:55 | 仕事
  
 明けましておめでとうございます。本年も当ブログともども何卒よろしくお願い致します。今年こそは更新速度を少しでも上げるよう努力します・・・。

 昨年末の大掃除で片付けついでにいろいろと写真撮りをしたので少しづつ記事にしていこうかと思います。

 工房でも重量級に入る部類の道具「万力」です。




 ハンドルを回すことで材料を固定する部分が開閉し、加工する素材の固定以外にも真っ赤に熱した材料を曲げる際などにも使えます。油圧ポンプが内蔵されているようでハンドルを閉めることによってかなりがっちり対象を固定することができます。

 作業台に固定する万力にたいしてこちらは移動可能な小さいものです。

 このようなものも使用することもあります。通称「Cクランプ」

 「バイスプライヤー」と呼ばれる道具です。部類的にはこれも万力の一種かと思います。小回りが利くことから何かと重宝しています。

本年も

2012-12-30 19:35:07 | 仕事

 本日無事仕(私)事納めを済ませることができました。この1年は公私共に多くの方との素敵な出会い、またそういった方から制作活動に関わる面での挑戦に対して背中を押していただくこともありました。個人的には少しだけ自身の成長を実感できたうえでの年越しとなりそうです。
 長い長い繁忙期が続く中、本年も怪我や事故などもなく、きちんと楽しみながら仕事が出来たのも本当にいろいろな方の支えがあったうえのことだと思います。当ブログも相変わらず超スローペースの更新となってしまいましたが、本年もご覧いただき誠にありがとうございました。
 画像は本日の私事、試作の「七宝透かし」です。一年の最後ですので縁起の良い文様
で私事を締め括りました。無事成功して良かったです。
 それでは皆様よいお年を!ブログともども来年も宜しくお願い致します。 

一瞬

2012-12-16 19:44:50 | ひとりごと
 先日告知させていただきました環境学習講座も本日無事終えることができました。最後までお聞きいただきました参加者の皆さん、今回の講座のセッティングに当たっていただきました環境学習センターの皆さんにこの場を借りて心よりお礼を申し上げます。普段仕事場にこもって仕事のみと向き合っている私のような者にとって、受けるべき刺激を受けるための非常に貴重で有意義な機会だと思います。人生経験の一つとしても。
 
 今回の講座のために資料集め際に、鉄瓶の製作工程の説明のための画像が必要となってしまい、両隣が鉄瓶屋さんであるのをいいことに、鉄瓶屋さんの仕事場、工房内の写真を撮影させていただきました。自分の仕事の合間を縫っての撮影でしたが、ちょうどその日の午後は隣の工房で「吹き(鋳込み)」でした。これはすごいチャンス!と仕事の手を休めて(本当はいけません)一瞬だけ撮影させていただくことに。

隣の「薫山工房」さんの吹きの様子です。「甑(こしき)」という溶解炉で鉄を熔かします。送風と炎の大きな音、鉄の火花が走る様子は緊張感があります。私も学生時代にブロンズなど銅合金の「吹き」は何度も経験がありますが、鉄の「甑」による吹きの緊張感はその比ではありません。



「とりべ」という柄杓を大きくしたようなもので甑から出る溶けた状態の鉄(「湯」といいます)を受けます。

手早く鋳型のある場所まで移動してとりべの中の湯を鋳型の口(湯口)に流します。手に汗握っている間に鉄瓶屋さんは一瞬でこの作業をこなしていきます。絶対に失敗は許されませんし、湯の温度や湯の注ぎ方など様々な条件により成功する場合も失敗する場合もあります。丹精込めてつくった鋳型でも、吹きが上手くいかなければ「お釈迦(修正不可能な欠陥)」になってしまいます。

 この一瞬に魅了されて鋳物の仕事に携わる決心をした職人さんも多いと思います。
 ところが私の場合はその逆でした。「吹き」のその一瞬に、金属というものが自分の手から離れていってしまうような気がしてしまったのです。溶けた金属を鋳込んだその一瞬、自分の中で金属というものがどうなるか分からない存在になってしまう、といった感じです。実はこれも私が鍛冶屋の仕事を選んだ理由の一つでもあります。一から十まで直接自分の手で金属を扱えるという点では鍛造が一番だと思います。
 ですが鉄瓶屋さんが甑で吹きをしているのを見るとやはり懐かしい感じがしてきます。正直あの一瞬の緊張感をちょっとだけもう一回味わってみたい気持ちになりかけたりもしますが、鉄の吹きはそんな生半可な気持ちではこなせませんので。
 まさに「鋳物は魔物」です。

いわて県民情報交流センター 土日環境学習講座のお知らせ

2012-12-09 17:19:34 | お知らせ
 12月16日(日)に盛岡市の「いわて県民情報交流センター aiina(アイーナ)」で開催される土日環境学習講座にて、講師としてお話をさせていただくことになりました。いわて県民情報交流センター内にある環境学習交流センターさんでは、「学びからやさしい未来を」と題して毎月テーマを決め各界から講師の方をお招きして土日環境学習講座を開催していらっしゃるそうです。

 アイーナでの12月中に開催されるの土日環境学習講座のご案内はこちらになります。

 それにしても私ごとき若造が講師だなんて・・・本当に恐縮です。ですがご依頼をいただいたからには出来得る限りのベストを尽くしたいと思います。
 極度のあがり症ですので当日は資料に即したあまり味気の無いお話になりそうです。実はまだ資料出来てないんですけどね☆
 以下アイーナさんでご紹介いただいている内容になります。



 職業、鍛冶手伝い
    ~南部鉄器鉉(つる)の伝統を受け継ぐ~   
   【講 師】 菊池 翔 さん (田中鉉工房[鉄器鉉(つる)・その他鍛造品製作])
   
    岩手山と北上川に代表される岩手の山河が育んできた手仕事。その一つに鉄工芸品があります。
   本講座では、鉄瓶の鉉(つる)を作っている森の鍛冶屋さんに、砂鉄・鉄鉱石を原料に、川砂・粘土・
   木炭などを使って作られる鉄工芸品の工程などをお話していただきます。

 日時 平成24年 12月16日(日) 13:30~15:00 
 
 【会場】 環境学習交流センター(アイーナ5階)  ※入場無料

 【お申込み・お問合せ】
   環境学習交流センター
   TEL:019-606-1752 FAX:019-606-1753 E-mail:eco☆aiina.jp(☆を@に変えてください)

 


  なるべく見苦しいことのないよう、お越しいただく方に何か一つでもお持ち帰りいただくことがあるよう、努めさせていただきます。ぜひ宜しくお願い致します。

後継者の考える「後継者問題」

2012-11-18 17:31:33 | ひとりごと

 盛岡市のもりおか歴史文化館での「南部鉄器青年展」も17日土曜日より無事開催の運びとなりました。盛岡南部鉄器若手職人たちの力作を一同にご覧いただけます。25日(日)までの会期となっておりますので、多くの方のお越しを心よりお待ちしています。
 
 忙しさのあまり認識が薄れていたのですが、ここ1年ほどの間で盛岡南部鉄器業界には続々と20代の新人さんが入門しています。盛岡の鉄器業界の若手から中堅の層が確実に固められつつあり、5年ほど業界最年少だった私も肩の荷が降りたというか、とにかく安心です。気づけば30代まで残りわずかとなってしまいました。
 伝統工芸にとどまらず、伝統産業・伝統文化の各分野で長い間問題視されているいわゆる「後継者問題」のリスクは現在の盛岡の鉄器業界にほぼ存在しないと言えます。私自身、個人としての意識も社会的位置づけも、伝統産業の現場に従事する「後継者」の一人となりますが、果たして伝統工芸における「後継者」という意味合いはもっと広いものではないかと常々感じるところがあります。
 様々な場面で取り上げられる伝統産業における「後継者」の言葉の意味は、あくまで伝統産業の現場で次世代の担い手として入門またはお仕事をされている方を指すように聞こえますが、「伝統工芸品」という分野の特性上、お客様に「使っていただくこと」無くして本当の意味で成立するものではなく、いくら現場の作り手が品質の高いものをつくったとしても、その本質的な良さを認めて使っていただく方がいなければ、伝統工芸という一つの世界は長期的にに成立するものではありません。また、つくられたものの全てを現場の職人が販売することは絶対的に不可能ですので、きちんと正しくもののよさや使い方を伝えて「もの」と「使い手」の方とをつなげてくださる「売り手」の方の存在が必要不可欠です。
 この様に、現場の作り手から離れた「もの」が良い形で「使い手」の方のもとに届き、「もの」としての役割を全うするまでに関わるすべての方が「後継者」ではないかと思います。そうあって欲しいという個人的な思いもありますが。伝統工芸品の本当の意味での良さを理解していただき、積極的に関わって下さる方が増えていくこと。「現場の後継者」の一人としての大きな願いです。
 
 
 
 

石鳥谷図書館での展示のお知らせ

2012-10-30 17:08:53 | お知らせ
 直前のお知らせとなってしまいましたが、花巻市の石鳥谷図書館で明日10月31日(水)から11月18日(日)まで作品展を開催させていただきます。「私事」で制作してきた過去の作品から現在のものまでを展示します。
 今回お声をかけていただきましたことで、地元花巻での作品展はこれで2度目となります。
 
 「菊池翔鍛治作品展」

  会 期 10月31日(水)~11月18日(日) ※最終日15時まで

  石鳥谷図書館2階ギャラリー

  開館時間 9時~18時
  
  休 館 日 11月1日(木)、 3日(土)、 5日(月)、 12日(月)

 

  
 皆様のお越しを心よりお待ちしております。是非、足をお運び下さいませ。