フットボールレビュー

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南アフリカ大会~スペインへの期待~

2010-07-07 06:57:46 | W杯
スペイン代表を見ていて、どうしてもバルセロナのフットボールを反映して見てしまう人は私だけではないだろう。
あの小気味良いパスワークと常にこじ開けようと狙っている辺りは本当にバルサの哲学そのもの。
ただ、試合を勝ち進むに連れ、足りないものが見えてきた。

まずズバリ、単純にサイドが効果的に使えていない。
スペインの中核をなすシャビ、イニエスタ、ブスケッツ、プジョール、ピケ。
いずれもバルセロナの選手だが、特にシャビを中心に彼等の攻撃は動く。
どの選手もバルサでも代表でも真ん中寄りでプレーする選手なのだが、バルサではサイドにメッシやダニ・アウベス、アビタル、ペドロが広く開き有機的に絡む。
スペイン代表にそういった絡みがなかなか見られていない。
ラモスやセスク、アロンソ等は中に切り込むクセが強く、相手ディフェンスの一番嫌でかつ、バルサが最も取りたがっているポジション、相手ゴール水平ラインまで切り込めない。
攻撃が相手ディフェンスから見て扇状(150度)ぐらいに留まっており、中央突破を中心に守れば何とかなってしまう。(それでもこじ開けられるから勝てているものの・・・)
これはドイツ、オランダと比べ大きく劣る部分だと思う。

更に言うと、プジョル、ピケの鉄壁と思われていたディフェンスが、実はバルサのポゼッションによるものだということがW杯ではっきりしてしまった。
というのも、ディフェンスを押し上げたままボールを奪われたとき、バルサでは高い位置からのプレスで奪い返そうとし、最低ディレイさせてからディフェンスにつけるが、代表でそのプレスをかいくぐられた時のディフェンスの弱さがあからさまになってしまった。パラグアイ戦でのピケの、彼が6冠のチームのトップディフェンダーだとはとても思えないようなファウルは、チームを敗北に追いやる可能性だってあった致命的なミスだったと思うし、プジョルも南米の選手相手ではフィジカルで厳しい場面が何度か見られた。2008EUROでも同じような場面が見られたのかもしれない。ただ、あの時は中盤の最高のバックアッパー、マルコスセナがいた。ブスケッツにその役目がこなせるとは思えない。

この、ピッチを広く使えない点と、ディフェンスに難がありすぎる点2点がスペインとバルセロナの大きな違いだと考える。

そして最後に何より思うのが、コミュニケーションの部分。リーガであれだけ対立する2チームの選手、しっかり意思疎通出来ているのだろうか?さすがにそういう低いレベルのことは無いと皆さんお考えだろうが、予選から見ていて、どうしてもそれを感じさせられてしまうシーンを何度か見てきた。
ここが他のチームとの決定的な差を生み出してしまわなければ良いのだが・・・。

いずれにせよ、オランダが決勝進出決定した今、決勝で観たいのはオランダVSスペイン。
ドイツ戦、サイドを効果的に使って、またカウンターを受けたときのプレスをしっかり確認して、これまでより多少堅実に戦って何とか勝ってもらいたい。