フットボールレビュー

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南アフリカ大会~日本が示したもの~

2010-07-09 07:59:42 | W杯
さて日本代表。
開幕前、誰が代表に期待しただろうか?

私は予選突破は解らないが、カメルーンには勝つと思っていた。
親善試合のカメルーンの組織力の無さは、日本どころではなかった。
ただ、正直ここまでチームが良くなるとは思わなかった。

カメルーン戦、とあるサッカー評論家から「日本のW杯史上、最も醜い勝利」と書かれて酷評されている。
この人のコラムはいつも内容があまりに浅はかで、笑わせてもらっているのだが、カメルーン戦は私は、内容的には素晴らしかったとはいえないかもしれないが、あの戦い方を思いついたこと自体が日本サッカーの進化の賜物だと感じた。
カメルーン戦の日本が最悪なら、このW杯に最悪以下な試合がどれだけあったことだろう?
急遽ゼロトップの頭に抜擢されたFWが得点を決め、勝った。
それだけで少なくとも「最も醜い」にはならないはずである。
むしろサイドからのクロスで日本が世界相手に点を取ったのだ。
こんなスタンダードな形で得点出来るとは、試合前誰が予想しただろうか。

そんなカメルーン戦を経て、オランダ戦。
経験の差というしかないオランダの試合運び。この試合、日本の経験不足が最も出たと思う。
トラップ、パス等の個人技術の違い、中盤の組織力の違い、フィジカルの違い、全てに置いて劣勢だった。
その結果3度のフリーを作り、その1回をスナイデルに決められた。
あと2回、アフェライに決めさせなかった川島は、見事だった。
あれだけディフェンシブに戦って、それでもこじ開けられる。
ちなみに先ほどのコラムでは、この負けを「日本のW杯史上、最も感動的な敗北」と書いていたが、感動なんかしてる場合ではない。
そういう強豪との善戦後に、評論家とも名乗るお方達がいちいち感動するのはもう、辞めにして欲しい。
この試合こそ、その明らかな差を感じ、学んでいくべき試合だったと思う。

デンマーク戦は、本田が良く口にする「準備」が日本のほうが出来ていた。
この試合がまさに「ジャイアントキリング」というやつだと思う。
フィジカルで明らかに不利な日本が、セットプレーというポイントを生かし、堅実に得点を決め、相手を翻弄する。
最高だった。この試合で日本が、世界で言えばどのレベルなのかがある程度解った感じがした。

パラグアイ戦、ここも経験の差だった。
日本はもっと果敢に攻めることが出来たはずだが、少しの欲が出たのか、負けられない気持ちが強すぎたのか、堅くなりすぎた。
実質初のトーナメント戦、上々な結果だったと思う。

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さて、それでは日本が示したものは何か?
ズバリ「団結力」それに尽きる。

サッカーをずっと見ていると、ほんの些細なシーンでチームの結束力が見えるときがある。
今大会最も結束しているチームはオランダ。EURO2008からのメンバーが多くを占めるオランダは、チームが成熟している上、選手間の信頼が厚い。
スペインも同じようではあるが、そこはオランダのほうが上だと感じる。
そして質は違えど同じように結束していたのが、我が国日本だった。

どん底まで落ちた岡田ジャパンは強かった。
下手に壮行試合で勝っていたら、思い切った変更も出きず、中途半端に終わったと思う。
最下部まで落ち、怖いものが無くなった日本だからこそ、カメルーンに立ち向かえた。
プレーの質に拘らず、気持ちだけで頑張る日本が見られた。
ただそれもやはり3戦までで、「勝ちたい」「勝てるかも」と思ってしまった決勝リーグでは、やはり自分達の試合が出来なかった。
そこは今後の課題として勉強になった部分。そして最も大切なことを日本代表に教わった。

「W杯は、良い選手がいるチームが勝つのではない。良いチームが勝つ」ということ。

ポルトガルにはロナウドがいた。
アルゼンチンにはメッシがいた。
フランスにはリベリーがいた。
ブラジルにはカカーがいた。
カメルーンにはエトーがいた。
コートジボワールにはドログバがいた。
イングランドにはルーニーがいた。

毎回W杯は「○○の大会になる」と言われた選手が活躍できない。
それは当然なのだ。チームが良くないと活躍できない。
本田がどうして親善試合で全く何も出来なかったのか。
それは本田を生かすチームじゃなかったから。
生かすチームを作ったから、本大会では活躍できた。
そんなものである。

日本は即席チームなのは否定できなかった。
この日本代表が技術や組織において今後日本のためになったか?というなら、それははっきり「参考になるような代表だった」とは言えないかもしれない。
ただ、技術や組織をいくら高めても、フランスのようにチーム内が分裂しているようでは、W杯では絶対に勝てない。
どんなチーム相手にだって負ける可能性はある。
そもそも、W杯で技術の差がはっきり出てくるのは、ベスト4以降といって良いぐらいだと思う。
クラブチームと比べたら、全てのチームが即席チームといっても過言ではない。
大切なのは戦術でも技術でもなく、玉際だったりする。
大会前最低だったチームだからこそ、そんなチームでも士気1つで予選突破も可能であることを、我々に示してくれた。
なんだかんだで岡田監督は評価しなくてはならないと、私は思う。


1 コメント

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Unknown (ウータン・ピチ)
2010-07-09 21:26:17
団結力を日本の伝統にしたいねえ
見てて気持ちがいいもんな
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