フットボールレビュー

ヨーロッパのサッカー中心に、戦術的観点から試合をレビューするブログ

南アフリカ大会~決勝を前に~

2010-07-09 22:57:52 | W杯
決勝まであと2日。
勝敗を分けるであろう要素を、私なりに考えてみた。

今大会のスペインサッカースタイルは、言うまでも無くバルサにあり、クライフにある。
攻撃サッカー、勝利よりもスペクタクルを貫くバルセロナのフットボールは美しい。
ただ、バルセロナの試合はその追求に走りすぎて、時に弱者戦術に映りすぎるときがある。
08-09のCL準決勝チェルシー戦、最後にイニエスタが決めたから語り継がれる試合になったものの、あの試合のパス回しなどは効果的な攻めとは言いがたいものだった。
下位チームとの試合では、個人のクオリティの優位もありこのようなことはあまり無いが、上位チームとの試合でかみ合わない時は、崩せない時間が続くことが多い。

崩せない=得点できない。

これがスペイン。今大会のゴールを振り返っても、パラグアイ戦などは崩そうと必死になることで、ディフェンスがおろそかになる場面もあった。


対するオランダはどうか?

オレンジ軍団は90年代もクライフのフットボールを継承し続けて、世界中を魅了した。
数多の名プレイヤーを生み、スペクタクルなフットボールの代名詞になった。
自分もそれに魅了された一人だった。
ただ、W杯前のインタビューで、デニス・ベルカンプは言った。
「クライフの呪縛から解放されるべきだ。」

今世界的に見て、オランダのサッカーがスペクタクルを感じないサッカーなのかどうかといわれると、決してそうでは無い。
ウルグアイ戦の後半、ファンデルファールトが入ってからの伝統的な4-3-3スタイル。
攻撃的でいつでも点が取れそうなあの感じは、間違いなくいつものオランダだった。
本大会前の壮行試合、メキシコ戦のゴールラッシュ。これがオランダサッカー。
ということは本大会でオランダが取っているサッカースタイルは、勝つための敢えてのスタイルに他ならない。

崩さなくても点が取れるオランダ。
現代サッカーの守備的スタイルを、従来の攻撃サッカーに織りませるサッカースタイルは、勝利して、なお魅了するという新時代のトータルフットボールを予感させる。

決勝で双方が双方のスタイルの最高点に達すると考えるならば・・・

・バルセロナのスタイルへ完全にフィットしたスペイン
・従来の攻撃スタイルに守備要素を盛り込み、新たなスタイルを築いたオランダ

どちらもトータルフットボールの現代解釈。
どちらが勝つのか、考えるだけで面白すぎて、早く見たいと同時に、この決勝があと10年先でもよいような気持ちになってくる。

甲乙つけがたい中で敢えて選ばせてもらうなら、ナショナルチームならではの新戦術という高みに達したオランダに、私の気持ちは向いているようだ。