FO-29管制局からのお知らせ

「ふじ3号」(FO-29)の運用情報をこのブログを活用して提供していきます。

FO-29電源系の解説(その7 バッテリーロジック)

2010-12-18 07:05:18 | 参考資料
 蓄電池は経時劣化により充放電特性が変化します。フル充電とトリクル充電の切り替え電圧は、電池劣化の状況に合わせて3段階切り替えられるようになっていますが、現在は最終段階の「PCUレベル3」で運用しています。
PCUレベルと各切り替え電圧は下記の通りです。

PCUレベル1  Full -> Tric   Tric -> Full
         15.36V       15.06V
PCUレベル2  Full -> Tric   Tric -> Full
         15.51V       15.21V
PCUレベル3  Full -> Tric   Tric -> Full
         15.66V       15.31V

 また、バッテリーの温度を常時監視して、温度が高くなると蓄電池の電圧に関係なくトリクル充電に切り替えます。(温度トリクルと呼んでいます)

【参考】
 充電電流
  Full充電  0.60A
  Tric充電  0.12A
 温度トリクル
  動作温度と復帰温度は後日メモします。


FO-29電源系の解説(その6 PCU)

2010-12-18 07:04:18 | 参考資料
 Power cintrol unitの略称で電力制御部です。蓄電池の充放電管理が主な仕事ですが、前述のメインリレーやOVCもこのユニットに内蔵されています。また、蓄電池の電圧が低下すると送信機等の電源を自動的に停止して過放電を防止するUVC機能(Under Voltage contorller)があります。
UVCの動作電圧は蓄電池の劣化の具合により2段階あり現在は運用末期の設定である「UVCレベル2」で運用しています。過放電の心配のない電圧に復旧すると自動的にOFFにした送信機の電源を再投入します。

UVCレベル1  UVC動作電圧  復帰電圧
         13.0V    14.0V
UVCレベル2  UVC動作電圧  復帰電圧
         12.3V    13.3V



 

FO-29電源系の解説(その5 蓄電池)

2010-12-18 06:59:53 | 参考資料
 11セル直列接続の6Ahのニカドバッテリーです。ステンレス製の角形ケースの衛星搭載仕様の蓄電池です。この10数年で電池の技術開発は著しく変化しました。この時代は電動のラジコンヘリコプターでさえ重たいニカド電池の時代です。現在、民生機器に多用されているリチウム電池やリチウムポリマー電池を使用できれば超小型の衛星も作ることが出来ますね。

FO-29電源系の解説(その3 セパレーションスィッチ)

2010-12-18 04:12:13 | 参考資料
 カップラーの底に2個のプッシュスイッチが取り付けられています。太陽電池とバッテリをON/OFFしますが、1個のスイッチで2回路のON/OFFができますが、このスイッチに不具合が発生すると衛星が動きませんので2個をパラレル接続して冗長系を確保しています。衛星がロケット分離部に結合している状態ではOFF、衛星がロケットの衛星分離部から離れるとスイッチが入る構造になっています。
 ロケットから衛星が分離してから衛星の電源が入る打ち上げを、「Cold launch」と呼び、複数の衛星を同時に打ち上げる場合にメインの衛星に電波干渉などの影響を与えないために使われる方法です。

FO-29電源系の解説(その4 メインリレー)

2010-12-17 23:20:17 | 参考資料
 FO-29はロケットから分離するとセパレーションスイッチにより衛星に電力が供給され、受信機、アナログ送信機、OBC、バス機器が動作するようにプログラムされています。「その2」でご照会しましたように2個のスイッチを用いて冗長系を構成していますが、メカニカルな機構であることや衛星の表面に取り付けられているため厳しい温度変化に曝されますので長期間の運用には不安があります。このスイッチが不具合を起こすと衛星の電力供給が停止し衛星の生死に関わりますので、衛星の内部にラッチングリレーを搭載しセパレーションスイッチと並列に接続してあります。分離後、衛星からのビーコンテレメトリが受信できたら最初に送るコマンドが、「メインリレーON」のコマンドです。このコマンドが実行されたというテレメトリが確認できれば最初の大きな仕事が完了となり運用関係者は「ほっと一息」付くことができるのです。