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最後の旅立ち

2017年04月26日 22時23分34秒 | MEMO)日常



先日、祖父が亡くなりました。



4月上旬。旅から帰ってきて2日目の早朝4時。
母の「じっちゃんが危篤だって」という言葉で目を覚まし、急いで隣町の病院へ向かいました。
祖父は隣町の老人ホームに入居していて、先月母が会いにいった時には元気だったと聞いていました。
しかし4月に入って突然の入院。そして、突然の容体悪化。
いつかは来ると思っていましたが、あまりにも急で、何も心の準備が出来ていないまま病室へ…

そこには、呼吸器を付け、意識を失ったままただただ必死に呼吸を繰り返す祖父がいました。
涙があふれて止まりませんでした。
私が最後に祖父に会いに行ったのは1年半前で、その時には大好きな大福をぺろりと食べていました。
認知症で、私の事を忘れてしまっていたけど、会いにいったら嬉しそうにしてくれました。
でも、今、そんな意思疎通も出来ない。
生きるために、息を吸って、はく…命の姿でした。
そんな必死に生きようとする姿と、もっと会いに行けたらよかったという後悔が、涙となって止まらなかったのです。

でも、祖父はとっても優しい人でした。
数日後、意識を取り戻したのです。
呼吸器は取れないままですが、酸素濃度も安定して、とても落ち着いていました。
私が「じっちゃん!」と声をかけると、こちらを見て可愛い笑顔を見せてくれました。
入れ歯がないので何を話しているかはわからないけれど、必死に何かを伝えようとしてくれました。
時には腕をぐるぐる回して、驚かせてくれました。
別れ際には、温かい手を差し出して、力強く握ってくれました。
毎日祖父に会いに行っては、その姿に元気をもらっていたのは私の方でした。
"もっと会いに行けたらよかった"という私の後悔を、祖父は消してくれたのでした。

そう、きっと祖父は、私達を悲しませないように…
最後まで私達の幸せを願って、生き抜いてくれたのだと思います。

気がつけば最初に病院へかけつけた日から、2週間が経とうとしていました。
その日会いにいくと、また血圧や酸素濃度が低下していて、意識もありませんでした。
だけど顔も血色がよくて、あの日ほど辛そうになかったので、
また明日には元気な姿を見せてくれるんじゃないかと、そう思っていました。

昼食を終えた時、病室に呼ばれました。
危篤でした。
先ほどまで血色のよかった顔は、真っ白になっていました。
そして呼吸の数は、時が過ぎるごとに減っていきました。
祖父が1つ呼吸をするごとに、皆一緒に呼吸をしました。
しかしついに、祖父の口が動かなくなりました。
「じっちゃーん、息するの忘れてるよー」
叔母さんの声と共に、心電図が0になりました。


祖父が、亡くなりました。


いつ旅立ったのかわからないくらいに、静かに、安らかに。


ついさっきまで、触れたら呼吸を感じていた肩は、もう、ピクリとも動かない。
そんな肩を抱いて、真っ白になってしまった頬をなでて…
じっちゃん、ありがとう。ありがとう………ありがとう…。
感謝の気持ちが、止まりませんでした。



葬儀の前に、湯灌師さんに体を綺麗にしてもらった祖父は、
まるで別人のように、俳優さんのように美しい姿で、棺に眠っていました。
苦しまず、安らかに旅立った祖父は、幸せそうな顔をしている気がしました。
祖父の棺に、折鶴を添えました。
祖父を天国へと、導いてくれるようにと、願いをこめて。
告別式では、私を含め、親族みんな、なかなか祖父から離れられませんでした。
これが、祖父の体に触れられる、最後の瞬間。
でも、もう、旅立たせてあげないとね。
・・・
火葬し、まっさらな骨だけになった祖父を、骨壷に納めました。
正直、その頃には、祖父が亡くなったという実感が湧くだろうと思っていましたが、
未だに、湧いてこないのです。
祖父の遺影を見るたびに。
また大福を食べているかもしれない。また、私が会いに来たのを喜んで、笑いかけてくれるかも…しれない。
数日前まで、あんなに素敵な笑顔で迎えてくれていたから…未だに信じられません。

ですが、悲しくはないのです。
とっても寂しいけれど、悲しくはない。
それは、祖父の優しさのおかげです。
小さい時、一緒に買い物に行ったこと。
祖父の作るステーキが大好物だったこと。
老人ホームに会いにいった別れ際、見えなくなるまでずっと、名残惜しそうに手を振ってくれたこと。
そして、亡くなる前に、一緒に笑いあえる時間をたくさん作ってくれたこと。
私のこと、忘れてると思っていたけど、きっと……覚えていてくれたこと。
私にも、家族にも、老人ホームの方や看護婦さんにも…みんなに笑顔と幸せをくれたこと。
そんな祖父の温かさが心の中で今も生き続けていて。
じっちゃんはこの世界での役目を終えたんだ…立派に…だから、悲しくないのです。
ただただ、感謝の気持ちで、いっぱいなのです。
祖父のおかげで生まれてきた命、出会えた命が、たくさんある。
一生懸命頑張って人を幸せにしてきた87年だったから、もう、休ませてあげなくちゃね。
じっちゃん、お疲れ様。
ありがとう。


私も、じっちゃんみたいに、この命が果たすべき役目を全うできるように頑張るよ。
めいっぱい幸せになるよ。そして、多くの幸せを与えられる人間になるよ。
だからこれからも、見守っていてね。
でもまずは、ゆっくり、ゆっくり…休んでね。



ありがとう。

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2 コメント

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Unknown (グッチ)
2017-05-07 12:30:52
自分の祖父も23年前に亡くなりました
66歳でしたね
いつも本を読んでくれたりしました
火葬場所のマイクロバスを三輪車で追い掛けて行ったらしいのですが記憶にありません
暫く墓参りに行ってないですね
たまには行ってあげないといけませんね
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Unknown ()
2017-05-07 14:24:18
グッチさん>
幼い頃にお別れがあったのですね。
お墓参り、とても喜ばれると思いますよ。
自分自身を見つめるきっかけにもなりますよね。
私も祖父にいい報告を出来るようにがんばろうと思います^^

でゃ!
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