教育のとびら

教育の未来を提言 since 2007
presented by 福島 毅

「コスタリカの奇跡」映画上映&トークショー

2018-08-18 | 研修・セミナー・講演など
2018年8月18日 武蔵野スイングホールにて、ピースフェス2018(パルシステム東京主催)が開かれ、映画「コスタリカの奇跡」上映とトークショーに参加してきました。今回は、特にその中で、当映画を配給しているユナイテッド・ピープルの関根健次氏のトークが興味深かったので、そのレポートをします。。

映画「コスタリカの奇跡」については、各地で自主上映会が行われたり、DVDとしてもアマゾン等で販売されているところなので、詳細についてはそちらを実際にご覧いただければと思います。

映画「コスタリカの奇跡」(公式サイトより引用)
===ここから引用===================
『コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~』は、1948年から1949年にかけて行われた軍隊廃止の流れを追いながら、コスタリカが教育、医療、環境にどのように投資して行ったのかを詳しく説明する。アメリカでは公的債務、医療、そして軍事費が日増しに増大していっていることとは対照的だ。この映画は軍隊廃止を宣言したホセ・フィゲーレス・フェレールや、ノーベル平和賞を受賞したオスカル・アリアス・サンチェスなどの元大統領や、ジャーナリストや学者などが登場する。世界がモデルにすべき中米コスタリカの壮大で意欲的な国家建設プロジェクトが今明らかになる。
==========ここまで引用============

映画上映後、1時間ほど、当映画を配給している(株)ユナイテッド・ピープルの代表取締役社長 関根健次氏から、コスタリカに暮らした経験からコスタリカの魅力や平和の取組についてのトークがありました。そこでのお話を、いくつかの要点に分けてレポートします。関根氏は、2016年4月から家族4人で世界一周の旅へ出て7月から約1年、コスタリカに暮らした経験から、いくつかのキーワードに分けてお話されました。なお、関根氏のブログでコスタリカ関係の記事は、2018年4月21日記事2017年8月21日記事、などがアップされています。

「近代コスタリカの出発点は、1948年12月に革命に勝利したホセ・フィゲーレス・フェレール(後の大統領)が「兵士の数ほど教師を」をスローガンに突如軍隊を撤廃したことが挙げられるだろう。この歴史的出来事を経て、コスタリカは軍事予算ゼロを実現。教育費として実に国家予算の3割を費やし無償化。医療費も無料とした。国民の幸福度の最大化を目指す福祉国家へと向かっていったのだ。教育への熱心さは憲法にも現れており、憲法でGDPの8%を教育費に使うと明記されているほどだ。(上記2017年8月21日記事より)」

1.大胆さ
・コスタリカの人々は、大統領をはじめとして、国民性として大胆なところがあるといいます。
コスタリカの軍隊廃止は、ホス・フィゲーレス元コスタリカ大統領により1948年に達成されましたが、この軍隊廃止の他にも、「GDPの6~8%を教育費に充てる」とか「エネルギーの100%を再生可能エネルギーにする」など大胆な宣言をし、それを政策として実行・実現していくところだといいます。軍隊廃止は達成したほか、GDPの教育費の割合も目標に達しており、再生可能エネルギーも96%以上の達成に現状なっているということです。大胆な宣言をして、それを有言実行な形で政策に反映していく力をコスタリカは持っています。今は平和国家は当たり前で、今は環境先進国として世界をリードしようとしているようです。

2.積極的平和
・「積極的平和(Positive Peace)」の概念は、自国のみならず国際社会の平和と安全の実現のために、能動的・積極的に行動を起こすことに価値を求める思想のことで、ノルウェーの平和学者であるヨハン・ガルトゥング博士が1958年に提唱した概念である。ガルトゥング博士の来日のHUFFPOST記事およびインタビューはこちら
・平和を唱えるのに日本では”反戦”という色彩で語られることが多いけれど、コスタリカで語られている平和は、「国民の幸福度をあげること」「格差のない社会を実現すること」「関係諸外国に対して平和で巻き込み、敵をつくらない外交戦略」といったいわば能動的なアクションのある平和戦略であり、ここに、ガルトゥング博士の提唱する積極的平和が表現されていといいます。
・世界で軍隊を持たない国は25か国。Wikipediaの記載では、コスタリカにアメリカ軍が駐留しているように書いてあるが、あれは誤った情報とのこと。(関連記事はこちら
・映画にもありましたが、積極的な外交というお話もたくさん出てきました。敵をつくらない、軍備を持たないことで平和が維持され、またその予算を教育や医療などに回せば国が豊かになり、国が豊かになれば訪れる人が増え、訪れる人が増えればその人々が大使として各国でコスタリカの良さをまたアピールしてくれる。そんな国に軍事進攻すれば世界が黙っていないという雰囲気がつくられるということだそうです。
・世界をたった一日でもいいから殺戮のない平和な日にしようというピースデイについても、コスタリカが積極支援し、国連決議まで持って行った経緯があるそうです。
・2017年7月に国連で採択された核兵器禁止条約の条約交渉会議もコスタリカのエレイン・ホワイト大使が務め、これは実に20年にわたる下準備の末に成立したといいます。ここにコスタリカが大きく貢献しています。(参考記事はこちら

3.国民が平和を実感し、幸福であること
・コスタリカの人々は、とにかく平和であること(怒らない)、”Pura Vida(プラ・ビタ:純粋な人生)”という挨拶言葉を日常で頻繁に使い、温和で家族との時間を大切にし、豊かな自然に溶けこんだ国民性とのこと。誰も奪い合わない、占領しないということ。
・英国のシンクタンク「ニュー・エコノミクス財団」が3、4年ごとに調査・発表している「地球幸福度指数」において、コスタリカは2009年版、2012年版、2016年版と3回連続第1位。(参考記事はこちら

4.政治との距離が近いということ
・議会などは、誰でも自由に傍聴ができます
・大統領の本選前に、本番さながらに子ども投票が行われ、その結果もマスコミから報道されるそうです。「子どもたちはこうゆう結果を出したけど、では大人はどうする?」というスタンスなのだそうです。
・政治家との距離が近く、関根さんが国会見学に行った時、1人なのに丁寧に案内され、経済大臣を紹介してもらったり、その経済大臣が市民と語らうところに同席させてもらったりと、政治家と市民との距離感がフランクでとても近いということ
・憲法がしょっちゅう改正され、よりよいもの、時代にあったものに作り替えられていくということ

5.ビジョナリーのリーダー
・ビジョンは、あたかもそれが過去に実現されたかのような明晰さで語られるということ。それができる、ビジョンを語れるリーダーがコスタリカには多いということ
・これはできるのだということをリーダーが明確に示す。そして実現までのステップのハウツーをたくさん挙げて実行していく。
・ビジョンについて言うと、パズルの破片をたくさん渡されてもそれを組みあげていくことはできない。しかし、ピースがはまった状態の完成物を一度目にしておけば、パズルのピースをはめていく作業はできるということ。

他にも楽しいお話をたくさん伺いましたが、すべては書ききれませんので、リンク記事などをご参照ください。
まだまだ時間が足りないという感じで、50分のトークショーが終わりました。

さて、今回の映画とトークショーで響いたポイントを3つに絞ってまとめてみます。

1つ目は、自らが能動的に動くことがあると思いました。平和は、指をくわえてみていても、安定の枕の上に寝ていても、維持できるものではないし、まして紛争地域・平和がもたらされていない(格差なども含む)地域にリーチしていくことはできないということ。今回、このブログをまとめたのも、一つの自分の行動です。多くの人の智慧を使って、どうしたらより地球の広い地域に平和が訪れるかを対話し、具体的な1歩を小さくていいから行動していくということでした。

2つ目は、明確なビジョンをもち、それを示して宣言するということ。何かを批判するのは簡単だし、問題をあぶりだすのもそれほど難しくはありません。しかし、理想的な実現可能状態を明確に示す、つまり目指すべきビジョンを明らかにしていくことの大切さというものがあり、これはリーダーには特に不可欠です。また、コスタリカの国民ひとりひとりが、国の代表者のように政治に関心を持ち、そのために自分がどうするかという個人単位のビジョンも大事で、政治家・代表者任せではいけないということでした。

3つ目は、視野を高く持つということ。地球規模で、我々はどうしたいのかという視座を持つこと。そして自分たちがまずは示すというリーダーシップ。戦争で物事を解決しようという国に対し、コスタリカの政治家は「大人になれよ」とたしなめます。再生可能エネルギーやカーボンフリーなど達成がなかなか困難そうなことについても、小回りが利く小国のメリットを生かして、より早く達成し見本を示そうとしています。これはリーダーシップのみならず高い視野からの戦略なくしては実現していきません。

当ブログでは、何度かコスタリカのレポートを過去にアップしていますが、まだまだ研究の余地がありそうですので、また機会あればレポートしていきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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