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日々・戯言の叫び

感じた事とか色々、表に出せない事を吐き出す独り善がりで嘘つきな日記

うっそ、四月のブログ書いてなかった!?

2019-04-27 15:58:33 | 小ネタ
ひぇ~、びっくり。
いや、うっかりしすぎだわ自分。
五月前にちゃんと投稿しておこう。
いつもの二次創作ですが!

今日凄く寒くね? なんなの、風の強さもあいまって凄く寒いんだけど。
場所によっては雪が降るとか。
大丈夫?
10連休、大丈夫? 天気?


ですまーく。
パラレル。猫と九条さんのお話。腐った。仕方ないね!


九条館猫語り


九条家。H市でも有数の名士であり、街外れに構えられた古い様式の立派な洋館は常に重厚な空気を纏い他者を寄せ付けようとはしない。
一見すれば館の住人は数多の使用人に傅かれて暮らしているのだろうと思われがちだが。
その実、この九条館に住んでいるのは九条家当主である九条正宗と妹九条サヤの二人だけ。
両親を早くに亡くし、親類縁者も近隣に住む者はなく。
広い広い屋敷で兄妹たった二人、暮らしていた。

猫の影を見るようになったのはいつの頃だろうか。
自室の窓からぼんやりと庭を眺めていた九条正宗は考える。
いつの間にか、九条館の庭に猫が住み着いていたらしい。どこからかやってきた猫は茶色の背に白い腹。すらりと長い体で庭を歩き回りながら時折此方を警戒するように見つめる。
そのうちサヤが餌を与えるようになり、なし崩し的に九条館の正式な住人となっていた。
妹によって八敷と名づけられ黒い首輪を与えられた猫は長毛の血でも混ざっているのか、体は半端な長さの毛並みの癖に尻尾だけがやたらにふさふさとして妙にアンバランスだった。
手触りがよいと言って妹は喜んでいたし、暇なときはよくブラッシングしてやっているのを九条は知っている。
喜んでいるならばいいかと、九条自身はとくに猫を可愛がるわけでもなく適度な距離を保っていたが。
一度どうしてこの名前にしたのかサヤに聞いた事があったけれど、直感との答えが返ってきて以来彼女のセンスには口を挟まないと決心した。
八敷は随分賢いらしくトイレの場所もすぐに覚え、サヤの自室にも九条の自室にも勝手に入ることもない。転がる玩具にじゃれ付くことも、猫特有の気まぐれな悪戯も今のところ見られない。
たいてい庭をうろつくか、寝床と定めた一階のソファの上で丸くなっているだけの、大人しい猫だった。
そんな八敷にもどうやら友達はいるらしい。
黒猫だ。
八敷が窓の外を見てなーんと鳴くとき、大体庭に黒い猫が鎮座している。
気付いた九条かサヤが外に出してやれば尻尾を揺らしながら黒猫に寄って行き、派手にじゃれ合うことは無いものの二匹で共にすごす。
目の色と同じ緑の首輪をしているから黒猫はどこかの飼い猫なのだろう。
名前も知らぬその猫は九条やサヤが近づいてもどこ吹く風でちらりとも視線を寄越すこと無く、どこかふてぶてしさを感じさせる風体で。
それの態度は八敷にも共通で、けれど仲が悪いわけでなくこの二匹はそれなりにうまくやっているらしい。
昼近くにやってきた黒猫は日が沈む少し前まで八敷と共に九条館で寄り添って、ふらりと姿を消す。
ごく稀に泊まるときもあるが、朝九条が起きる頃になるともういない。
八敷と同じで悪さをするわけでもないので好きにさせている。
二匹仲良く庭で日向ぼっこをしたりたまに軽くじゃれあい、時にこの九条館を我が物顔で探索したりサヤからおやつを貰ったり。
館の主が如く廊下を悠々と歩く黒猫の姿はもう見慣れたものだ。
八敷はどちらかと言うとサヤに懐いているが、黒猫は何故か九条に懐いている、らしい。
いや、懐いているのかどうか良く分からないが。
気付いたら黒猫はいる。
ちょこんと傍らに座って九条を見上げているのだ。
その度になんとなく手を伸ばして軽く撫でやっているが。
サヤに対してはそんなことはしないようなので、やはり九条に懐いているのだろう。
でもたまに撫でようと伸ばした手を尻尾で払われたりするので、本当に懐いているのだろうか?
猫の機嫌と言うの物は良く分からない。
日常に溶け込む猫を眺めてすごす事が当たり前になった頃。
黒猫が九条館に来なくなった。
一日や二日なら何もおかしいことは無い。
黒猫は猫らしく気まぐれで来ない日だって普通にあった。
でも、一週間。そう一週間は長い。
このところ八敷はまるで置物みたいに窓辺にうずくまって、ずっと外を眺めていて。
その横顔は――猫には不釣合いな表現かもしれないが――ひどく物憂げに見えた。
サヤも心配なのだろう、八敷の背中をゆっくりと撫でいる光景を良く見る。もちろん九条も気にはなるが、どこで飼われているかも分からぬ猫であれば調べようも無い。
もしかしたら明日当りでもひょっこり庭に姿を現すかもしれない。
そう思ってそれからさらに数日が虚しく過ぎて。
朝から猫の鳴き声が騒がしかった。
普段大人しい八敷が鳴いている。
鳴くというより叫ぶ、喚くと表現した方がいいかもしれない。
それほどにうるさかった。
「どうしたんだ…?」
いつもならベッドで寝息を立てている時間。
強制的に起こされた九条は不機嫌に階段を下りた。
広い九条館全体に響き渡るほどの鳴き声は異常事態を伝えたが、九条の頭はまだそれを導きだせるほどに覚醒していない。
一階のホール、猫には到底開けることの叶わない重厚な扉にがりがりと両手で必死に引っ掻いている。
「八敷、爪を立てるな」
爪とぎは決められた場所でやる八敷の様子にようやく何かあったのかと思い至った九条。
足元で己を見上げる飼い猫の要望通り扉を開けてやれば、八敷は普段ののんびりした様子が嘘みたいに一目散に庭に駆け出した。
止まない鳴き声に気になってあとを追えば、庭の片隅茂った植木の影丸まるのは。
「あ、お前…」
きつく目を閉じたあの黒猫。
体を寄り添わせながら八敷はしきりににゃーにゃーと鳴いて、訴えかけるように九条と黒猫を交互に見つめる。
微動だにしない黒猫に嫌な予感がする。体が小さく上下しているから生きてはいるのだろう。
けれど、ここまで反応が無いのはおかしい。
「……おい」
恐る恐る伸ばした指先に触れた体は冷たくて。
確か猫の体温は人間のものより高かったはず。これは、まずいのではなかろうか。
咄嗟に抱き上げ館に駆け込む。
乾いたタオルで包み込んで、どうしようかと困惑するばかり。
こんなときに限ってサヤはいない。どうしても外せない用件で少し前から海外に行っている。八敷のことを九条に任せていってしまった。
猫の世話を含めて大体のことをサヤに任せきりにしていたことを今更ながら悔やむ。
「ええと、確かにここに…」
ごそごそと電話の置かれている付近を漁り、探し出したのはいつも八敷を診てもらっている動物病院の診察券。
確認した診療時間までまだ間がある。
抱いたままの黒猫の体をさすり何度か声をかけてみるもやはり反応はなく、よじ登ってきた八敷も舐めたりするがぴくりともしない。
キャリーバッグに黒猫を入れれば当然の様に八敷も入り込み、そっと横に寄り添って動かないのでそのまま連れて行くことにした。
診察した獣医によれば体そのものに問題は無い、原因は精神的なものだろうと告げられて。
一応点滴は打ってもらったものの、それだけで。
連れ帰った黒猫を前にしてどうすれば良いのか頭を抱えるばかり。
眠っているのか意識が無いか、ずっと目を覚まさない黒猫を客室の一つに置いた猫用のベッドに寝かせ暫くは九条もここで寝泊りすることに決めた。
世話といってもずっと動く気配の無い黒猫だ、ただ抱き上げた体を撫でてやるとかスポイトで水をやるとか異変は無いか見る程度。
八敷の方がよほど甲斐甲斐しく世話をしている。
片時も離れず顔から体から舐めて毛繕いをし、常に寄り添って冷えた体を温める。
その甲斐あってか三日目にしてようやく黒猫は目を開けた。
うっすらとではあるが綺麗な緑が此方を映したときは感動したものだ。
それから、ほんの少しずつではあるが自ら水を飲み餌も食べるようになって。
小さな鳴き声をあげるたび八敷はどこにいようとも飛んでいって黒猫の隣にそっと座る。
そんな二匹の姿を見てほっと胸を撫で下ろす。
なんとか元気になった黒猫に、しかしふと疑問がわいた。
「お前、帰らなくて良いのか?」
あの日以来ずっとここにいる。黒猫は誰かの飼い猫だったはず。これまで泊まることはあっても必ずどこかへと帰っていったのに。
言葉を理解しているわけではないだろう。
けれども黒猫は緑の目でじっと九条を見つめてから、ふいっと逸らして。
後はどう声をかけようとも素知らぬ顔をするだけで。
聞いてはならないことだっただろうかと九条の方が気にしてしまう。
九条館に住み着くようになっても黒猫は変わらない。
日がな一日八敷とともに何をするでもなく過ごしている。
それもで時折どこか遠くを見る目をしてるのが気になるけれど。
聞いたところで答えが返ってくるわけでもないのでどうしようもない。
そんなある日のことだ。
窓辺の黒猫が妙に外を気にしているように見えた。
釣られた様に隣の八敷も窓外に目を向けている。
視線の先を追えば門の外側、この九条館に続く木立の影に誰かが立っている。
コートを着た男らしい。
此方を伺う様子にすわ不審者かと思ったが、なんというか雰囲気が違うように見える。
だからだろうか、引き篭もりで人嫌いの気のある九条にしてはとても珍しいことに自ら扉を開けた。
「何か用ですか?」
「……」
向き合ったのは若い男。
涼しげな整った顔立ちをしているが、眼の下のひどいクマの所為で不健康な印象を受ける。
目を見開いた男はしばし言葉を探すように目を伏せて、言った。
「猫が、黒猫がこの洋館に入っていくのを見た。ここの、猫か?」
どこか歯切れ悪く聞かれて、九条もまた戸惑う。
黒猫は確かにここに住み着いているが厳密に言えばこの家の飼い猫ではない。
だからどう答えればいいのか言葉を捜しているうちに、男はじりと一歩下がりきびすを返そうとした。
「おかしなこと聞いて悪かった。俺は帰る、すまんな」
コートを翻して去っていこうとした腕をほぼ反射で掴む。
「待ってくれ! …その、良かったら話を聞かせてくれないか? あの黒猫のことを知っているのか」
「……わかった」
逡巡をもって頷く男にほっと息を吐き、はたと気付く。
なぜ自分はこの男が帰らなかったことに安堵しているのか。
ひとまず彼の肩を抱き、九条館へと招きいれた。
真下と名乗った男は刑事であるという。
玄関ホールの階段。その段上に座って出迎えた黒猫の姿を認め、真下は小さく聞きなれぬ音を呟いた。
音に答えるように黒猫がにゃあと鳴く。
「真下?」
「なんでもない」
ソファを勧めれば大人しく腰を下ろして、ささやくように話し出す。
あの黒猫は真下の先輩にあたる刑事の飼い猫だと。
「そうか。それで、その人は今どこに?」
「……」
問いに答えるよう落ちた沈黙に、流石に察する。
「亡くなった。あの人の葬儀が終わってから姿を見なくなって、気にしてはいたんだが。この館に入っていくのが見えたから」
視線をさ迷わせる真下は自分の方こそ今すぐ死んでしまいそうに見えて。
「世話になっているのなら良かった」
そう言って腰を浮かせる真下の肩を掴まえる。なんとなくこのまま帰したくなかった。
青褪めた顔は一人にすれば消えてしまいそうなほどで。
「せっかく来たんだ、少しゆっくりしていかないか?」
「いや。俺は」
ゆるりと首を振る真下の足元、件の黒猫が静かに見上げていて。
「ほら、久しぶりに会ったんだろう」
少々強引に再びソファに座らせれば、黒猫は迷わず彼の足の上に飛び乗った。
あまり愛想が良いと言えない黒猫がこうして自分から誰かの膝に乗るなんて、実は無かったこと。
じっと見つめる黒猫を見つめ返し、ぎこちなく手を伸ばす真下。
それを見届け、なんとなく拗ねた様子でカーペットに転がっている八敷を抱き上げてやる。
膝に乗った黒猫と真下。
見比べてどことなく似ているなぁなんて思いながら彼とこのまま、はいさようならと言うには些か寂しい気がしたので定期的に黒猫に会いに来るよう提案してみようと思案した。


君の降る場所。愛しさの雨に包まれて、私はここで生きて行く!!

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