日々・戯言の叫び

感じた事とか色々、表に出せない事を吐き出す独り善がりで嘘つきな日記

捏造は楽しい

2008-03-16 15:38:35 | 零崎
未来捏造…人間関係でどうなるか分からないので今のうち、好き勝手やっときます!(威張れない)
人識君と舞織ちゃんの未来+零崎の未来SS。
妄想炸裂ですが、構わないよという方は、どうぞ



彼女は何をする事もなく、窓から空を眺め物思いにふける。
年は二十代半ばか、室内にも拘らず両手に薄い手袋をつけていた。
彼女は、殺人鬼。
たった一度の殺人で、殺人を禁じられた殺人鬼。
始めて人を殺めたときに、両手を失くした殺人鬼。
殺人を封印して、殺人鬼と呼べなくなっても、殺人鬼として生きている殺人鬼。
この世界に残された数少ない、純粋なる殺人鬼。
「母さん、父さんは?」
傍らから掛かった声に、彼女は振り返った。
いたのは中学生くらいの少年。
彼女の息子にしてはいささか大きすぎる。
「うなー。またどこか行っちゃいましたよ」
「また? ったく、父さんの放浪癖はいつもの事だけど。一声かけるくらいしてほしいな」
父さんと呼ばれるのは、彼女より二つほど年上の家族。
父という呼び方を彼は気に入ってはいないけれど。
それは少年を拾ったときに好きに呼べと言ってしまった、彼の落ち度だ。
少年は彼女が彼と世界を巡っていたときに偶然見つけた――家族。
少年を見つけたとき、彼女は彼女の兄がそうしたように、何のためらいもなく手を差し伸べ家族となった。
彼はあまりいい顔をしなかったが、それでも何も言わなかった。
そして、少年は彼らを親と呼び、彼らの息子となった。
少年に一賊のことを教え、一賊の生き方を教え、今をともに過ごしている。
少年は殺人を禁じられてはいない、自由な殺人鬼。
危なっかしいけど、ちゃんと殺人鬼をやっている。
それでもまだまだ未熟で子供で心配で。
だから、過保護になってしまうのだ。
兄もこんな気持ちだったのかと、ふと考える。
彼に言ったらあんな風にはなるなと、小突かれたが。
「母さんもさぁ、追いかける位したら?
父さんほっといたら帰ってこなくなるかもよ?」
「うふふふー、何てこと言うんですか、この子はー」
「いた! 痛い、痛いよ母さん! ちょ、気管絞めてる絞め…苦し、ぐえぇ」
ちょっとばかり絞め技をかけてやったら大げさに喚いて、ぺちぺちと腕を叩いてくる。
「大丈夫ですよー家族なんですから。それに、手の掛かる息子を一人にするわけにもいかないでしょう?」
うふりと笑う彼女に、息子はやや青くなった顔で何も答えようとはしなかった。
拗ねちゃったかな?と思いつつ、手を緩める事はない。
息子と戯れながら、また、窓の外青い空を眺める。
思い浮かべるのは、一日と一緒にいられなかった家族思いの兄の顔。
兄は一賊が滅ぶ前に笑顔のままで逝った。
もしかしたらそれはとても幸せな事だったのかもしれない。
家族を愛するあの兄が、一賊の壊滅を知ったらきっと誰よりも胸を痛めただろう。
彼女は、結局兄と彼以外の家族とは会わなかったけれど。
それでも家族を愛しているのだ。
兄の愛した家族を。
腕の中、ちょっと紫っぽくなった息子をちらりと見て、笑う。
(お兄ちゃん、貴方の家族は、それでもまだ生きていますよ)
空の青さに目を細め、どこか寂しげにけれど優しく。
これからきっと家族は増えていくだろう。
息子だけじゃなく、世界のどこにだって家族はいるだろう。
見つけて家族になっていくだろう。
そしていつかまた一賊は再生する。
蘇る。必ず。
でも、願うなら望むなら。出来るなら、出来たなら。

もっと貴方と居たかった――

それはもう、どうしたって叶わないけれど。


人の命はいつだって儚く、人の絆はいつだって強い。

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