日々・戯言の叫び

感じた事とか色々、表に出せない事を吐き出す独り善がりで嘘つきな日記

タイヤ交換してきました

2011-06-12 13:08:57 | 小ネタ
自転車の。
後輪がですね、つるつるどころか中の素材的なものが見えるくらい磨り減っていたんです。
あ、これは駄目だわと思いました。流石に。
おかげで快適~、いぇ~い。
まぁ三千円近くしたけどね。金も無いのにな!
本日もおうまが。

映画、さや侍を母が観に行きたいなーと言ってる。
監督がどうだからではなくて、面白そうだかららしいです。
まぁ宣伝とか見ると確かにね。
わかりやすそうなストーリーだし。
あ、大日本人がリメイクとか聞いたけど、あれ面白いの?
見てないからわかんないんだけど。
どうなんだろう?

逢魔ヶ刻動物園。
獅子華。呪いの解けた数年後。
オリジナルで娘有り。
外見は皆様のお好きなように。
ところで、これ子供トラウマものだよな…?
タイトルは蒼井華という名前を見てからずっと使ってみたかったもの。
青は自然界で最も美しい色だそうですよ。
いや、関係無いけどね。


へブンリーブルー


彼女は獣に愛されて。
獣は彼女に愛された。


蒼井リオンは父親の顔を知らない。
物心付いた頃から、いやその前から父親らしい存在を知らなかった。
母である華と二人暮しだったけれど、特に寂しいとは思わなかった。
華が働いているのは、広大な敷地面積を誇る自然豊かな動物園――逢麻ヶ刻動物園。
その片隅にある飼育員専用の寮で、リオンは母と暮らしていた。
彼女は父を知らなかったが、別に寂しいなどとは思わなった。
だって愉快な園長椎名を始め、いつも誰かが傍にいて遊び相手には困らなかったし。
年に一度やって来るサーカス団の鈴木の娘トーコにも母がいなかった。
だからそれは普通のことだと思っていた。
そうではないと知ったのは小学校に上がってから。
『普通』はお父さんもお母さんも揃っているのだと知った。
母親しかいない彼女は少しだけ他のお友達と違っているのだと知った。
別にそれで苛められるということは無かったし、周囲も騒ぐわけではなかったけれど。
皆と違う。
それを知って、ちょっとだけ寂しかった。
だってお父さんと遊んだとか、玩具を買ってもらったとか。
そういう話をお友達はよくして。
寂しいというより、羨ましいという気持ちの方が強かったけれど。
「お母さんはサイコンしないの?」
「え~、どこでそんな言葉覚えたの?」
テレビなどで聞きかじった言葉を使っての問いにも、母は笑っているだけで。
リオンの目から見ても華は若かった。
並んで歩けば年の離れた姉妹に間違われたし、お友達のお母さんは本当に『お母さん』な感じだけど華は『お姉さん』な感じだし。
それに椎名を初め、華のことを好きな人は結構いるのに。
そんなに『お父さん』が好きなんだろうか?
今まで父がいないのが当たり前で、だから興味も無かったけれど。
よく考えれば、リオンは父のことを何も知らない。
どんな人だったのか? 死んだのか、生きているのか?
本当に何も知らなくて。
顔を知らず、写真だって見たこと無かった。
だから母を含め周囲の人に聞いてみた。
母曰く「優しくて強い人だったよ」
椎名曰く「うざい!」
伊佐奈曰く「馬鹿な奴」
道乃家曰く「あっつーい坊やだったねぇ~」
志久万曰く「…お前にそっくりだった」
鈴木曰く「う~ん、仲間思いだったよ」
菊地曰く「本当に蒼井さんのことを大切にしていたよ」
聞いて、よくわからなくなった。
少なくとも母のことは嫌っていない。むしろ大好きだったみたいで。
だったらなんでいないんだろう?
死んだとは、皆一言も言ってないし。
首を傾げて、悩んで。
母に聞いてもはぐらかされることを、リオンは学んでいた。
父のことは好きだけど、話題にされるのは避けているらしい。
それがどうしてか、なんて。
まだまだ子供のリオンにはまったくわからなかった。
だけど、母が困るのは嫌だなぁとぼんやり思う。
だから父に関する話題はあまり口にしなくなった。

華はリオンを寝かしつけた後、こっそりと外へ出かけることがある。
それに気付いたのはいつだったか。
初めは気にしなかった。
何せ働いているのは動物園。
動物たちが急な不調を訴えたとか、出産だとか。
そんな不測の事態で夜中に華が出て行くのは良くあることだった。
古株の飼育員である華は、他の飼育員たちから頼りにされていたし。
何より動物たちは華にとても懐いていたから。
だけど。
少しだけ違うのだ。
こっそり出て行く華の、空気が。
何がどう違うのか。リオンにはよくわからない。
ただ、いつもの母とは違うと、それだけを漠然と理解していた。
その夜も母はリオンが眠ったことを確認して、こそりとドアから出て行った。
母の気配が消えてから。
ベッドの中のリオンは目を開けた。
母がどこに行くのか突き止めよう!
それは幼い子供の拙い好奇心。
こっそりと、こっそりと。
リオンは息を殺して気配を消して夜闇に紛れて華の後を尾ける。
ドラマで見た探偵みたいだと、胸をわくわくとさせて。
夜の動物園はまるで別世界。
夜行性の獣が鳴いている。梟の目がきらきらと光っている。
どこかで何かが蠢いている。影が、全てを覆うような。
その中を、華は歩く。
慣れた足取りで。
リオンは自身を奮い立たせてついていく。
華の足が止まったのは猛獣エリア。
動物園の花形と、常に母が言っているライオンの檻。
裏手に回って、きぃきぃと金属音をさせて。
そしてリオンの視界に戻ってきたときには、一人ではなかった。
見事な鬣。どっしりとした体躯。悠々とした佇まいの獅子。
リオンだって飽きるほど見たことがある。
この園で数頭いるライオンの中で、一番立派で一番大きくて一番強いライオンだ。
「シシド君…」
華は愛しそうに頭を撫でて、名を呼んだ。
ライオン――シシドも大人しく撫でられて。
並んで歩き出す。
それはとても自然な流れ。
一人と一匹は広場で足を止めると、シシドはゆったりと横たわる。
華はその身体に寄り添って、やはり優しく獣を撫でた。
それから、立派な鬣に顔を埋めるようにして抱きついて。
「シシド君、ねぇどうしようか?」
請うような、頼りない声にシシドはぐるりと鳴いてまるで問いかけるように小首を傾げた。
「あのね、リオンがねお父さんってどんな人って聞いてきたの。
私、どう答えたら良いのかわからなくて……」
ぐすり。
滲んだ声に、シシドは人間みたいに目を細めて華に額を擦りよせる。
何度も何度も。優しく。慰めるように。
ぐるぐると。甘い声で鳴く。愛を囁くかのように。
そして、ゆっくりと身体を起こして。
ころりと。
華の上へと覆いかぶさった。
「……シシド君」
あえかに微笑みながら抵抗もせず、華はたおやかにシシドに白い指先を伸ばして。
シシドは殊更ゆっくりと華に顔を近づけて。
そこまでで――。
リオンは逃げた。
反射的に足が動いていた。
どこかを目指して全力で走り出していた。
何処に向かっているかわからない。
どうして良いかもわからない。
わかっていることは唯一つ。

アレは、見てはいけない。

走って走って、転んで、走って。
いつの間にか園の外れ。
木々が生い茂るだけの場所。
木の根に足を取られて、転んで、立ち上がれなかった。
色んなものが頭の中を廻るが、明確な言葉にも意味にもならなかった。
「ふぇ、ええ…うあぁぁぁぁぁっ!!」
溢れる感情のまま泣いた。
母のあんな顔を見たことがなかった。
あんな風に動物に接するところなんて見たことなかった。
まるで知らない人になったみたいで怖かった。
シシドだって、いつものシシドではなかった。
いつもは檻の中で退屈そうに眠っているのに!
あんなの違う! 違う違う違う!!
何が悲しいのか自分でもわからないのに、目を塞いで泣き続ける。
「どうしたんじゃ、リオン?」
唐突に、上から降ってきた声。
霞む視界で見上げれば、そこにいたのはトレードマークのマフラーを身につけた椎名。
「え、えんちょ~、あ、あた、あたし――おかあさっうあぁぁん!!」
しゃくりあげて、ろくに言葉を紡げないリオンの小さな身体を抱き上げて。
椎名は優しく背中を叩く。
夜の中、涙で染まった途切れ途切れリオンの話を根気強く聞いてくれた。
全てを聞き終えた後。
「そうか」
ただ一言静かに頷いた。
そしてやさしい、かなしい目でリオンを見詰めて、静かに笑う。
「もう寝ろ、リオン。お子様は寝る時間じゃ」
「えんちょお…」
「お前が大きくなったとき、必ず全部教えてやる。
約束じゃ!」
「……ん」
そう言って小指を絡める椎名に、リオンも僅かに声を漏らして肯定の意を返す。
眠気と涙で朧になったその目に映る椎名は、いつもの嘘のない笑顔。
それに安心して、リオンは静かに眠りに落ちた。

目が覚めたのは、ベッドの中。
何の変哲もない、朝だ。
ぼ~っとしたリオンは周囲を見回して、昨夜の気配は何もなくて。
――夢だったのかな?
寝ぼけ眼でキッチンへと向かえば、やはり母が朝ごはんを作っていた。
「おはよう、リオン。一人で起きられたの? 偉いね!」
「う、うん」
にこにこ。褒められて、リオンもおずおずと笑顔を返した。
いつもと何一つ変わった様子のない華に、やっぱり夢だったのかなと一人考える。
「これテーブルに持って行ってくれる」
「はぁい」
皿を手渡されたリオンが華の隣を横切った瞬間――獣が匂った。


滑稽悲劇に拍手喝采! 君が知らない世界の扉は、ほらすぐ隣に開いてる!!

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