日々・戯言の叫び

感じた事とか色々、表に出せない事を吐き出す独り善がりで嘘つきな日記

ぴくしぶにしょうせつをあげて

2011-06-10 13:10:50 | 小ネタ
お気に入りに入れてくださった方とかぶくましてくださった方とか…。
本当にありがたくて胃が痛いです。ありがとうそしてありがとう。
うん、落ち着いて。
でも調子に乗ってはいけないんだ。チキンが調子に乗るとろくな事にならないって古来からのお約束なんだ。
本日も動物園っす。


逢魔ヶ刻動物園。
パラレルネタか。
メシアっていい響きですね(笑)。

甘えっ子呪われ三匹→華。
兎→華ちゃん。


紅きを潤す


どうすればいいのかなぁ?
眼前に広がる大海原を眺めがら、蒼井華はぼんやりと思った。
逢魔ヶ刻動物園の裏側に広がる未開の地。
その海岸。茂みのおかげで影が出来た一角。
膝の上に椎名の頭を乗せたまま、華は困り顔で笑った。
いつものように掃除をしている最中、いつものように椎名が遊べと纏わり付いてきた。
華もいつもの調子であしらっていたのだが、どういうわけか今日はしつこかった。
その上ウワバミたちが掃除はやっておくから園長の相手をしやってと言ってくる。
不思議に思いながらも頷けば、常以上にテンションの上がった椎名に抱えられ動物園を飛び出してしまった。
散々森の中を走り回って、着いたのがこの海岸。
以前皆で遊んだところ。
今日は二人だけだったが、落ち着きの無い椎名はやはり元気に遊びまくった。
波打ち際を無意味に駆け回り、華を海に放り込み、発見したクラゲやナマコを投げつけて。
けらけらけらけら、楽しそうに笑って。
そんな園長を見るのは華も嫌いではない。
それに華だって年頃の健全な女の子。
遊ぶ事は嫌いではなかったし。
毎日園の掃除に運営に、サーカスと提携してからはそれと関係した仕事。
気付かぬ内に溜まっていたストレスを、存分にはしゃいで発散した。
二人で遊びまわって、現在。
流石に疲れて日陰に腰を下ろした華に、椎名が華麗にダイブ。
しばし華の足を玩具のようにしていたが、そのまま膝枕の体勢で眠ってしまったのだ。
膝に乗った男の、滅多に触れないほわほわした毛並みに指を伸ばし。
小さく笑った。
サーカス団の人たちは団長道乃家を初め皆いい人で、椎名の事を理解してくれて。
少しだが確実に広がった世界に、関わりの増えた世界に嬉しそうだった。
華は学校が始まったからそう長く園に居られなくなってしまったけれど、きっと寂しくないだろう。
これからも椎名の世界は広がってゆくに違いない。
未来を思い、華は風に揺れる長い耳を優しく撫でた。

悪くないな。
ごろごろと額を腿に擦り付けて、椎名は一人ごちる。
最近なんだか面白くなかった。
理由はわからない。
でも面白くないのだ。もやもやというかいらいらというか。
よくわからないが、胸の辺りに何かが溜まって吐き出す事が出来なかった。
獣たちと遊んでも、サーカスの連中を振り回しても、気分は晴れなかった。
むしろどんどん胸にもやもやしたものが溜まっていって。
ふと、華を引っ張り回して一緒に遊べばいいと思い付く。
椎名は、それが酷く名案のように思えてならなくて。
早速実行して、華を抱えたまま無意味に森の中を疾走して最終的に海に辿り付いた。
そうして華と一緒にさんざんに遊び回り、跳ね回り。
見付けた海の生き物たちを変身させて遊ぼうかなど、欠片も考え付かず。
自分と華の二人だけ、という事実になんだかとても心が踊った。
こんなに彼女と遊んだのは久しぶりではないだろうか?
だって学校が始まって、昼間はいないし、園に来ても掃除にサーカス団との打ち合わせ。
その上、時々ではあるが水族館にまで行くのだ!
華は動物園の飼育員であって、優先させるべきは椎名と園の仲間たちであるはずなのに!
考えれば考えるほど腹立たしい。
そのうちに疲れたからと座り込んだ華に、もっと遊べと飛びついた。
彼女の腰に抱きつく格好になって、いつも触れているはずなのになんだか違うとぼんやり思う。
どう違うのかなんてわからないが、だけど悪い気分ではない。
だから彼女の足の上に頭を乗せたまま、面白そうに服やらズボンやら引っ張って。
意外と引き締まっていて、けれどやっぱり柔らかい彼女の足をぺちぺち叩いて。
椎名が何かする度、表情を変える華は本当に面白い。
気が付けば、胸に溜まったもやもやは吹き飛んでいて。
なんだかよくわからないが、今とても気分が良い。
上機嫌な彼に、華は頭上から呆れた視線を落とすが知った事ではない。
機嫌は良いし、風が気持ち良いし、華も傍にいるし。
久方ぶりの、本当に浮ついた気持ち。
空を眺めてあくびを一つ。
なんだか眠たくなってきた。
このまま眠ってしまおうか。
華はそこにいるのだし、今日は良い天気だし、思う存分遊んだし。
うとうと。
もう一度あくびを噛み砕き、瞼を閉じてゆく。
上から華の声が降ってきた気がするけれど、答えるのも億劫だ。
だからそのまま、意識を落とした。
嗚呼、きっと。
夢にだって彼女はいるに違いない。

「園長は今頃華ちゃんと仲良くしてるかしら?」
「あの兎さん、気付いてんのかねー?」
「いやぁ、そこは園長だしなぁ」
「うす。自覚するまでそっとしておくっす」
「なー、なんで椎名のヤツ、最近機嫌悪かったんだ?」
「シシド君、気付いてなかったんですね…」


追いかけ掴まえ引き寄せて。一度その手にしたのなら決して離す事なかれ!!

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