過去の【ブロガー殺人事件】各話は コチラ→→→☆
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『滝さんは、セミナー講師として出向かれるときはいつも車ですか?』
『そうですね、だいたい車ですね』
『大変でしょう?車で移動されて、その後に講師の仕事をして・・・』
『まぁそこは大して苦にならないですね。運転する事自体が好きなんで』
『俳優として、今までどのようなお仕事を?』
『数年前までは、東京の事務所に所属してまして、事務所から【ここに行け、あそこに行け】と
言われるがままでした』
『でも帰広して事務所も辞め、今は自分一人で俳優などの仕事を探しているんです』
『マネージャーとかに仕事を探して貰えばいいのに』
『私にはマネージャーなんて者はいませんよ』
『え?じゃあ、全てお一人で?』
『そうなんですよ。たまにマネージャーが欲しいと思うんですがねぇ』
『俳優業に講師に・・・それを全てお一人で?大変ですね』
『好きでやってる事ですから』
赤賀は、石原と滝のやり取りには一切口を挟まず、ただ滝の表情の変化を見ていた。
過去、これと似たようなパターンがあった。
当時は【容疑者の一人】でしかなかった男と会ったときだ。
ある程度の用件を済ませた後、石原とその容疑者が、捜査には全くといっていいほど関係ない話で盛り上がっていた。
赤賀は、今回同様口を挟まず変化を探っていた。
その時、一瞬ではあるが表情に曇りが出た。
それがキッカケで、その男を逮捕することができた。
今回もその時と同じく、上手くいくとは限らない。
それでも、赤賀は自分のすることに間違いはないと信じて行動した。
赤賀が滝と石原の会話を黙って聞いて20分が過ぎた。
滝は石原が次の話に持っていこうとするのを遮るように
『すいません、もう時間が・・・』と言った。
それまで沈黙を守っていた赤賀が
『あぁ、申し訳ありません。お時間を取らせてしまいましたね』と言った。
滝はまるっきり表情を変えることなく
『とんでもない。ホントはもっと警部さんたちとお話がしたかったんですが・・・』
と言った。
本心なのか、それとも・・・
滝が喫茶店を出た後、赤賀は石原と話し始めた。
『どう思う?』
『私は滝は限りなくシロかと感じましたが・・・』
赤賀は冷めきったコーヒーを一気に飲み込み、石原を見てこう言った。
『車だよ。滝はあの日、なぜ新幹線だったんだ?』
『今日だって同じ福岡でセミナーの仕事なのに、前回のように新幹線じゃなく、
今回は車で移動だ。』
『おそらく、滝の言う【運転が好き】と言うのは間違いないだろう』
『だからこそ、なぜあの日に限って車じゃなく、新幹線移動だったんだ?と思うんだ』
『それに・・・』
『あの時、一瞬・・・ホントにほんの一瞬、滝の表情が曇ったんだ』