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暗殺の森

2019-03-02 07:14:41 | 音楽・映画・アニメ


古い映画ですが、ルキノ・ビスコンティの「家族の肖像」(1974)という映画の中に、(重要な意味をもつシーンなのですが)、一瞬だけ主人公の回想シーンで、彫刻のように美しい女性(彼が幼い日の若き母)として描かれています。その女優は、日本でもかつて高い人気を誇ったドミニク・サンダ(1948年3月11日~)という女優です。「家族の肖像」の主人公はイタリア貴族であったビスコンティ本人がモデルであり、主人公の母を「女神のような女性」とイメージしてのワンシーンだったのでしょう。

彼女は16歳で結婚して2年後に離婚、21歳のときに「やさしい女」(1969)という映画で映画界に現れ、様々な映画に出演し、現在は外国人と再婚してフランスからブエノスアイレスに移住しているようです。ドミニク・サンダの代表作はベルナルド・ベルトルッチ監督の「暗殺の森」(1970)と言われています。

映画の中で彼女が人々の前で踊るシーンは、さながらギリシア神話の女神のようで、見るもの全ての目をくぎ付けにしてしまう圧巻の名場面でした。



この映画は1930年のローマとパリが舞台として描かれており、つまり第一次大戦と第二次大戦の間の、ヨーロッパで、ファシズムと人民戦線(反ファシズム、反帝国主義)の相克の中で、人々がお互いに見張り合っているかのような空気の中で暮らしている様子が描かれています。

クライマックスではタイトルの通り、森の中で、アンナ(ドミニク・サンダ)の夫である反ファシズム側の教授がファシズム側の暗殺者たちに銃で撃たれ、彼女も暗殺者たちに狩の獲物のように追われ、銃弾をあびせられて暗殺されるシーンがあり、ラストでは数年後にその暗殺者である主人公マルチェロ(ジャン・ルイ・トランティニャン)もローマでムッソリーニが倒されたときに自らの立っていた場所が崩れてしまったことで、精神のバランスを失うところで映画が終わっています。

先日、スウェーデンで国民に「戦争に備える」よう各家庭での食料の備蓄を呼びかけ、フランスのマクロン大統領が徴兵制の復活を表明されたそうですが、今のヨーロッパはさながら戦争の足音を感じはじめているかのような空気なのでしょうか。




コメント

暗殺の森は観たことがありませんが、ドミニク・サンダは有名人ですから知っています。
ドミニク・サンダの紹介の方に張ってあった暗殺の森のダンスシーンを観ました。これもタンゴですね。
kamakuraboyさんはタンゴ好きでしょうか。
映画の時代背景や話の内容は、ちょっと残酷な感じを受けますが、常に戦争の影があって、それが現代にも通じるところがあるのですね。
2019/1/11(金) 午後 9:51 泉城


> 泉城さん
「タンゴは18世紀後半にイベリア半島で発祥した舞曲のリズム。19世紀後半南米にこのダンスパターンが輸出され、アルゼンチン・ブエノスアイレスまたはウルグアイ・モンテビデオでダンススポットのために考案された一ジャンルも指す」とありますが、現在ドミニク・サンダはブエノスアイレスで暮らしているそうです。
タンゴは何かエキゾチックな雰囲気で聴けばわくわくしますし、タンゴを踊っている方々を目にすると素敵だと思います。
この映画は反ファシズム映画で、暗殺シーンは個人的な感情よりもイデオロギーを優先に考える非人間的なファシズムの持つ残酷な側面を描きたかったようです。
2019/1/11(金) 午後 10:17 kamakuraboy


ブルースやワルツは何とか踊れてもタンゴは難しいです。パッションも必要です。
反ファシズムとなるとチャップリンの映画にも通じますね。
2019/1/11(金) 午後 10:24 泉城


> 泉城さん
ブルースやワルツを踊ることができるというのは流石ですね。泉城さんは基本的に雅な方ですね。
ベルトルッチ監督の「暗殺の森」もチャップリンの「独裁者」などの映画も、趣は全く異なるものの、反ナチズム、非人間的な全体主義によって個々の人間が踏みつぶされることへ怒りや裏を返せば人間愛があるということでしょうか。
2019/1/11(金) 午後 10:46 kamakuraboy


2018年1月24日ヤフーブログに投稿した記事より


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