美と知

 美術・教育・成長するということを考える
( by HIGASHIURA Tetsuya )

矢内正一先生のこと~新制関西学院中高の教育

2007年02月12日 | 学校・教師考~矢内正一先生
戦後、学制が改革され、関西学院にも新制の『関西学院中学部』が誕生しました(現在に至る)。
その新制中学部の初代部長になられたのが矢内正一先生です。

日野原重明氏(聖路加病院)は日本経済新聞『私の履歴書』の中で、次のように述べておられます。
「忘れられない恩師がある。関西学院高商部を抜群の成績で卒業されたばかりの矢内正一先生で、英語を教えていただいた。時々、顔を赤らめる純情な先生は、生徒のよき友として接せられ、その情熱的な教育に魅せられて私は英語を好きになった。大変な努力家で、出来の良い生徒には一層の努力を期待し、成績の悪い生徒には忍耐を持って細やかな指導をされた。・・・」

矢内先生は
「知・徳・体が輪を描くような人間に育ってほしい。」しっかりと学び知識を蓄える。そして、身体を鍛えて体力を身につけることにより気力を充実させる。そして、その知識と体力・気力を正しい精神を持って生かす。
このことを中学部生に語り続けました。
さらに、英語教師であった矢内先生は「be good, be honest, be brave」と自分の思いを表現され、これは今でも関西学院中学部の教育理念として掲げられています。

「教育とは知識を与えることではなく、生きた人格を通して、生きたインスピレーション(感化)を与えること・・・」
「できないことをできるように努力し、チャレンジしていく精神が大切。」
「艱難は忍耐を生み出し、忍耐は練達を生み出し、練達は希望を生み出す。」
「地の塩、世の光、として、神と世界に仕える者となれ。真摯に生きよ。」
と・・・
「感謝と祈り」を持って苦しいことにも正々堂々と立ち向かう勇気を持て、そして、自分をしっかりと「鍛えよ」と、関西学院中学部の教育実践の根本精神を作り上げられました。



今、矢内正一先生を知らない世代が今、関西学院中学部、高等部にも増えてきました。

近年、「できない子はできるように、できる子はもっとできるように・・・」という能力に応じた教育の正道が、見失われているように感じます。
そして、知・徳・体のバランス教育というあまりにも当たり前なことが、実際の教育実践の場で見失われているようにも感じます。
また、「平等、平等」と言って、男も女も、できる子もできない子も一緒にして考える教育のあり方も、良い点悪い点をしっかりと検証すべきではないでしょうか・・・
関西学院中学部・高等部は近い将来、男子校から、男女共学の学校へ転身していきます。
キリスト教学校というベースで、今の社会に建学の精神をどういう形で教育実践していくのか・・・
子ども達をどう育てたいか、どんな女性を育てたいのか、どんな男性を育てたいのか・・・という根本をしっかりと見据えて、教育のあり方をデザインしていかなければなりません。
今、学校では、「Mastery for Service」という学院の建学の精神の元、大学・高等部・中学部、そして、2009年に開校する初等部、それぞれの教育理念を打ち出そうとしています。
関西学院のよき伝統の文脈に沿った短い言葉・・・
その言葉の持つ意味は大きいものがあります。
素晴らしい教育者であった矢内先生の心を、情熱を、今の時代にも、これからも、ぜひ大切に受け継いでいきたいものです。



『一隅の教育』矢内正一著 創文社1965年

『人間の幸福と人間の教育』矢内正一著 創文社1985年

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1 コメント

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Unknown (おじさん)
2022-04-03 22:01:47
矢内正一先生はチャペルの時 手帳を振りかざし熱弁を振るわれました 矢内正一先生の時だけは流石に全員水を打ったような静かさでした、平成の某年 中学部卒業の中西君のお別れ会が西北の教会で行われた時 牧師さんが 中学生の中西君がこんな素晴らしい先生が居るといつも話してくれた矢内正一先生はさぞ立派な方だろうと想像できたと話しておられました。
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