ダル中毒の科学ごっこ

絞り滓の知性を忘備と供養のために記します

【1分レシピ】二項係数の漸化式 Part 2

2021-06-26 07:00:00 | 定理・公式

 先日の記事では,"乗法公式" を用いて【二項係数の漸化式】を導きました:

 今回は,同じ恒等式を【組合せ】のアイディアに基づいて導いてみたいと思います:

 

 直感的なので個人的にはお気に入りの証明です.

 

 次回は,「二項展開における係数」という本来の【二項係数】の定義に従って,母関数の考え方で別証明を試みたいと思います!

 

注1.【組合せの総数】と【二項係数の関係】

(0) nCk は,「異なるn個のものからk個を選ぶ方法の総数」(k-組合せの総数)を表します.
(1) (1+ X)^n を二項展開した際の X^k の項の係数を「二項係数」と言い,nCkと一致します.
(2) したがって,組合せの総数と二項係数を同一視できます.

 

注2.(再掲)集合の考え方に基づく【組合せ】の定義

(3) S を濃度が n (⋖ ∞) の集合とします(つまり要素が n 個の有限集合とします).
(4) 組合せ論では, S の部分集合のうち濃度が k であるものを「S の k-組合せ」と呼びます.
(5) またS の k-組合せ全体から成る集合を P_k(S) と書くとき,この集合の濃度 |P_k(S)| を nCk と表記します.


【1分レシピ】二項係数の漸化式 Part 1

2021-06-23 07:15:00 | 定理・公式

 おはようございます!

 昨日は【二項係数の漸化式】の証明に挑戦しました.3通りの方法で行ってみましたが,今朝はそのうちの1つをシェアさせていただきたいと思います.

 

 さて,ここで「二項係数の漸化式」と呼んでいるのは,次の恒等式のことです:

 nCkという表記は「異なるn個のものからk個を選ぶ方法の総数」を表します(☞).nCk は, (1 + x)^n を二項展開したときの x^k の項の係数(二項係数)と一致するので同一視できます.

 

 今回は次の "乗法公式” を用いて証明しましょう:

 

 証明は次の通りとなります:

 

 実は電車にガタゴト揺られながら証明していたのですが,夢中になりすぎていたあまり乗り過ごし,昨日は目的地までの終電を逃してしまいました(苦笑)

 皆さま良い一日を.

 

注.S を濃度が n (< ∞) の集合とします.組合せ論では, S の部分集合のうち濃度が k であるものを「S の k-組合せ」と呼びます.S の k-組合せ全体から成る集合を P_k(S) (⊂ 冪集合 P(S)) と書くとき,この集合の濃度 |P_k(S)| を nCk と表記します.


【1分レシピ】 解の公式

2021-06-14 12:00:00 | 定理・公式

 「解の公式」と呼ばれるものには色々ありますが,その中でも多くの方にとって最初に(そしてひょっとすると最後に?)出逢うのが【2次方程式の解の公式】なのではないかと思います.

 

 一般に x の2次方程式は,定数 a (≠ 0), b, c を用いて次のように表すことができます:

 

このような方程式を解きたいとき,解の公式はとても頼りになります(☞注1):

 

色々な方法で証明することができますが,今回は【平方完成】によって導いてみました:

 

最初に 4a を掛け算しているのは,後の式変形で a^2 の根号(ルート)を外すというステップが現れるのをあらかじめ防ぐためです.つまり厄介な議論を回避するのが主な目的です(☞注2).

 

 1分間で間に合ったようです.

 3次や4次の方程式の解の公式を果たして1分間で証明することは可能なのでしょうか...? 僕では公式を書くだけでも1分で足りないような気がします(笑)

 

 

注1.「方程式を解く」というのは要するに,「このような関係を満たす未知数 x は何でしょう?」というなぞなぞに答えることです.

注2.このトリックは,昔どこかで聞いて知ったものだったような気もしますが,よく思い出せません.高校生になって実定数の2次方程式について解の公式を導こうとしたとき,場合分けが要ることに気づきました.中学生のときの自分が納得していた導出には穴があったのだと知って愕然としました.また複素定数だと一体どうしたらよいのだろうと震えたことを覚えています(笑)
 もし文献をご存知の方がいらっしゃいましたら,教えていただけると嬉しいです.


【1分レシピ】 タンジェントの加法定理

2021-06-13 08:00:00 | 定理・公式

 先の記事において【タンジェント(tan)の加法定理】を用いましたので,あわせて証明を紹介します.

 

 今回は,サイン(sin)およびコサイン(cos)の加法定理は既に知っているものとします(※こちらも面白いので別の記事にて改めて証明やその周辺を紹介したい所存です).

 

 次のようにして,素朴に導くことができます:

 

【余談】

 三角関数には複数の定義の仕方があり,それぞれで定義域が異なります.しかし,sin(・) と cos(・) の加法定理を前提として用いれば,特に定義域を気にすることなく tan(・) の加法定理を導出できます.その点で上記の証明の方針は優れているように思います.

 一方,定義域を制限して (0, π/2) とすれば(i.e. 直角三角形を用いた定義),幾何的でもっと直感に訴えかけるような証明ができそうな気がします🤔

 もし面白い証明方法をご存知の方がいらっしゃいましたら,ご教示いただけると嬉しいです.

 


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【1分レシピ】 底の変換公式

2021-06-11 20:00:00 | 定理・公式

 公式を覚えるのが苦手です.

 いまは思い出せなくても公式集やインターネットなどでさっと調べてしまえば問題ないかと開き直ってしまっています.しかし大学入試の勉強をしているときは,そういうわけにもいきませんでした.

 

 語呂で覚えるのも楽しいのでよく試みていましたが,本質的ではないですし,いざというときに忘れてしまうことももちろんあります.そのため,試験中に公式を脳内ですばやく導出できるように,当時は寝床で練習したりしていました.

 

 最近,ふと中学や高校で習った公式をすぐに証明できるだろうかと不安になったので,ときどき挑戦してみています.

 次はなんとか思い出せた例です(※動画は清書しなおしたものです).

 

■ 対数の【底の変換公式】:

 


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