アメリカ:闇の支配構造と略奪戦争

社会構造を分析しています。

イラクの『新石油法』の背後で蠢く私権闘争

2012年11月02日 | 記事
イラクの石油をめぐり、米国内部とイラク内部そして中東近隣諸国間でドロドロとした私権闘争が姿が現しつつつある記事を見つけたので紹介します。

益岡賢のページ 『「黒い金」の国際争奪戦:石油と帝国』より引用http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/
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ブッシュ政権の石油屋たちは、史上最大の詐欺行為の一つ----イラク油田の大盗掘----を進めようとしている

イラク新政府の内閣は、自分たちを権力の座につけてくれた占領者である米国の圧力を受け、新たな石油法を採択した。これにより、イラクの国営石油システムは解体され、これまでに類例のないほど自由に、西洋の巨大石油企業はイラクの膨大な石油資源にアクセスする権利を手にすることになる。

石油企業は、中東のどこでもこれまで見られなかったほどの超巨大収入を保証された。イラクの油田のうち3分の2か、あるいはそれ以上からくみ出される石油の利益を、今後20年から35年にわたって懐にできるのである。その間、イラク人は、世界中でもっとも需要の多い資源を世界で三番目に多く有すると推定される国に暮らしながら、戦争がもたらした貧困と破壊に堪え忍ぶことを余儀なくされる。
(中略)
この法律は、米帝国にとって石油を争奪することがいかに重要であるかを----ジョージ・ブッシュとその政権がどんなに否定し、イラクを攻撃したのは「民主主義」を広め世界をテロの脅威から安全なものにするためだと述べたとしても----あからさまに示している。
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一方で、
田中宇の国際ニュース解説『イラク石油利権をめぐる策動』よりhttp://tanakanews.com/070417iraq.htm
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 だが、この石油新法をめぐる話を詳細に見ていくと、新法によってイラクの石油開発が進む可能性は低い。むしろ、新法は利権分配の方法について曖昧な点が多いので、逆にイラク国内のクルド人、シーア派などの間の石油利権をめぐる争奪戦を激化させ、イラクの政情の不安定化に貢献する恐れの方が大きい。
(中略)
▼石油利権を潰すイラク3分割
 イラクの石油新法は昨夏、ブッシュ政権によって提案されたが、そこには最初から「イラク3分割」を加速させる意図が見え隠れしていた。3分割とは、イラクをクルド、スンニ、シーアの3地域に分割する案である。
(中略)
 イラクの3大勢力がそれぞれ油田を持ち、それぞれが勝手に自活して、イラクという統一国家は消滅する、というのが3分割案で、これはイスラエルが以前から強力に推進し、ブッシュ政権はイスラエルからの圧力を受け、3分割を加速させる石油新法を出してきた。
(中略)
 ここで重要なのは、イスラエルがイラクの3分割を望むのは、イラクを混乱させ、イスラエルと敵対できないような弱い状態に置くためだという点である。分割後の3つの小国家が安定して石油を産出することは、イスラエルは望んでいない。豊かな石油収入があれば、小国家でも武器を買ってイスラエルを攻撃できる。3分割案は、石油をエサに、イラクのスンニ・シーア・クルドを分裂させ、相互に内戦させ、石油を出せない貧しい状態を永続させることが目的である。
(中略)
▼イラク人を反米で結束させる石油新法
 こうして見ると、石油新法は、イラク人を反米の方向に結束させていることが分かる。
(中略)
 これらの動きの共通した根本は、ブッシュ政権が反米派に対する攻撃をやりすぎることによって、逆に反米派に対する地元民の支持を強化しているということである。私は、これはチェイニーら「隠れ多極主義者」による故意の失策、戦略的自滅策であると考えている。
そう考えると、イスラエルにとってイラク3分割の実現のはずだったイラクの石油新法は、イスラエル支持者のふりをした隠れ多極主義者によって乗っ取られて「やりすぎ」作戦の一つにされてしまい、意図的にイラクを反米反イスラエルの方向に結束させる道具として使われているのではないかと思えてくる。
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米国のイラク侵略行為は、表向きは民主主義、テロに対する正義の戦いとしながらも、背後では米国内部・イラク内部・近隣国間で、石油を道具にして醜い私権闘争が複雑に絡み合っているようだ。

まさに『羊頭狗肉』の詐欺と駆け引きのオンパレードの醜い世界である。


麻丘東出