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アラコー(around後期高齢者)の春秋

みっちゃん(昭和をともに生きた女たち)へのこひぶみ

「おみいさん」と言う食べ物

2012年12月26日 | 衣食住
みっちゃん
徳島の郷土料理、料理とはいえないかも知れないけど、「おみいさん」と呼ばれる食べ物があるのをご存じですか?正式には「味噌入れ」ともいわれます。材料も作り方も至ってシンプル、大根葉(おねばと呼ばれる間引き菜がベスト)とサトイモを柔らかく煮てご飯を入れて、要するに味噌ぞうすいと言えば分かりますか?ぞうすいともおじやとも違うのは、水けがなくなるまで煮込んで、練った壁のような食べ物です。これを私たちは「おみいさん」と言い慣れています。その昔、10月の刈り入れ時は間引き大根もサトイモも最盛期であることから農家は「おみいさん」をたっぷり作っておいて、昼食にもおやつにも食べたと聞いています。

今年もいよいよ押し詰まって農繁期ならぬ家事繁忙期、我が家の昼食はこの「おみいさん」と焼き芋にしました。まるで終戦記念日メニューですが、食べながら夫と話したのは、母親から出汁の煮干しを食べるように常に強制されたことでした。強制と言えば悪く聞こえますが、私たちの少年少女期というのは最悪の食糧事情の下、子供たちを骨のしっかりした一人前の大人に育てたいという母親の切なる願いがこもっていたのでしょう、出汁が出てしまって口触りの悪い食べ物とも思えない食べ物が、今にして思えば母の優しさと切なさを思い出す食べ物になっています(もっとも今は食べていませんが)。あの頃は、おみいさんにも味噌汁にも煮物にもだしの煮干しは取り出さず、そのまま残っていて食べさせられました。「いやだったなあ!」と夫は長嘆息しますが、そのお陰かどうか骨折をすることもなく、母親よりも長生きをしています。

ところで、最近の大根の種まきは種を2粒ずつ、一定間隔にくっつけられたテープを畑にほそ長く広げて行くんですってね。なぜ2粒かというと、大根も競争させないと育たないそうです。したがってむかしのように間引き大根が大量に出るわけではなく、産直市で売られている間引き大根は専用に作られたものだということです。知ってました?

徳島でも「おみいさん」を知らない若者がほとんどになりました。大根葉もごま油で炒めたり全く違った食べ方をするようになっています。でも私はときどき(1年に1・2回)「おみいさん」を作ります。夫の作ったあまりできのよくない大根の葉を捨てるのに忍びないのと、濃い出汁でじっくり煮込むととても美味しくなるからです。いつか40歳代で亡くなった母親に天国で会ったとき、73歳(80歳?90歳?百歳?)の娘はなんと言ったらいいでしょうね。「おかあちゃん、やっぱりあの煮干しは不味かったよ~?」