
二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、
ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二匹つれて、
だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを歩いていました。
(中略)
ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。

ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ塗(ぬ)りの扉(と)がありました。
「どうも変な家だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
そして二人はその扉をあけようとしますと、
上に黄いろな字でこう書いてありました。
「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」

また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、
その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。
扉には赤い字で、
「お客さまがた、ここで髪をきちんとして、
それからはきものの泥を落してください。」
と書いてありました。

奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、
銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、
「いや、わざわざご苦労です。
大へん結構にできました。
さあさあおなかにおはいりください。」
と書いてありました。おまけにかぎ穴からは
きょろきょろ二つの青い眼玉がこっちをのぞいています。
「うわあ。」がたがたがたがた。
「うわあ。」がたがたがたがた。

二人はあんまり心を痛めたために、
顔がまるでくしゃくしゃの紙屑のようになり、
お互にその顔を見合せ、ぶるぶるふるえ、声もなく泣きました。
さて、この後はどうなったでしょう?
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