◎胡麻Sesame ごま
9~10月頃実がなるゴマの種子がはじけ出しそうになった頃刈り取り乾燥させ選別し得られています。 荒れ地でも育ち栽培ができ、「日照りにごまの不作なし」という言葉もあり、少々の干ばつでも収量が望める生命力のある作物です。
白色種の成育期間は短く黒色種になるにつれ成育期間が長く成熟期が遅いようです。近年では日本でも栽培していますが数量は非常に少なくなっています。晩春に植付けが始まり夏の盛りに7~8月にかけ淡紫色のリンドウに似た花を咲かせます。花の色は種の色との関係があり、白ゴマでは白い花、黒ゴマには淡いピンクの花が咲くことが多いようです。莢の実は縦にやや長い形で、秋になって熟してくると自然に縦に裂け、はじけた莢の中にある種子を食用としています。
原産地は、BC3500年頃インド周辺といい古代より世界中で利用していました。古代エジプトでは、ゴマは灯(あか)り油、香料や薬として大切に使われて来ました。 世界最古の医薬書「神農本草経:推定紀元25~220年」は黒ごまの記載が見られます。 日本では、紀元前1200年ごろの縄文時代の遺跡からゴマ種子の出土事例があります。大陸を経て伝わったとみられ奈良時代には既に栽培しておりナタネより古い歴史があるといわれています。
和名ゴマの胡麻は、中国名で紀元前1世紀ころの中国の西域に位置する胡と呼んでいた国から渡来した麻(麻の種子に似ていた)であるとして、これを日本語では音読みしたと言います。 日本に奈良時代には仏教の伝来とともにゴマの搾油技術が伝わり畑で栽培し、ゴマを圧搾しゴマ油を作り食用油として調理したり、燈油として用いていました。平安時代(794年~1192年)の延喜式(907年)では、ゴマの菓子や薬用に、油を揚げ物などの食用・灯火に利用についての記載が見られます。
昔の日本ではとても高価な取引で庶民の口にはなかなか入らず、貴族・大名・寺院の裕福な人達の食べものという時代が長く続きました。その後、世の中が安定してきた江戸時代には一般の庶民も口にできるようになり精進料理や懐石料理の基本も作られています。
ゴマ科の一年草、高さ70cm~1mに成長、近年99.9%と多くは東南アジア、アフリカ、中国から輸入です。 胡麻にかかわる語源・由来があります。 ◇『開け胡麻』には、諸説あり大事なものが早く出てきてほしいとの願いが込められています。重要な食材であることから、ゴマが熟してさやがはじけるさまを、扉が開くことにたとえた説等があります。
◇『ごまかす』は、 江戸で文化文政期(1804~1830)に流行した菓子(胡麻胴乱ごまどうらん)で小麦粉にゴマをまぜて水でこね、焼き膨らませ中が胴乱のように空洞です。外見は立派ですが中身がともなわないものをゴマ菓子と呼ぶようになり、それが転じ「ゴマかす」というようになったといわれます。 また、料理の味がいまひとつの時、ゴマを加えると味がよくなる、つまりはゴマを加えて風味よくゴマ化すことから、ゴマかすになったともいわれています。
◇『ゴマをする』は、寺でゴマをすることが修行のひとつであり、坊主が一所懸命ゴマをすると、和尚の機嫌がよくなり、そこから転じて、ゴマすりという言葉ができたともいわれています。 すり鉢でゴマをすっていると、ゴマが散ってベタつき、この様子が、誰にでもいい顔をして機嫌をとり、自分のことだけを考える様子に似ていることより、ゴマをするという表現が生まれたとともいわれます。
ゴマは鞘から取り出し、洗って乾燥させた状態(洗いごま)で食用となりますが、生のままでは種皮が固く香りも良くないので、通常は炒ったもの(炒りごま)を食用としています。また、剥く、切る(切りごま)、指先でひねり潰す(ひねりごま)、すり鉢で擂り潰す(擂りごま)などして、料理の材料や薬味として用いています。ゴマ塩としてふりかけに用いられることが多くあります。
味の特徴としては、白ごまはほのかな甘みがあり、黒ごまは香りが強く、コクがあるとし、黄ごま(金ごま、茶ごまとも)は香りがよく、味が濃厚といいます。 煎ったり、すりゴマにすると外皮、細胞を破壊して吸収率が高まり、香りが引き立ちます。ごま塩、和え物、胡麻豆腐、製菓などに使われます。種子を圧搾して50%内外のごま油を得ることができます。
乾・100g中でエネルギー586kcal、水分4.7g、タンパク質19.8g、脂質53.8g(飽和脂肪酸7.80g・一価不飽和脂肪酸19.63g・多価不飽和脂肪酸23.26g)、炭水化物16.5g、灰分5.2g、ナトリウム2mg、カリウム400mg、カルシウム1200mg、マグネシウム370mg、リン540mg、鉄9.6mg、亜鉛5.5mg、銅1.66mg、マンガン2.24mg、ビタミンA効力:3μg、ビタミンD:(0)μg、ビタミンE:2.4mg、ビタミンK:7μg、ビタミンB1:0.95mg、ビタミンB2:0.25mg、ナイアシン5.1mg、ビタミンB6:0.60mg、ビタミンB12:(0)μg、葉酸93μg、パントテン酸0.56mg、ビタミンC:Trmg 食物繊維(解毒、抗がん、整腸作用)10.8gを含みます。
胡麻のたん白質は主にグロブリンGlobulin(グルタミン酸、アスパラギン酸に富む)であり、特に黒ゴマにポリフェノール(血行をよくする)の一種のアントシアニン系色素を含みます。ビタミン、ミネラルを自然に補うことができます。 15g/1日程度蜂蜜と混ぜペースト状でトーストに塗ったり、ヨーグルトにつけて利用するとより効果的です。
昔から滋養強壮、催乳、便秘によいとし利用してきました。カルシウムを多く含み、さらにビタミンE2.4mg/100g中、1%程度含むゴマリグナン(セサミン・セサモリン・セサミノール・セサモールなど)の抗酸化作用により、血清コレステロール値を上昇させず、老化予防、保湿、肝機能強化作用を持ち生活習慣病予防に役立ちます。
ゴマリグナンとは
ゴマリグナンSesame lignanごまりぐなん
ごまに含む物質、ポリフェノールで活性酸素除去、抗酸化、肝機能強化、アルコール分解作用があります。大豆や乳製品に含まれるイソフラボンと同じく、女性ホルモン(エストロゲン)と似たような働きをします。
ゴマ100g中のゴマリグナンの含有量はおよそ1%、セサミンSesamin:490mg、セサモリンSesamolin:300mg、セサモールSesamole:4mg、・セサミノールSesaminol:80mg、その他のゴマリグナン1mgでセサモリノールSesamolinol、ピノレジノールPinoresinolの6種の総称で胡麻油に多く含みます。
セサミンが半量以上を占めセサモールとセサミノールは特にごま油の中に多く含み煎ることによってセサモリンがセサモールに変化しより抗酸化力がアップし、擦ることにより消化吸収がよくなることが確かめられています。
さらにゴマの香ばしい香りの主成分であるピラジン(バリン・ロイシン・グリシン)が、アミノ酸より脱炭酸作用により生成するアミンであり、血栓を作りにくくし血液凝固を防ぎ血行をよくし、肝機能を強化します。
ゴマペプチド[LVY:ロイシン(L)-バリン(V)-チロシン(Y)の3つのアミノ酸]を0.16mg/190cc含む飲料が血圧が高めの方に適すとしした健康飲料として市販しています。レニンーアンジオテンシン系のアンジオテンシンIからアンジオテンシンIIに変換するアンジオテンシンI変換酵素(ACE)を阻害する作用を有し、血圧降下作用を示します。 葉が青汁利用も行われています。
日本食品分析センター調べゴマ科のゴマ若葉粉末100g中で水分8.0g、カリウム4900mg、カルシウム1360mg、マグネシウム477mg、鉄16.6mg、ビタミンA効力:187μg、ビタミンE:4.2mg、ビタミンB2:1.40mg、葉酸760μg、ポリフェノール1300mg、食物繊維(解毒、抗がん、整腸作用)を含みます。
ミネラル、ビタミン、食物繊維のほか、抗酸化作用のあるフェニルエタノイド配糖体 Phenylethanoid Glycosides 、アクテオシドActeoside(若葉乾燥粉末中に1~.2%)が含まれるとしています。
イネ科の大麦若葉の粉末概算で100g中でエネルギー210kcal、水分1.0g~5.4g、タンパク質16.0g、脂質4.5g、炭水化物20.5g、灰分8.7g、ナトリウム569mg、カリウム2,100mg、カルシウム300mg、マグネシウム150mg、鉄20.5mg、亜鉛2.5mg、銅0.69mg、クロロフィル350mg、βーカロテン3.500μg、ビタミンA効力550μg、葉酸150μg、食物繊維46.5g、、ポリフェノール600mg程度を含むようです。
アブラナ科のケール生で100g中で(エネルギー28kcal、水分90.2g、タンパク質2.1g、脂質0.4g、炭水化物5.6g、灰分1.5g、食物繊維3.7g、カルシュウム220mg、マグネシウム44mg、ビタミンA480μg、ビタミンB1:0.06mg、ビタミンB2:0.15mg、ビタミンC81mg)、、ポリフェノール86mg程度を含みます。生100gは粉末で9g程度の換算とするとよいでしょう。
古くから用いられてきた 胡麻油Sesame oil ごまあぶらは、胡麻の種子を香味を生じさせることから高温で煎り圧搾し白色(含油量55%)、褐色、黒色(50%、収量が多い)が得られ、精製も不純物を軽く除く程度としています。比較的値段が高いことから大豆油と混合し調整油としていることが多いようです。
マイナス6度で固まり、特有の香味(こうみ)があり、貯蔵に耐え、和え物、炒め物、天ぷらに用いられます。
ごま油100g中でエネルギー884kcal、水分0g、タンパク質0g、脂質100g(飽和脂肪酸14.2g・一価不飽和脂肪酸39.7g・多価不飽和脂肪酸41.7g)、炭水化物0g、灰分0g、ビタミンA効力:0μg、ビタミンD:(0)μg、ビタミンE効力:2.8mg、ビタミンK:13.6μg、ビタミンB1:0mg、ビタミンB2:0mg、ナイアシン0mg、ビタミンB6:0mg、ビタミンB12:(0)μg、葉酸0μg、パントテン酸0mg、ビタミンC:0mg 食物繊維0gを含みます。
菜種油100g中エネルギー921kcal、水分0g、タンパク質0g、脂質100g(飽和脂肪酸6.10g・一価不飽和脂肪酸57.40gオレイン酸55.2g[n-9]・多価不飽和脂肪酸30.70g:・リノール酸20.5g[n-6]・αリノレン酸10.2g[n-3])、ビタミンE効力:16.9mg、を含みます。
胡麻油100g中の脂肪酸組成は、脂肪酸総量93.83g(飽和脂肪酸14.2g・一価不飽和脂肪酸39.7g・多価不飽和脂肪酸41.7g)、一価飽和脂肪酸であるオレイン酸39.3で、リノール酸(必須脂肪酸)41.0%を主に含み、注目のゴマリグナン(抗酸化作用)を微量(1%)含みセサミノールが多含みます。 ごま油は、少し料理に混ぜたりごま油で炒めると香りがとてもよく、香ばしい香りは料理の味を引き立てます。
ゴマ科Pedaliaceae ごまか
植物界Plantae、被子植物門Angiosperm 、真正双子葉植物類Eudicots、シソ目Lamiales、ゴマ科Pedaliaceaeとして分類する。熱帯地方を中心に大部分が一年草ないし多年草の草本として分布します。 最も胡麻が有名で、種子と、それを搾ったごま油は、世界的にも重要な食材とし存在しています。
APG分類の狭義のゴマ科はゴマ属など12属50種ほどで、クロンキスト体系の分類ではさらにツノゴマ科(5属17種ほど)もゴマ科に含めていました。 ゴマ科の花は合弁花で、花びらは筒状、先は5裂しています。果実は胡麻のように多数の種子を含むさく果のほか、堅果もあります。
ツノゴマ科はとげを持つもの(ツノゴマ、ヒシモドキなど)もあり葉や茎の表面の毛から粘液を分泌し、中にはこれで虫を捕らえる(イビセラ属Ibicella属の食虫植物もあるようです。
今日でも高級感のごま油は、風味に付け程度なのに、勿体(もったい)なくも古くは燈油に、庶民には、手が届かないのはごもっつともです。抗酸化成分の多いすりごま、ごま油を有効に利用しましょう。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。
[初版:2020.10.3]
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