安定していた血圧が、朝から高かった。
心がざわついていた。
近づくと、やっぱり怖い。
眼の手術。
さっき終わった。
左目が眼帯でふさがれ距離感がつかめない。
タブレットのキーも打ち間違える。
手術前の控え室。
数人が順番を待っている。
5種類の目薬を3回に分けてさす。
その後、痛み止めの目薬を3度。
そして手術室へ。
白内障の手術は痛みもない。
目が眩むような光のシャワー。
呆気なく終わった。
痛いのはその後。
眼の奥、硝子体の手術。
麻酔が痛い。
我慢できなくはないが、痛い。
眼球に3つ穴を開ける。
その映像を想像するだけで痛い。
なんとなく針が挿入されるのを感じる。
重い痛み。
そこからは痛みはない。
万華鏡のような世界が繰り広げられる。
黄斑前膜の手術は膜を剥がすのが目的。
マジックハンドのようなものが膜を剥がそうとするのがはっきりと見える。
これは凄い。
時々、何か液状のものが注入される。
絵の具を水に流したように渦を作っている。
きれいだ。
マジックハンドが膜を掴んだ。
剥がされるのが見えるし、感じる。
細かくちぎれるから、何度も繰り返す。
剥がれた膜は硝子体の中でふわふわ遊弋している。
凄い。
「きれいに剥がれましたよ」
先生の声がなんと美しく響いたことか。
これで終わったと思ったら、最後に少々痛かった。
眼帯で眼鏡がかけられないから、右目で見える世界もぼやけている。
まずはひと安心。
高いと思った壁も、超えてみると大したことはないという真実を、また一つ経験した。