りんごの日記

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宝塚歌劇宙組公演 「逆転裁判2」観劇

2009-09-06 11:10:14 | 観劇
 地下鉄赤坂駅を降りて、ACTシアターを見上げると、らんとむくんの巨大な看板が嫌でも目に入る。客席は本公演より男性客が多い。ゲームが原作ということが影響しているのだろう。さて私はこの作品についてまったく知らない。ゲームをしたこともないし、先の公演も見ていない。だから人物関係やキャラの個性など何の予備知識もないまま劇場に向かった。

 予想はしていたが、軽いノリの作品。緞帳代わりに「逆転裁判2」と大きく書かれたロゴが幕に。オープニングは舞台中央にらんとむくんが例のスーツ姿で後姿を見せて立ち、くるりと振り返ってテーマソングを歌うと場内から拍手が沸き起こる。パート1を見ている人が多いのだろう。らんとむくんのファンなら、自分のご贔屓にこうした当たり役の主演作があることは非常に嬉しいはず。今回けみさん・らんとむくん・ともちん・美風さん・風莉さん以外は宙組の若手を揃え、どの生徒も生き生きと演じていた。この作品は裁判劇なので、法廷場面で滑舌が悪いと興ざめするが、出演した生徒さんは皆ちゃんと通る声で発声できていた。特に裁判長役の風莉さんがいい。彼女は先の公演で、タニちゃん&うめちゃんのデュエット・ダンス場面でカゲソロを歌ったが、その時の声が素晴らしかった。その声を生かしての今回の配役。こういう実力ある脇役さんを、歌劇団は大事にしてほしい。
 らんとむくんは、いつトップになってもいいほど落ち着きがあり、見せ方を心得ている。笑わせる場面と締める場面の緩急のつけ方も上手い。よい作品に巡り会えて本人が一番楽しく、そして生き生きしている様子が伺える。
 ともちんのエッジワース。前作を見ていないので、ななっぺがどう演じたか知らないが、ともちんが真面目にキザればキザるほど笑いを誘う。もちろんその点は本人も計算済み。エッジワースがどう話に絡んでくるか、第1部では予想がつかなかった。フィナーレのダンスはさすがにかっこいい。ともちんは悪役も3枚目もこなす貴重な別格男役。この人も大事にしてほしい。
 今回、3人の若手娘役がそれぞれ個性的なキャラで頑張っていた。天才検事フランジスカ・カルマを演じた藤咲えりさん。法廷場面では早口の台詞が多く、テンポを外すと見ていられなくなる難しい役どころを大健闘していた。ミニのタイトスカートを履き、鞭を持ってビシビシ打ちつけるのは元のゲームのキャラだろうか?
 密かに期待していたのは純矢ちとせさん。「殉情」で演じたちょっと底意地の悪い芸者役が上手く、今回はヒロインに抜擢されていたので楽しみだった。もちろん純矢さんは清純なヒロイン・ルーチェをそつなく演じていた。でも個人的にはアクの強い芸者役のほうが面白かった。正統派ヒロインは、誰が演じてもそこそこ務まるが、個性的な役は生徒さんの努力やその役への熱い思い入れが感じられる。とは言え純矢さんはこれから期待の若手であることに違いない。
 ニックの秘書マヤちゃんはすみれ乃さん。憎めない天然でお笑い担当。彼女も楽しんで演じてる様子が伺えた。
 美味しい役が刑事ディックの春風さん。語尾に「っす」を付け、何とも間の抜けた、それでいて憎めない刑事がおかしい。しかしフィナーレのダンスをびしっと決めるところがさすが。達者な人だ。
 大抜擢はルーチェの恋人ローランドの七海さん。小顔でちょっとタニちゃん似。第1部はさほど印象に残らなかったが、第2部には大きな見せ場があり。ローランドはメインキャストの中でもルーチェ、ローズと共にシリアスな役。ただ映像で映し出されるシスターの服を着た後姿は少しお茶目だったがーー。
 事件の被告となるルーチェの母ローズは光さん。今回は出演者が全体的に若いので、専科の光さんが加わることで落ち着きが見られた。教え子のニックを「ニック君」と呼んでいたが、言いづらそう。単に「ニック」あるいは「ライト君」で良かったのでは?
 バイトのはしごだらけのロッタは美風さん。この方も宙組の貴重な脇役の一人。大阪弁を駆使して噛まずに小気味よくポンポン喋る。カーテンコールでは、隣のともちんや客席に向けて盛んにシャッターを切っていた。

 その他役名はないけれど、若手の生徒さんたちが、ある時は警官またある時は通行人や公園で語らうカップル、裁判の傍聴人、昔のニック&レオナに扮してお芝居を盛り立てた。

 終演後は初日挨拶あり。らんとむくんから「前作が終わる頃、パート2の上演が決まって本当にうれしかった。今回は前回のメンバーに、新たなメンバーも加わり、さらにパワーアップした舞台をご覧いただけたら。」とスピーチ。その後2度カーテンコール。最初のカーテンコールではともちんがお決まりのポーズを見せたあと、客席全体を巻き込んで「異議あり!」のポーズを。2度目のカーテンコールではらんとむくんが「皆さん、1回では満足されないんですね。ではもう一度ーーー。」で再度決めポーズをして幕となった。

 ゲームを元にした「逆転裁判」、テレビの人気番組「相棒」の舞台化と、宝塚は最近は意外なところに目をつけ、新たなファンの掘り起こしを狙っている。それはそれで面白い。本公演でライトを浴びる機会の少ない生徒さんたちの励みになるのならこうした公演はありがたいが、その結果生徒さんたちのスケジュールが過密になり、健康面や精神面で疲れを引きずらなければいいがーーー。


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