さて、前回に引き続き発達障害のリハビリテーションについてですが、今回は
そのアプローチではどのような治療が行われるのか。いよいよリハビリテーションの出番です。
発達障害に対するリハビリテーション治療としては、感覚統合療法、social skill training、
認知行動療法などが行われています。
感覚統合療法は「感覚遊び」を通じて感覚情報処理能力を発達させ、脳の発達を促すことが出来ます。
発達障害患者では感覚情報を処理する能力が制限されており、その結果として感覚刺激が正しく脳に
届かず、脳の発育が制限されている、という説があり、その説に基づいた治療法です。
Social skill trainingはコミュニケーション能力や相手の気持ちを読み取る方法など社会的に必要とされる
能力を訓練します。実際には複数の患者でさまざまな場面を設定したうえでのロールプレイングを行い、
それに対してフィードバックをしていきます。
認知行動療法は認知(思考)と感情に働きかけることで行動を修正しようとする治療法です。
つまりポジティブな考え方を身につけさせて、感情のコントロール方法を学ばせることで行動
を具体的に改善してきます。
あとはリハビリテーションとは別ですが、薬物治療も治療の選択肢の一つです。
最近はさまざまな薬が発売されるようになり、また自閉症スペクトラム障害に対しては
オキシトシンというホルモンの投与が有効だ、との研究結果もでているようです。まさに
日進月歩の領域でもあります
もちろん、これらのリハビリテーションプログラムや薬剤の選択は画一的なものではなく、
患者の症状や社会背景なども考慮しながら個別性の高いプログラムを組んでいくことになります。
周囲の人達への指導など様々な環境設定も必要です。
しかし、実際に臨床の場面となると、発達障害の治療としてリハビリテーションスタッフが
介入している場面は多くないように思います。
例えば作業療法士ですと、そもそも発達障害児に携わる作業療法士の数は少なく、施設にいたとしても
一人だけ、という職場が多いそうです。
ただ、プログラムを立てる際に、作業療法、言語聴覚療法などを適切に取り入れられれば、
子供が主体的に取り組み、適切に運動などを遂行していくプロセスを踏める機会が多くなる
のではないか、と考えています。
調べた中では、作業療法士が児童の就学支援の場において、
コンサルテーション(異なる専門性を持つ複数の者が援助対象である児の問題について検討し、
援助の在り方について話し合うプロセス)を行い、問題行動の軽減や文字の読み書き習得に
つながった事例も報告されていました。
また、バイリンガルの子に関する最近の研究で、「バイリンガル環境における2言語以上の言語習得に
混乱を起こすことはない」という研究結果もあるようです。これはつまり、バイリンガル過程においても
言語障害、遅延などがあれば、様子を見ずに迅速に言語・コミュニケーションアセスメントを受けることが
大事!ということであり、作業療法士、言語聴覚士をはじめとしたリハビリテーションスタッフが活躍できる
場面がまだまだありそうに思えてなりません。
現在、発達障害という言葉が社会にだいぶ浸透してきて、それにかかわるスタッフのニーズも急速に増大
している印象を受けます。もちろん病名を付けることがすべてではありませんが、発達障害の診断を受ける
ことで、子供の可能性をむしろ広げてあげることにつながるケースもあると思います。
一人ひとりが自分らしく輝ける人生を送るためにも、リハビリテーション科が少しでも関わっていける
ようになってほしいと思う今日この頃でした。
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