ナベヅル資料館を後にした僕たち3班は、交流センターに戻った。ワークショップが始まるからだ。研修室は、すでにたくさんの参加者でごった返している。うん
・・・やはり大人ばかり。なんだか、現実に引き戻されたって感じだ。さきに、ツルを見に行ってきた班も結構あるようだ。
「そういえば!なんか足りんと思ったら、俺らまだナベヅル見てなくね!?」
っとオッキー。
「そういえば、そうやね。先に見に行ってなくてよかったんですか、タケさん?」
「う~ん。・・・大丈夫!どうせ後から、観察会があるし。それに、資料館で色々見ておいたほうが、これからのワークショップの内容も理解しやすいと思ってな。」
「へぇ!考えが深いですね!オッキーとは違う!」
多分、あゆみちゃんに悪気はないのだろう。真悟と一緒にオッキーをなだめる。
「みんな!始まるぞ。どっか座って。」
3人のおじさんが、向かい側の席に座った。これから話をする方々だ。うわぁ。参加者を超える専門家オーラ!こりゃぁ・・・難しい話になりそうだ。
ワークショップは1時間ほどで終了した。そして案の定!難しい話だった。ナベヅルの生態、各地でのナベヅルと人々とのかかわり、ナベヅルと文学について・・・。ただ、相手だって日本語で話している。
ナベヅルの渡来数減少を食い止め、ツルの里復活を目指す!
これが、『九黒ナベヅルミーティング』の目的であることは、僕たち中学生にも容易にわかった。タケさんは少しいらだっているようだ。
「難しい話じゃったなぁ。俺でもちょっとわからんかったもん。まったく・・・中学生が参加者におることはあっちもわかっちょるはずなんじゃけど。配慮が足りん!」
「でも・・・ちょっとはわかりましたよ!大切なのは、九黒町にくるツルの数をどうやって増やすかってことなんですよね?」
「まぁ・・・そうっちゃそう。でも、そう単純な話じゃないぞ!あっ、ワークショップの内容は、わからんでも気にすることはない。これから、実際にツルを観察して、何かを感じてくれればええんじゃ。」
よし!ここからが本番だ!
「そいじゃぁ観察会に、レッツ?」
「ゴー!!」
・・・どっかに行く度にやるらしい。
観察会は、実質また班行動らしい。ただ、ツルのいる場所は決まっているから、どの班も向かう場所は同じだろう。・・・っと思ったが、交流センターから外に出ると、右に向かう班と左に向かう班がいるぞ。僕たちは、右に行くようだ。真悟が、タケさんにその訳を尋ねる。
「あれ?左に行く班って・・・ナベヅル資料館に行くんですか?」
「ううん。あっちにもナベヅルがおるんよ。」
そうなのか。僕はてっきり・・・
「1箇所に固まってるんじゃないんですね!」
タケさんは、呆れた表情になった。
「あっくん!この間見に来たって言いよったじゃないか。13羽が一緒におったかい?」
「・・・あ!2羽しか見ませんでした!」
「そうじゃろう?九黒のナベヅルはねぇ。家族単位で生活してるんだ。それぞれの家族に、それぞれの生活場所が決まっている。珍しいんだよ、こういう越冬地は。」
あゆみちゃんは、またもメモ帳を取り出しメモしている。そんなあゆみちゃんから、鋭い質問!
「珍しいって・・・なんでここでは家族単位で生活するんですか?」
「昔は、こんなことはなかったんだよ。なんでかって言うと、13羽しかいないから。ほら、あの写真で見たみたいに100とかおったら、家族もなにもないじゃろ?でも、家族単位の生活が本来の姿なんだ。ナベヅルが減ってよくなったことの、数少ない例だね。後は・・・
悪いことばっかりだ。」
先頭を歩いていたタケさんが止まった。
“クルルゥ・・・”
懐かしい声!前に僕が見た場所とは違うってことは・・・違う家族。タケさんが指さしている方向に、みんなが一斉に双眼鏡を構える。・・・訂正。あゆみちゃんだけは、肉眼で頑張っている。・・・いた!3羽!
「僕たちの班番号と同じ数やん!1ヶ月ぶりの再会!」
「俺は家の上飛んでいったぶり~。」
「俺は初やな!やっぱ迫力あるわぁ!」
「ちょっと!誰か双眼鏡貸して~!」
この間来たときと同じく、田んぼで餌を探すナベヅルたち。ただ、この間とはそれを観察する心持ちがだいぶ違う。なんだろう?少し悲しい気分・・・?タケさんは、自分の双眼鏡をあゆみちゃんに貸す。
「ありがとうございま~す。」
「いえいえ。ゆっくり観察してください。たくさんの人にナベヅルを観察してもらってこそ、自分たちの努力が無駄じゃないのかも・・・と思えるんです。」
僕は今日まで、“九黒町にはツルがいる”。それが当たり前のことだと思ってきた。その当たり前が、タケさん・・・そして九黒町の人たちみんなの、努力の結晶であるとも知らず・・・。
・・・やはり大人ばかり。なんだか、現実に引き戻されたって感じだ。さきに、ツルを見に行ってきた班も結構あるようだ。
「そういえば!なんか足りんと思ったら、俺らまだナベヅル見てなくね!?」
っとオッキー。
「そういえば、そうやね。先に見に行ってなくてよかったんですか、タケさん?」
「う~ん。・・・大丈夫!どうせ後から、観察会があるし。それに、資料館で色々見ておいたほうが、これからのワークショップの内容も理解しやすいと思ってな。」
「へぇ!考えが深いですね!オッキーとは違う!」
多分、あゆみちゃんに悪気はないのだろう。真悟と一緒にオッキーをなだめる。
「みんな!始まるぞ。どっか座って。」
3人のおじさんが、向かい側の席に座った。これから話をする方々だ。うわぁ。参加者を超える専門家オーラ!こりゃぁ・・・難しい話になりそうだ。
ワークショップは1時間ほどで終了した。そして案の定!難しい話だった。ナベヅルの生態、各地でのナベヅルと人々とのかかわり、ナベヅルと文学について・・・。ただ、相手だって日本語で話している。
ナベヅルの渡来数減少を食い止め、ツルの里復活を目指す!
これが、『九黒ナベヅルミーティング』の目的であることは、僕たち中学生にも容易にわかった。タケさんは少しいらだっているようだ。
「難しい話じゃったなぁ。俺でもちょっとわからんかったもん。まったく・・・中学生が参加者におることはあっちもわかっちょるはずなんじゃけど。配慮が足りん!」
「でも・・・ちょっとはわかりましたよ!大切なのは、九黒町にくるツルの数をどうやって増やすかってことなんですよね?」
「まぁ・・・そうっちゃそう。でも、そう単純な話じゃないぞ!あっ、ワークショップの内容は、わからんでも気にすることはない。これから、実際にツルを観察して、何かを感じてくれればええんじゃ。」
よし!ここからが本番だ!
「そいじゃぁ観察会に、レッツ?」
「ゴー!!」
・・・どっかに行く度にやるらしい。
観察会は、実質また班行動らしい。ただ、ツルのいる場所は決まっているから、どの班も向かう場所は同じだろう。・・・っと思ったが、交流センターから外に出ると、右に向かう班と左に向かう班がいるぞ。僕たちは、右に行くようだ。真悟が、タケさんにその訳を尋ねる。
「あれ?左に行く班って・・・ナベヅル資料館に行くんですか?」
「ううん。あっちにもナベヅルがおるんよ。」
そうなのか。僕はてっきり・・・
「1箇所に固まってるんじゃないんですね!」
タケさんは、呆れた表情になった。
「あっくん!この間見に来たって言いよったじゃないか。13羽が一緒におったかい?」
「・・・あ!2羽しか見ませんでした!」
「そうじゃろう?九黒のナベヅルはねぇ。家族単位で生活してるんだ。それぞれの家族に、それぞれの生活場所が決まっている。珍しいんだよ、こういう越冬地は。」
あゆみちゃんは、またもメモ帳を取り出しメモしている。そんなあゆみちゃんから、鋭い質問!
「珍しいって・・・なんでここでは家族単位で生活するんですか?」
「昔は、こんなことはなかったんだよ。なんでかって言うと、13羽しかいないから。ほら、あの写真で見たみたいに100とかおったら、家族もなにもないじゃろ?でも、家族単位の生活が本来の姿なんだ。ナベヅルが減ってよくなったことの、数少ない例だね。後は・・・
悪いことばっかりだ。」
先頭を歩いていたタケさんが止まった。
“クルルゥ・・・”
懐かしい声!前に僕が見た場所とは違うってことは・・・違う家族。タケさんが指さしている方向に、みんなが一斉に双眼鏡を構える。・・・訂正。あゆみちゃんだけは、肉眼で頑張っている。・・・いた!3羽!
「僕たちの班番号と同じ数やん!1ヶ月ぶりの再会!」
「俺は家の上飛んでいったぶり~。」
「俺は初やな!やっぱ迫力あるわぁ!」
「ちょっと!誰か双眼鏡貸して~!」
この間来たときと同じく、田んぼで餌を探すナベヅルたち。ただ、この間とはそれを観察する心持ちがだいぶ違う。なんだろう?少し悲しい気分・・・?タケさんは、自分の双眼鏡をあゆみちゃんに貸す。
「ありがとうございま~す。」
「いえいえ。ゆっくり観察してください。たくさんの人にナベヅルを観察してもらってこそ、自分たちの努力が無駄じゃないのかも・・・と思えるんです。」
僕は今日まで、“九黒町にはツルがいる”。それが当たり前のことだと思ってきた。その当たり前が、タケさん・・・そして九黒町の人たちみんなの、努力の結晶であるとも知らず・・・。