おとぎのお家と青い鳥

本ブログでは、主に人間が本来持つべき愛や優しさ、温もり、友情、勇気などをエンターテイメントの世界を通じて訴えていきます。

青春うたものがたりシリーズ1「風のある町」/ A town with the wind 総集編 1

2008-04-03 20:33:18 | Weblog

本日より、全国の青春うたものがたりシリーズ1~「風のある町」/ A town with the wind  のファンのみなさんや周囲の方々から、本作品を1冊の単行本と同じような形式で読みたいという強い要望があり~青春うたものがたりシリーズ1~「風のある町」/ A town with the wind  総集編を、すべて前回のあらすじの紹介なしで、全5回に渡って連載します。また、今回の連載に伴い、前回の内容比べてかな新たにリニューアルあるされている部分がありますので、ぜひその辺りも見逃さずに、本作品の総集編を楽しんでください。

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第1話/ 大輝と愛


風のある町を君と歩いたね 風のある町で君と話したね
(いつでも2人一緒に・・・Woo ooo)
今では何もかもが遠い日々の 記憶にかすむ出来事だけど
僕の生活(くらし)の中では まるで時計が止まったように
あの青春(ひ)の君が今でも なにひとつ色褪せもせず美しいままで生きている
歳をとったせいだろうか 意味もない自分探しをするのは
もう帰れないからだろうか あのときめきの青春(じだい)の瞬間(なか)には
心地よい陽だまりの中の 眠りから目覚めたら
何の輝きもときめきもない 時の流れに置きざりにされた僕がいた



突然、愛が地図にも名前が載っていない“風のある町”にやって来たのは、桜前線の話題がいっせいにテレビニュースで流れ始めた、早春の風の強い日だった。
愛が、風の町にやって来たときの格好は、スーツケースひとつと薄いグレーのロングパーカーに、洗いざらしのジーパンという質素のものだった。
大輝との出会いは、駅前の不動産屋の前で部屋を探すための貼り紙を見ている時に、偶然その場所を通りかかった彼が、声を掛けたことがきっかけだった。
やはり、大輝の遊び目的の軟派と思われる行動に、最初はすごく警戒し彼が何を言っても無視をしていた愛だったが、彼が真っ黒に日焼けし顔でひょっとこ面や、明石家さんまなどの芸人の真似をして笑わせてくれる姿に、やがて少しずつ彼女の警戒心も解けいき、笑顔を見せるようになった。
大輝が愛と出会った時には、まだ彼は地元の大学に通う学生だった。
愛が、大輝と出会ったその日なかなかいいアパートが見つからずに、彼の部屋に泊めて貰ったのをきっかけに、2人は正式に自己紹介をし合い付き合うようになった。
その結果、愛のほうがもうすでに大学を卒業し、大輝より2つ年上ということが分かった。
つい最近まで、東京駅南口の丸の内のある一流商社に務めていたらしが、別に彼女のほうもその理由を積極的に話すことがなかったので、その理由まで深く聞くことはなかったが、どういうわけか辞めたということも分かった。
そして、その日から2ヶ月も経たないうちに「いつも一緒にいるのに、アパート代がもったいね・・・」という話から、二人は愛が借りた部屋で同棲するようになった。
大輝と愛は一緒に住むようになってから、以前にも増して二人で将来の夢を語り合ったり、映画を見に行ったりショッピングに出掛けたりするなどして、二人の交友時間を楽しむようになった。
そして、二人は生活費を稼ぐために、大輝が大学に出掛けている間は、愛はファーストフードの店でアルバイトをし、大輝は大学の授業が終わると以前から働いていた居酒屋で、それぞれにアルバイトを続けた。
そのせいで、普段の日はアルバイトをする時間が昼と夜というすれ違いはあったが、そのぶん毎月二回は日にちを合わせて必ず休日を取っていたので、たまに喧嘩はするものそんなに生活に不自由を感じたり、男女の中に生活に不便さを感じたりすることはなかった。
ただ、大輝には凄く気になることがひとつだけあった。
それは、愛がしょっちゅう熱を出したり、めまいを起こしたりすることだった。
大輝は愛の体のことを心配して、そのことを彼女に事あるごとに聞いたが、いつもその話になると何故か?話をはぐらかされた。

それから事件が起きたのは、そのごひと月ほど経ってからだった。
「ママが体調を崩したみたいだから、ちょっと家に帰って来るね。でもすぐに帰って来られると思うから心配しないでね・・・」
突然、大輝がアルバイトを終えて帰宅すると、そうメモ帳に伝言を書き残して、愛の姿が消えていたのである。
だが、愛のそんな言葉とは裏腹に、彼女はひと月以上が経っても、決して帰って来ることはなかった。
愛のことを心配した大輝は、たとえ一緒に住んでいても彼女のプライバシーを盗み見るようで、なんとなく悪い気がしたが、彼女の整理タンスの中から彼女の母親から彼女宛にときどき来ていた手紙を探し出し、やっとその住所を頼りに東京の成城にある彼女の家を探し出した。
大輝が家を訪ねると、今まで愛から一度も聞いたことはなかったが、かなり彼女の家は金持ちと思われる豪邸だった。

大輝が愛の家を訪ね、インターホーンを通じて自分の名前を名乗ると、家政婦らしき女性が応対に出て来たが、彼が愛のことについて尋ねると、何故だか?大慌てして2階に繋がっている螺旋階段を駆け上がって行き、やけに大柄で恰幅のいい中年の男性と、まるで女優のように品格のいい中年の女性を伴って3人で階段を降りて来た。
その姿を見た瞬間、大輝には家政婦らしき女性が呼んで来たのが、愛の両親であることがすぐに判断できた。
大柄な恰幅のいい中年の男性は、自分が愛の父親の石坂泰三であることを名乗ると、いきなり大輝に向かって、声を荒げて怒りだした。
「お前のおかげで、愛の病気は家にいるときよりも、ずいぶん酷くなったんだぞ!!」
「それって、いったいどういう意味なんですか?」
「お、お父さん、やめてくださいよ。亀梨さんに会えて愛だってあんなに喜んでいたじゃないですか・・・」
「お、お前は何を馬鹿げたことを言っているんだね!」
「ほ、本当じゃないですか・・・」
『「愛ちゃんはお母さんが体調を崩したので、しばらく家に帰ります・・・」と伝言をを書き残していましたが・・・』
「愛ちゃんに何かあったんですか?」
「そ、そ、そんなことを、あ、あの子が・・・」
そう呟くように言うと、愛の母親百合子の目からは、ハンカチでも押さえ切れないほどの大粒の涙がぼろぼろと、彼女の頬を伝って床に零れ落ちた。
「お、お父さん、もういいでしょう。あの子がこんなに、嘘まで付いて心配掛けまいと気遣っている人ですよ。亀梨さんに本当のことを話してあげましょう・・・」
「もういい!お前がそういい気持ちなら、もう好きにしろ!!」
愛の父親の泰三は、そう言った後もなおも怒りが収まらずに、ぶつぶつと愚痴を零しながら螺旋階段を早足で上がり、とっとと自分の部屋に帰って行った。
家政婦らしき女性は、その煽りを受けてどちらに付くか困り果てた顔で、泰三の方を向いたり百合子の方を向いたりして迷っていたが、百合子が泰三の様子を見に行くように伝えると、ホッとした表情で泰三の後を大急ぎで追い掛けて行った。


「実は・・・亀梨さん、愛は今病院にいるんです・・・」
「えっ?!」
「い、いったいそれはどういうことなんですか?」
「誰にも話さないと思っていましたが、亀梨さんあの子の命はもう半年しかもたいないんです・・・」
「そ、そ、そんなことを急に言われても、ぼ、僕には何がどうなっているのか、分かりませんが・・・」
「そうですよね。突然こんなことを話しても、何がどうなっているのか分かるわけがありませんよね・・・」
よほど辛いのだろう。
百合子は、勝手に溢れ出す涙をハンカチで抑えながら、悲しみに満ちた表情で話をし続けた。
「愛は・・・今重い白血病に掛かっていて、もうどんな治療を受けても治ることがないのです・・・」
「じゃあ、お母さんが病気というのは嘘で、本当は自分が病気だったんですね・・・」
「そ、それも半年間ほどしか命がもたないという・・・」
ようやく大輝は百合子の話を聞き、しょっちゅう愛が熱を出したり、めまいを起こしたりしていたことの、初めて本当の理由が分かった。
また同時に、その真相を百合子に聞かされたとたん、逆に今度は自分がめまいがして倒れてしまいそうなくらいに、心に大きなショックを受けた。





第2話/ 愛の病気
~限りある命(白血病)~


風のある町を君は去って行った きっともう帰れないと知っていたから
(片道切符一枚で・・・Woo ooo)
知らず知らずにいつか 二人の間を急ぐように時間が駆け抜け
知人(ひと)を通して聞いてた 君の噂も聞かなくなったいつからか
あのまま君が生きていてくれたら 二人にとってどんな人生があっただろう
歳をとったせいだろうか こんなにも涙もろくなったのは
もう帰れないからだろうか 君と過ごした思い出の場所へ
どこまでも青く澄み切った 星空を見ていたら
子供のように夢を見る とても惨めな大人の姿の僕がいた

歳をとったせいだろうか 意味もない自分探しをするのは
もう帰れないからだろうか あのときめきの青春(じだい)の瞬間(なか)に
心地よい陽だまりの中の 眠りから目覚めたら
輝きもときめきもない 時の流れに置きざりにされた僕がいた



実は、愛がふらりと偶然にも風のある町にやって来たのは、彼女自身が天国に旅立つための自分に残された、最後の時間を楽しむためだったのである。

「あ、愛ちゃんに会わせて下さい・・・」
「・・・・・」
大輝が必死で頼んでも、愛の母親百合子はなかなか首を縦に振らなかった。
おそらく、大輝の気持ちの中では愛の父親である泰三が許さないからだろうという、強い気持ちがあった。
しかし、実際の理由はそれだけではなかった。
それは、今の愛の本当の姿を知ると、百合子の心の中に大輝の気持ちに大きな動揺が起こり、彼の気持ちが愛から離れていってしまうのではないかという、かなり母親としてその問題に対する恐れがあったからだった。
愛は、高度の白血球の減少に伴う化学療法や造血幹細胞移植術等の血液疾患により、外には一歩たりとも出ることが出来な健康状態になり、ずっと大輝と別れて“風のある町”を去ったその後は、病院の無菌室で集中治療中を受け続けていた。
そして、その副作用で髪はすべて抜け落ち頬はこけ目は窪み、その姿にかつての彼女の清楚な面影は、もう何ひとつとして残っていなかった。

百合子は、“大輝の愛に会いたい”という話を聞いた後も、しばらくその真実を大輝に話すかどうか迷っていたが、彼の話を聞くにつれ彼が本心から愛を愛してくれていることを知ると、ついに彼にすべてを打ち明ける決心をした。
そして、やはり泰三は大輝と同行することを嫌がったが、大輝と百合子は愛が入院している新宿の信濃町にある慶都病院に向かうことになった。
車は、いつも泰三が通勤に使っている黒塗りのクラウンロイヤルを用意して貰い、泰三の運転手の河本輝夫が二人に同行した。
慶都病院は、かつて日本を代表するアクションスターの石渡裕一郎が入院したり、初めて日本人の女性宇宙飛行士として有名になった、向田千秋が医師として勤務していたりしたことでも、有名な病院である。
二人を乗せた車は成城の自宅を出ると、世田谷通りから環八に入り、用賀から首都高に乗って、首都高速道路4号新宿線外苑出入口で降り、慶都病院に向かった。
慶都病院は、同大学のキャンパスにあるせいか、意外に若い人の姿も多く見かけた。
一階で受付を済ませると、大輝と百合子は愛が入院している無菌室がある七階に、通路のちょうど中ほどにあるエレベーターで向かった。
愛が入院している病室に付くと、彼女はじっと身動きひとつせずに、ベッドの上から淡いピンクのパジャマ姿のままで、ずっと青くどこまでも晴れ渡った大空を見つめていた。
ただ、愛の姿が以前の姿とまったく違っていたのは、百合子が彼女を訪ねる前に話していたように、白血病の治療の副作用のせいで髪の毛はすべて抜け落ち、頭にベージュ色のニットの帽子を被り、躰全体が拒食症患者のようにやせ衰えていたことだった。
さすがに、大輝は百合子に話は聞いていたもの、現実に愛のその変わり果てた姿を見た瞬間は、あまりにも彼女が可哀相すぎて、何とも言えない複雑な気持ちになった。

――コン、コン、コン コン、コン、コン・・・――

大輝が、硬い透明のガラスで仕切られた壁をノックすると、愛はビックリした表情で立ち上がり、最初は照れくさそうに笑っていたが、やがて彼女の目には大粒の涙が溢れ出していた。
それは、大輝も同じだった。
大輝が自分自身で気付いた時には、彼の目からも愛と同じように大粒の涙が、自然に勝手に溢れ出していた。
そして、しばらく二人は見つめ合ったまま、決して何かを語ろうとはしなかったが、まるで久しぶりの再会をひとつひとつ確かめて喜び合うかのように、だんだんとガラス越しにふたつの躰は近づくと、もう気付いた時には両手と両手がひとつになって重なり合っていた。
その姿を横で見ていた、愛の母親の百合子も思わずもらい泣きして、しばらく三人の涙が止まることはなかった。
また、それは、大輝と愛の真実から愛し合っている、決して偽りのない究極の姿ともいえた。



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