大移動

　セガレとクンクンを産んだ病院にはＬＤＲがあります。

　陣痛・分娩・回復を１部屋で行えるのです。

　ＬＤＲは２部屋ありました。

　夜中に入院し、ＬＤＲの１部屋に通されました。

　後から入院してきた人はどうするんだろう・・・？

　と疑問に思っていたところ、明け方に部屋を移動してほしいと言われ、一般病室へ移動しました。

　私より後に入院した人が分娩するようです。

　朝９時前にはもう１つのＬＤＲへ再び入りました。

　そしてそこでクンクンを出産しました。

　いよいよ分娩、となると今まで寝ていたベッドが起き上がり、


　ガチャ～ン、ガチャガチャ～ン


　という音とともに勝手に両足が上がり勝手にお股が開きました。

　そして勝手にお尻から下の方は空洞？のようになりました。

　内診台のようなものです。

　さっきまでリラックスできる木目調の床や腰壁やインテリアとＢＧＭだったのに

　内診台に変身したベッドになると一気に病院の雰囲気です。

　そしてクンクンが産まれ、そのままここで休みました。

　通常、２～３時間ほどで歩行、トイレへ行き、それから病室へ移動するそうですが

　助産師さんか看護師さんが申し訳なさそうにやってきて

　「ニコスケさん…あの今病室がいっぱいで今晩はここで泊まってもらってもいい？」

　と言われました。

　はぁ、別にいいですよ。トイレもテレビも他の設備だって病室と変わらないし。

　部屋が広いくらいだし。

　その後も入ってくるスタッフの人はその都度

　「ニコスケさん、すみません」

　「ごめんなさいね、本当に。」

　とみんな謝ってきます。

　そんなに謝らなくても…と思いつつ、また疑問が。
　
　そして看護師さんに聞いてみました。

　「今晩、分娩入ったらどうなるんですか？」

　「さぁ、どうなるんやろうねぇ、ハッハッハッハッハ～～！」

　と笑いながら去って行かれました。

　そんなこと分娩入ってから考えたらえーやん、と現実逃避してるように見えました…。たぶん、スタッフの人の方がハラハラドキドキだったはず。

　私が一晩過ごしたＬＤＲのベッドは

　

　これが産むときは分娩台に。


　翌朝６時。

　お腹が空いて目が覚め、朝ごはんはまだかな～～？と思っていると

　「ニコスケさん…分娩入ったの…。

　すごくすごく申し訳ないんやけど、３Ｆに小さい小さい部屋があるんやけどお昼までそこでもいい…？」

　「はい、いいですよ♪」

　そういって案内された部屋は本当に小さい小さい部屋。

　小さい部屋に一部が畳になってます。

　トイレはないのにシャワー室はあって、ナースステーションへの電話があります。

　あぁ…先生の仮眠室なんだ。

　畳に敷いてある布団に転がって朝ごはんを待っているとシェフ（ここの病院ではこう名札に書いてます）が持ってきてくれました。

　気のせいかシェフまで申し訳なさそうにしてます。

　それにしても妙に落ち着く。

　この狭い感じがなんともいえない。

　なんなら昨晩からここでよかったのに。


　やっぱり人間、そんなに広い部屋・広い家は必要ないですね。

　と、いうわけでセガレとクンクンは将来個室が欲しいと言ってきたら

　ドアが二つある子供部屋に壁を作ってあげるのですがそうすると


　それぞれ４畳半


　しかないんですが、十分だと確信しました♪

　

　「聞いた？クンクン。ひどいよね、ママ。」

　「聞いた。しかも１部屋はクローゼットもないんだよ、にぃに。」


　昼前、やっと病室にたどり着きました。

　広いＬＤＲ→病室→広いＬＤＲ→狭い仮眠室→病室

　という移動が終わりました。