第61日目
非人称動詞と言えば、英語でも熟知の項目でしょうから、 直ちに「天気の表現だな」と連想されることと思います。ドイツ語では 非人称の代名詞 es を主語とします。最初にその代表的な動詞を見ておきましょう。
Es regnet. 「雨が降る(降っている)」
Es schneit. 「雪が降る(降っている)」
Es ist heiter (wolkig、windig). 「晴天だ (曇りだ、風が強い)」
など、
他に、動詞の不定形で掲げれば
donnern 「雷が鳴る」、blitzen 「稲光がする」
がありますが、
sich bewölken 「曇る」というような再帰動詞もあるし、また sich aufheitern 「はれ上がる」と分離動詞で再帰動詞の非人称動詞なんてのもありますよ。
サンプル
Es bewölkt sich plötzlich. 「突然雲におおわれる」
Es wird sich langsam wieder aufheitern. 「ゆっくり再び晴れてくることでしょう」
☆
しかし、この非人称の主語、動詞が人の心理、生理状態を表す時にも好んで顔を出しますので、そちらに大いに注意を振り向けてください。
「おなかがすいた」は Ich habe Hunger. でしたね?
もちろん、名詞ではなくて、形容詞を使って→ Ich bin hungrig. と言うことも可能です。
しかし、ドイツ語には、こんな言い方もあるんですよ
Mich hungert!
意味は同じです。
どういう文の構造か? 不思議ですよね? 「わたし」が主語じゃないことは分かりますね? 4格だし。となると、主語がない!?
これは Es hungert mich. という文の mich を文頭に出した形です。ですから主語はあるんです。非人称の es が主語なんです。英語もドイツ語も主語なしでは文章は成り立ちません。
でも、このように人の心理、生理状態を表す動詞の主語として用いられる非人称代名詞の es の多くは文頭以外では省略されるんです。
ビギナーが間違い易いサンプルとして、たとえば
「 (私は) 寒いよう」と言いたいとき、どうしますか?
「寒い」という形容詞は kalt です。
まさかねえ、Ich bin kalt. にはならないこと、分かりますよね?
S+V+C にしたら、C 主格補語なので、S=C、つまり「私は冷たいぞ」って意味ジャン!
Es ist kalt. ← こうしなければならないことはいいですか? 了解?
では、「私は」は?
ドイツ語ではこのとき、「わたし」を3格にします。したがって
Es ist mir kalt. ← こうなります。(短い文章ですが、立派に枠構造です!!!)
で、これを mir を文頭に出せば、es が姿を消して、
Mir ist kalt. となってしまうのです。
同じように、他のサンプルを見てみましょう
Mich dürstet. 「喉が渇いている」
Mich friert. 「寒気がする」
Mich ärgert. 「腹立つなあ」
Mir ist bange. 「心配だ」
など、es を省略した形で、人が何格になるかを含めて、覚えておくといいかと思います。
☆
熟語の主語として es が登場するケース
〇 「~がある」というときの Es gibt ~et.
これはうしろにくる4格が意味上の主語となるため、4格の練習問題として最適なサンプルなので既に習いました。
Es gibt einen Baum vor dem Haus. 「家の前に木が一本あります」
〇 つぎに、「~がない」という表現です。
「金がない」という時にドイツ語ではどう表現するか。
これもすでに習った形で表現すると、
Ich habe kein Geld. ←でした。
Ich habe keine Zeit. だったら 「暇がない」
この「~がない」という言い方には、非人称代名詞 es を主語にした、こんな形があるので、覚えてください。
↓
Es fehlt mir an Geld.
Es fehlt mir an Zeit.
この場合、an のあとには et3 が目的語として置かれます。辞書に出てくるようにこの熟語を表すと es fehlt ~ jm an ~et3 「~には~が欠けている」という熟語です。
☆
「ご機嫌いかが?」
これも非人称の形で、
Wie geht es Ihnen?
となります。主語は非人称の es で、あなたは3格 Ihnen となっています。
ですから、答えも「わたし」は主語にはならず、
Es geht mir gut, danke. とします。
Mir geht es gut. Und Ihnen? 「わたしは元気です。あなたは?」
英語だと、And you? だったからと言って、「あなた」を1格にしないでね~♪
☆
「~には~が欠けている」のように、非人称の主語 es を使った、よく使われる重要な熟語を二つ紹介しておきますから、しっかり覚えてくださいね。
Es handelt sich um ~et 「問題なのは~だ」
Es hängt von ~jm od. et3 ab. 「~次第だ」
サンプル
Hier handelst es sich nicht um das Geld, sondern um den Zweck. 「ここで問題なのは金ではなくて、その目的なんだ」
nicht ~、sondern ~ 連関句で「~ではなくて、~だ」
Bleiben wir noch ein bisschen bei diesem Thema? ― Es hängt von dir ab.
「もう少しこのテーマを続けましょうか」 ― 「君次第だよ」
☆
〇 動詞の意味だけに注意を促そうとして非人称の es を文法上の主語とするケースがあります。
Es klopft. 「ドアをたたく音がする」
Es brennt. 「家事だあ~」
☆
そして最後に、es を意味をもたない目的語として熟語をつくる場合もありますから、注意が必要です。
Wir haben es eilig. 「我々は急いでいる」
Er hat es weit gebracht. 「彼は出世した」 ( hat・・・gebracht は bringen の現在完了です )
Ich halte es mit ihm nicht mehr aus. 「彼にはもう我慢できない」 ( aushalten 「我慢する」)
などなどです
練習問題
日本語を参考にしてカッコのなかに適語を入れなさい
① ( ) ist heute kalt. Das Wetter ist schlecht. Jetzt blitzt ( ) und auch ( ) es.
「今日は寒い。天気が悪い。今稲光がして、またごろごろ鳴っている。」
② ( ) ist schlecht. Ich habe keinen Appetit.
「気持ちが悪い。食欲がありません」
der Appetit 「食欲」、発音は「アペティート」
③ Wie geht’s ( )? ― Schön, danke.
「元気?」 ― 「元気だよ、ありがとう」
④ ( ) klingelt! Jemand kommt.
「呼び鈴が鳴ってる。誰か来た」
⑤ Wie spät ist ( ) jetzt? ― Gerade ( ).
「何時ですか」 ― 「ちょうど12時です」
⑥ ( ) tut ( わたしの3格 ) leid. Aber ich kann Ihnen leider nicht helfen.
「お気の毒ですが、お役には立てません」
⑦ ( ) handelt es sich?
「何が問題なんですか」
⑧ ( ) dürstet. ― Wie bitte? ― ( ) habe Durst!!
「喉が渇いた」 ― 「え、何?」 ― 「の ど が 渇いた~」
⑨ Entschuldigung, ( ) es hier in der Nähe eine Bank?
「すみません、この近くに銀行はありますか」
⑩ ( ) handelt es sich nicht. 「それが問題なのではありません」
⑪ Machen wir morgen einen Ausflug? ― ( ) hängt von dem Wetter ( ).
「明日ハイキングにでかけようか」 ― 「天気次第だな」
⑫ ( ) zog in Freud' und Leide zu ihm ( ) immer fort.
「うれしいにつけ悲しいにつけ、いつもわたしはそこ(菩提樹の木)にいきました」 ( 主語は非人称の es で、わたしは4格になります )
zog・・・fort は分離動詞 ~ jn fortziehen 「~4格を連れていく」の過去形

シューベルトのレリーフ ( 彼がよく出かけたウィーンの Grinzing というワイン酒場が集まる地区で見かけました ( 2009年9月6日著者撮影 )
☆ ☆
解答
① ( Es ) ist heute kalt. Das Wetter ist schlecht. Jetzt blitzt ( es ) und auch ( donnert ) es.
② ( Mir ) ist schlecht. Ich habe keinen Appetit.
③ Wie geht’s ( dir )? ― Schön, danke.
④ ( Es ) klingelt! Jemand kommt.
⑤ Wie spät ist ( es ) jetzt? ― Gerade ( zwölf ).
⑥ ( Es ) tut ( mir ) leid. Aber ich kann Ihnen leider nicht helfen.
⑦ ( Worum ) handelt es sich?
⑧ ( Mich ) dürstet. ― Wie bitte? ― ( Ich ) habe Durst!!
⑨ Entschuldigung, ( gibt ) es hier in der Nähe eine Bank?
⑩ ( Darum ) handelt es sich nicht.
⑪ Machen wir morgen einen Ausflug? ― ( Es ) hängt von dem Wetter ( ab ).
⑫ ( Es ) zog in Freud' und Leide zu ihm ( mich ) immer fort.
詩なので語順が普通とはずいぶん変わっています。
普通の語順で書き直すと → Es zog mich in Freude und Leide immer zu ihm (= dem Lindenbaum ) fort.
非人称動詞と言えば、英語でも熟知の項目でしょうから、 直ちに「天気の表現だな」と連想されることと思います。ドイツ語では 非人称の代名詞 es を主語とします。最初にその代表的な動詞を見ておきましょう。
Es regnet. 「雨が降る(降っている)」
Es schneit. 「雪が降る(降っている)」
Es ist heiter (wolkig、windig). 「晴天だ (曇りだ、風が強い)」
など、
他に、動詞の不定形で掲げれば
donnern 「雷が鳴る」、blitzen 「稲光がする」
がありますが、
sich bewölken 「曇る」というような再帰動詞もあるし、また sich aufheitern 「はれ上がる」と分離動詞で再帰動詞の非人称動詞なんてのもありますよ。
サンプル
Es bewölkt sich plötzlich. 「突然雲におおわれる」
Es wird sich langsam wieder aufheitern. 「ゆっくり再び晴れてくることでしょう」
☆
しかし、この非人称の主語、動詞が人の心理、生理状態を表す時にも好んで顔を出しますので、そちらに大いに注意を振り向けてください。
「おなかがすいた」は Ich habe Hunger. でしたね?
もちろん、名詞ではなくて、形容詞を使って→ Ich bin hungrig. と言うことも可能です。
しかし、ドイツ語には、こんな言い方もあるんですよ
Mich hungert!
意味は同じです。
どういう文の構造か? 不思議ですよね? 「わたし」が主語じゃないことは分かりますね? 4格だし。となると、主語がない!?
これは Es hungert mich. という文の mich を文頭に出した形です。ですから主語はあるんです。非人称の es が主語なんです。英語もドイツ語も主語なしでは文章は成り立ちません。
でも、このように人の心理、生理状態を表す動詞の主語として用いられる非人称代名詞の es の多くは文頭以外では省略されるんです。
ビギナーが間違い易いサンプルとして、たとえば
「 (私は) 寒いよう」と言いたいとき、どうしますか?
「寒い」という形容詞は kalt です。
まさかねえ、Ich bin kalt. にはならないこと、分かりますよね?
S+V+C にしたら、C 主格補語なので、S=C、つまり「私は冷たいぞ」って意味ジャン!
Es ist kalt. ← こうしなければならないことはいいですか? 了解?
では、「私は」は?
ドイツ語ではこのとき、「わたし」を3格にします。したがって
Es ist mir kalt. ← こうなります。(短い文章ですが、立派に枠構造です!!!)
で、これを mir を文頭に出せば、es が姿を消して、
Mir ist kalt. となってしまうのです。
同じように、他のサンプルを見てみましょう
Mich dürstet. 「喉が渇いている」
Mich friert. 「寒気がする」
Mich ärgert. 「腹立つなあ」
Mir ist bange. 「心配だ」
など、es を省略した形で、人が何格になるかを含めて、覚えておくといいかと思います。
☆
熟語の主語として es が登場するケース
〇 「~がある」というときの Es gibt ~et.
これはうしろにくる4格が意味上の主語となるため、4格の練習問題として最適なサンプルなので既に習いました。
Es gibt einen Baum vor dem Haus. 「家の前に木が一本あります」
〇 つぎに、「~がない」という表現です。
「金がない」という時にドイツ語ではどう表現するか。
これもすでに習った形で表現すると、
Ich habe kein Geld. ←でした。
Ich habe keine Zeit. だったら 「暇がない」
この「~がない」という言い方には、非人称代名詞 es を主語にした、こんな形があるので、覚えてください。
↓
Es fehlt mir an Geld.
Es fehlt mir an Zeit.
この場合、an のあとには et3 が目的語として置かれます。辞書に出てくるようにこの熟語を表すと es fehlt ~ jm an ~et3 「~には~が欠けている」という熟語です。
☆
「ご機嫌いかが?」
これも非人称の形で、
Wie geht es Ihnen?
となります。主語は非人称の es で、あなたは3格 Ihnen となっています。
ですから、答えも「わたし」は主語にはならず、
Es geht mir gut, danke. とします。
Mir geht es gut. Und Ihnen? 「わたしは元気です。あなたは?」
英語だと、And you? だったからと言って、「あなた」を1格にしないでね~♪
☆
「~には~が欠けている」のように、非人称の主語 es を使った、よく使われる重要な熟語を二つ紹介しておきますから、しっかり覚えてくださいね。
Es handelt sich um ~et 「問題なのは~だ」
Es hängt von ~jm od. et3 ab. 「~次第だ」
サンプル
Hier handelst es sich nicht um das Geld, sondern um den Zweck. 「ここで問題なのは金ではなくて、その目的なんだ」
nicht ~、sondern ~ 連関句で「~ではなくて、~だ」
Bleiben wir noch ein bisschen bei diesem Thema? ― Es hängt von dir ab.
「もう少しこのテーマを続けましょうか」 ― 「君次第だよ」
☆
〇 動詞の意味だけに注意を促そうとして非人称の es を文法上の主語とするケースがあります。
Es klopft. 「ドアをたたく音がする」
Es brennt. 「家事だあ~」
☆
そして最後に、es を意味をもたない目的語として熟語をつくる場合もありますから、注意が必要です。
Wir haben es eilig. 「我々は急いでいる」
Er hat es weit gebracht. 「彼は出世した」 ( hat・・・gebracht は bringen の現在完了です )
Ich halte es mit ihm nicht mehr aus. 「彼にはもう我慢できない」 ( aushalten 「我慢する」)
などなどです
練習問題
日本語を参考にしてカッコのなかに適語を入れなさい
① ( ) ist heute kalt. Das Wetter ist schlecht. Jetzt blitzt ( ) und auch ( ) es.
「今日は寒い。天気が悪い。今稲光がして、またごろごろ鳴っている。」
② ( ) ist schlecht. Ich habe keinen Appetit.
「気持ちが悪い。食欲がありません」
der Appetit 「食欲」、発音は「アペティート」
③ Wie geht’s ( )? ― Schön, danke.
「元気?」 ― 「元気だよ、ありがとう」
④ ( ) klingelt! Jemand kommt.
「呼び鈴が鳴ってる。誰か来た」
⑤ Wie spät ist ( ) jetzt? ― Gerade ( ).
「何時ですか」 ― 「ちょうど12時です」
⑥ ( ) tut ( わたしの3格 ) leid. Aber ich kann Ihnen leider nicht helfen.
「お気の毒ですが、お役には立てません」
⑦ ( ) handelt es sich?
「何が問題なんですか」
⑧ ( ) dürstet. ― Wie bitte? ― ( ) habe Durst!!
「喉が渇いた」 ― 「え、何?」 ― 「の ど が 渇いた~」
⑨ Entschuldigung, ( ) es hier in der Nähe eine Bank?
「すみません、この近くに銀行はありますか」
⑩ ( ) handelt es sich nicht. 「それが問題なのではありません」
⑪ Machen wir morgen einen Ausflug? ― ( ) hängt von dem Wetter ( ).
「明日ハイキングにでかけようか」 ― 「天気次第だな」
⑫ ( ) zog in Freud' und Leide zu ihm ( ) immer fort.
「うれしいにつけ悲しいにつけ、いつもわたしはそこ(菩提樹の木)にいきました」 ( 主語は非人称の es で、わたしは4格になります )
zog・・・fort は分離動詞 ~ jn fortziehen 「~4格を連れていく」の過去形

シューベルトのレリーフ ( 彼がよく出かけたウィーンの Grinzing というワイン酒場が集まる地区で見かけました ( 2009年9月6日著者撮影 )
☆ ☆
解答
① ( Es ) ist heute kalt. Das Wetter ist schlecht. Jetzt blitzt ( es ) und auch ( donnert ) es.
② ( Mir ) ist schlecht. Ich habe keinen Appetit.
③ Wie geht’s ( dir )? ― Schön, danke.
④ ( Es ) klingelt! Jemand kommt.
⑤ Wie spät ist ( es ) jetzt? ― Gerade ( zwölf ).
⑥ ( Es ) tut ( mir ) leid. Aber ich kann Ihnen leider nicht helfen.
⑦ ( Worum ) handelt es sich?
⑧ ( Mich ) dürstet. ― Wie bitte? ― ( Ich ) habe Durst!!
⑨ Entschuldigung, ( gibt ) es hier in der Nähe eine Bank?
⑩ ( Darum ) handelt es sich nicht.
⑪ Machen wir morgen einen Ausflug? ― ( Es ) hängt von dem Wetter ( ab ).
⑫ ( Es ) zog in Freud' und Leide zu ihm ( mich ) immer fort.
詩なので語順が普通とはずいぶん変わっています。
普通の語順で書き直すと → Es zog mich in Freude und Leide immer zu ihm (= dem Lindenbaum ) fort.
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