ヨハン先生のドイツ語フランス語三昧

ドイツ語、フランス語をはじめて学ぶ人からブラシュ・アプしたいと思っている人まで、楽しく、しっかり身につくブログです

このフレーズを覚えよう 21

2014-08-14 01:26:56 | フランス語のフレーズ
今回は、夏目漱石の「草枕」の冒頭がフランス語でどう訳されているかの続きです

とかくに人の世は住みにくい。
Bref, il n’est pas commode de vivre sur la terre des hommes.

この前の文章を省略しているので、「とかくに」にあたるフランス語 Bref は、脈絡を欠いて持ち出すと、唐突感が否めないかもしれません
かくかくしかじかの理由から、要すれば、という意味での bref です

世に住むこと二十年にして、住むに甲斐(かい)ある世と知った。
Ayant vécu vingt ans en ce monde, je compris qu’il valait la peine d’y vivre.

ayant は avoir の現在分詞で、ここは分詞構文
「~するに甲斐ある」という表現を覚えましょう

Cf   Ce livre vaut la peine d’être lu.
 この本は一読に値する



二十五年にして明暗は表裏(ひょうり)のごとく、日のあたる所にはきっと影がさすと悟った。
A vingt-cinq ans, j’ai eu la révélation que la lumière et les ténébres étaient deux faces d’une même réalité et que partout où naît la lumière, de l’ombre tombe sur nous.


三十の今日(こんにち)はこう思うている。――喜びの深きとき憂(うれい)いよいよ深く、楽(たのし)みの大いなるほど苦しみも大きい。
Aujourd’hui, à trente ans, voici ce que je pense : ... Plus profonde est la joie, plus profonde est la mélancolie ; plus grand est la plaisir, plus grande est la souffrance.


夏目漱石は1867年の生まれなので、「草枕」が書かれた1906年には不惑、40に手が届こうかという歳になっていましたが、それにしても人生を達観しています
本当のところではもちろんそうはいかなくて、もがき苦しむ作家人生でもあったのですが
すばらしいのは嘘を言わないこと、居直らないこと、苦しんでいることを素直に見つめられることでしょうね

モンタンヴェール、ラック・ブラン

2014-08-14 01:17:31 | 旅行
8月2日、山頂での天候が回復しないで真冬の寒さをしっかり味わったのち、ロープウェイで再び、中間駅の Plan de l'Aiguille まで下り、そこからモンタンヴェールを目指してトレッキング。ほぼ起伏のない山の腹に通された道を歩くコースなので子供連れも多く人気のルートのようです


ロープウェイの駅から少し下ると見はらしいのいい場所に避難小屋兼レストラン (ここから先はモンタンヴェールに到着するまで山小屋はないので、少し早い時間でしたが、昼食をとりました)
山頂での寒さと視界の悪さがここまで降りただけで嘘だったかのよう、目の前にボッソン氷河、でもやはりモン・ブランは雲の中です


シャモニー針峰群を右に、ハイキング気分と行きたいところでしたが、結構これが長い。そして時折のぼり、なかなか目的地のメール・ド・グラスに近づいている実感がないなか、最後には結構きつい登りもありました



2014年8月2日 モンタンヴェール、メール・ド・グラス

ようやく山の上からメール・ド・グラスを一望できる場所にたどり着いたときには、さすがにへとへと
でも目の前の雄大な眺めにしばし疲れは吹き飛んでいきました

7月31日に訪れたゴルナーグラートの氷河に比べると、氷が小さく、少なく見えるのは削られた周りの岩から崩落してくる砂利、土が氷の上を覆っているためです
でも、実際20世紀の初めころにはまだ削られた岩肌のところまで氷河が覆っていました。考えてみれば今はモンタンヴェール登山鉄道の駅を降りてから、さらにテレキャビンで下に降り、さらにまた何百段もある階段を下りて行かないと氷河にたどり着きませんが、登山鉄道の駅が作られたのは1909年、駅とその脇のグランドホテルは直ぐ目の前に大氷河を展望できるロケーションとして建てられたものですから、一世紀あまりの間に猛烈な勢いで氷河が溶けてなくなったようです
メール・ド・グラスはアルプス山脈第4の規模の氷河ということです。全長12km、幅は700mから最大幅1950m。氷の厚さは最大で420mあり、年間90メートルのスピードで流れ降りています

ところで、スイス、ルツェルンの氷河公園内にある博物館には、太古の氷河の氷と人工的に凍らせて作られた現在の氷が並べて展示してあり、触れることができます
氷河の氷は触っても水っぽくなく、さらさらとしていて不思議な感覚です。氷河の氷はマイナス20度、人工氷は0度。また、長い年月をかけて圧縮された氷河は人工氷とは比べ物にならないほど重量があり、模型の形でそれぞれ塊の重さの違いが体感できるように展示してあります



8月4日は朝から快晴に恵まれました
電車でシャモニーから一駅レ・プラまで乗り、そこからロープウェイを乗り継いで、フレジェールから、さらにランデックスへ
ラック・ブランを目指すコースとしてはフレジェールから始めるのは道が安全だけれども、ずっと登り、ランデックスからはほぼ山の腹を真横に歩くコースで高低差があまりないけど、季節により雪が残ってその分危険。8月ですからね、もう道に雪は残っていないからと、ランデックスからのコースを歩きました


2014年8月4日 ランデックス側からの眺め、ドリュ針峰 (赤い↓)、左隣に見えるのはヴェルト針峰、谷間にモンタンヴェールのメール・ド・グラス

8月2日のコースは予定の倍の時間がかかってしまいましたが、今回はほぼ予定通り
最後にフレジェールからのルートと合流して、一気に登って、ラック・ブランにたどり着きます


2014年8月4日 ラック・ブラン

このフレーズを覚えよう 20

2014-08-12 00:14:21 | フランス語のフレーズ
 山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。

Je gravissais un sentier de montagne en me disant :

Sôseki; Oreiller d'herbes, traduit du japonais par René de Ceccatty et Ryôji Nakamura, Rivages, 2007, Éditions Payot & Rivages

今回は日本語がフランス語ではどう訳されるか、といういつもとは逆のバージョンです

ローザンヌの Payot という本屋 (出版業も兼ねていて、フランス語圏の大きな町にはたいていあります) で、夏目漱石の「草枕」のフランス語版を買い求めてきましたので、さっそく冒頭の、有名な文章がどうフランス語に翻訳されているかを見ることにしました

se dire は「思う、考える」、en me disant でジェロンディフ (「フランス語の文章構造の基本を理解しよう (22) 分詞の使われ方」参照)
日本語とは「~しながら」が入れ替わっています
gravissais は不定詞 gravir 「よじ登る」の半過去で過去の継続相「よじ登っていた」



se dire を使った成句

On se dirait au paradis.
まるで天国にいるようだ


Cf On dit que ~ となると、「~という噂だ」となります

Cela ne se dit pas.
そうは言いません




ということで、ヨハンが大好きなシャンソン、ジャン・フェラの「ラ・モンターニュ」、是非みなさんもお聴きになってみてくださいませ

( ^^) _U~~

Jean Ferrat  « La Montagne »
http://www.youtube.com/watch?v=RbTXbKD-BdE

この曲は昔FM東京でお昼の時間の番組のテーマソングとして古賀つとむさんの歌で流れていましたので、本当に良く聴きました
あるときフランス語の先生に、こういうメロディーの曲があるけど、オリジナルを知っているかとお尋ねしましたが、まだネットのない時代、分からずじまいでした

今はYoutubeですぐに検索出来てありがたい時代です

1930年生まれのジャン・フェラは、2010年3月13日に亡くなりました
ヨハンがブログを始めたばかりの頃で、当時は twitter もやっていましたので、訃報に接し、さっそくつぶやいたように記憶します

http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean_Ferrat

古賀つとむさんの日本語バージョンも味わい深いものがあります
是非こちらもあわせてお聴きくださいませ

( ^^) _U~~

古賀つとむ 「ふるさとの山」
https://www.youtube.com/watch?v=8KMkMnzW2hg



☆ ☆

シャモニーの町からのモン・ブランの眺め


2014年8月5日撮影

この日はジュネーブへの移動日でした。ようやく朝からこんなに快晴になりました。ジュネーブに移動するバスのチケットを買いに町に出た時に撮影しました (赤い矢印↓がモン・ブラン)。ロープウェイ乗り場もさすがに人でいっぱいでした
左端の山の上がエギューイ・デュ・ミディの展望台で、雲一つかかっていません。撮影した時間が朝10時少し前なので、展望台に上がっている人はさぞ大騒ぎしていることでしょう



2014年8月2日撮影

一方私たちがその展望台に上った8月2日はこの有様です
ほとんど視界ゼロに近いほど。真冬でした
でも、おかけで、涼しい空気の中、モンタンヴェールまでのトレッキングをすることが出来ました


2014年8月4日撮影

これはシャモニー最後の夜、10時少し前にホテルのヴェランダから撮影したものです
三日月が出ていて、ちょうどいい写真がとれるな、と思ってヨハンも2枚撮影しましたが、三日月が丸くぼけてしまうので、諦めていたところ、ロザーリウムの方がしっかり三日月を映してくれていました


このフレーズを覚えよう 19

2014-08-11 10:44:57 | フランス語のフレーズ
Il en fait un fromage.
彼はそれを誇張している


本日のフレーズはこれです↑ 直訳してしまうと、「彼はそれでチーズをつくる」という意味で、不思議も抵抗もなく受け入れてしまいそうですが、辞書には fromage の成句として、次のように書かれています

faire de ~qc un fromage 
~を誇張する、大げさに言う


どうしてそんな意味になるんだろう、と不思議です
そこで、ウェブ辞書で検索をしてみると、この成句の説明を見つけることができます

Cette expression remonte au XXème siècle. Partir du lait, (c'est-à-dire un élément simple) et en faire du fromage (aliment très travaillé) signifie que l'on peut transformer quelque chose qui était simple en une chose complexe.

この表現は20世紀に出てきた。牛乳という単純な材料からチーズというとても手のかかる食品をつくる、と表現することで、何かもとは単純であった事柄を複雑な事柄へと変えてしまうという様子をあらわすものである

たしかに、チーズは時間をかけて熟成させるほどに味わいを増す食品で、とても手のかかる高級な食べ物です
それだけに、フランス人がワインとならんでチーズに寄せる思いの熱さがとてもよく理解できます

一通りの料理を味わった後でなおデザートの前にチーズがふるまわれるということを、なんと表現したらいいのか考えてみると、すばらしい演奏を味わった聴衆が、たとえばウィーン恒例のニューイアー・コンサートのように、プログラム終了だからといって直ちには立ち去り難い気持ちでいるときに、極上の演奏で「美しき青きドナウ」が演奏されるのに耳を傾け、静かに故国、故郷の美しさ、すばらしさになお静かに思いを寄せ、そして最後の最後には手拍子とともに「ラデツキー行進曲」で明日への活力を奮い立たせながらようやく家路につく、こんなコンセプトに似ているでしょうか



なお、チーズの成句にはこんなのもありますから、やはり、デザートの前にチーズがふるまわれると言うことがいかに贅沢なこととして受け止められているか分かります

fromage et dessert 
チーズもデザートも、両方とも

fromage ou dessert 
チーズかデザートか、どちらか一方


シャモニーの宿、サヴォワのチーズ

2014-08-10 22:13:17 | 旅行
今回ヨハンたちは、ローザンヌの後スイスから国境を越え、フランスのシャモニーに行きました

トレッキングとアルプス山岳博物館訪問が目的でした

シャモニー滞在中の宿としたのは、auberge du bois prin です ↓


2014年8月5日撮影

5つ星の、料金は高めのオーベルジュですが、ネット検索でそのロケーションと料理に惹かれ、またネットでの評判も上々なので、たまには贅沢もいいかと決断しました

ホテルは写真で見るように、すべての客室、レストラン・ルームのヴェランダからモン・ブラン山群がばっちりのロケーションです 
写真の赤い矢印↓がモン・ブランです。モン・ブランの下に見えているのがボッソン氷河
アルプス山脈の最高峰でありながら、地理的関係からモン・ブランは小さく見えます
しかも、それでも最高峰なので、日中はよほど運が良くなければ雲の中で、朝晩の空気が冷えた時にその姿を見せる山なので、順番待ちしてロープウェイでエギューイ・デュ・ミディの展望台まで登っても、下で晴れていたからと言っても上ではもう雲の中ということが珍しくありません

さて、前回の「このフレーズを覚えよう」ではお料理の話をしましたから、今回、シャモニーのあるサヴォワ地方のチーズのことを取り上げることにしました

フランスはとにかくチーズ大国、その種類の豊富さについては下のサイトで実際にご確認ください

このチーズが、朝ももちろん、ディナーのときには、コースの締めとして、デザートの前に出てきます

フランスでこれを初体験した時は本当に驚きでした

知ってたら料理を少しは控えたのにと悔しくなるほど、料理でお腹を十分満足させたあとに、ワゴンで各種取り揃えたチーズが運ばれてまいります

このオーベルジュでは、牛乳からのチーズとヤギのチーズが半々、どちらもすごい数の種類がのせられて目の前に運ばれてまいります
そのとき確認したわけではありませんが、たぶんほとんどが地のものだと思います

なかでも、カマンベールのように少し中身がとろーりとしたチーズ、これをロザーリウムがマドレーヌさんに確かめると、カマンベールはノルマンディー地方のチーズで、これはサヴォワ産でルブロッションと言うのだと教えてくれました


ルブロッション
http://fr.wikipedia.org/wiki/Reblochon



フランスの代表的なチーズ一覧 ↓
http://fancy-cheese.com/world/cheese_france.html
ルブロッションの項参照


参考までに、カマンベール・チーズの写真も貼ってみます

カマンベール
http://fr.wikipedia.org/wiki/Camembert_(fromage)






このオーベルジュは料理が評判で、コースメニューは日替わりします
写真に撮らずじまいで残念ですが、玄関わきには、今年、2014年に新たにミシュランとゴー・ミヨーから認定を受けたペナントが、すでにあるペナント(名前はメモしてなくて思い出せません)に並べて掲げてあり、堂々の料理認定三冠を達成しているレストランです

ディナーでは私たちがドイツ語の方が得意だと知って、わざわざオーストリアから研修中(いわゆるAzubiさん、国家資格を取るために課せられる実地研修をする人)のアグネスさんを付けてくださいました
アグネスさんはウィーンの大学ではバイオリンを専攻した人だという話から、ロザーリウムとも話が弾み、とても楽しいディナーでした(でももちろん研修期間が過ぎれはウィーンに戻ります)



2014年8月3日撮影、レストランのスタッフ、左からYann君、ヨハン、Agnesさん、Mihaelaさん

ミハエラ(綴りにはcが入らずMihaela)さんは、ルーマニアの方ですが、ジーベンビュルゲン地方というドイツ系住民の多く住む地方の生まれだそう。でもドイツ語はあまりしゃべれません (もとは学校で先生をしていたという方で、この方も研修でこのオーベルジュに来ているとのことでした)


                                
                                2014年8月5日、Madeleine さんと

直ぐ勘違いするのが得意なヨハンは、この方が経営者のマダムかと思っていました
ロザーリウムにチーズの説明をしてくださったマドレーヌさんは、ノルマンディーのご出身ということでしたので、ヨハンが持てる限りの知識を動員してルーアンには行ったことがあると話すと、まあまあその近くだと教えてくれました
シードルが有名でしょ? と言うと、とても嬉しそうでした



2014年8月4日撮影、ヨハン、ロザーリウム、右がオーベルジュの経営者 Carrier さん

この方は、マドレーヌさんの話では、1965年に先代がこのオーベルジュをはじめ、先代の息子さんで、二代目
ホームページで、家庭菜園で料理に使う野菜を手入れしている姿とともに写っている方です

料理人は別にジュリアンさんという方がいるようですが、お会いすることはありませんでした

ジュネーブに帰る日に、何しろ駅から多少離れて、すごい坂を上ってくるところでしたから、荷物を駅まで運んでいただけますか? とカリエさんに頼むと、マダムが運転手でした