今回は、夏目漱石の「草枕」の冒頭がフランス語でどう訳されているかの続きです
とかくに人の世は住みにくい。
Bref, il n’est pas commode de vivre sur la terre des hommes.
この前の文章を省略しているので、「とかくに」にあたるフランス語 Bref は、脈絡を欠いて持ち出すと、唐突感が否めないかもしれません
かくかくしかじかの理由から、要すれば、という意味での bref です
世に住むこと二十年にして、住むに甲斐(かい)ある世と知った。
Ayant vécu vingt ans en ce monde, je compris qu’il valait la peine d’y vivre.
ayant は avoir の現在分詞で、ここは分詞構文
「~するに甲斐ある」という表現を覚えましょう
Cf Ce livre vaut la peine d’être lu.
この本は一読に値する
二十五年にして明暗は表裏(ひょうり)のごとく、日のあたる所にはきっと影がさすと悟った。
A vingt-cinq ans, j’ai eu la révélation que la lumière et les ténébres étaient deux faces d’une même réalité et que partout où naît la lumière, de l’ombre tombe sur nous.
三十の今日(こんにち)はこう思うている。――喜びの深きとき憂(うれい)いよいよ深く、楽(たのし)みの大いなるほど苦しみも大きい。
Aujourd’hui, à trente ans, voici ce que je pense : ... Plus profonde est la joie, plus profonde est la mélancolie ; plus grand est la plaisir, plus grande est la souffrance.
夏目漱石は1867年の生まれなので、「草枕」が書かれた1906年には不惑、40に手が届こうかという歳になっていましたが、それにしても人生を達観しています
本当のところではもちろんそうはいかなくて、もがき苦しむ作家人生でもあったのですが
すばらしいのは嘘を言わないこと、居直らないこと、苦しんでいることを素直に見つめられることでしょうね
とかくに人の世は住みにくい。
Bref, il n’est pas commode de vivre sur la terre des hommes.
この前の文章を省略しているので、「とかくに」にあたるフランス語 Bref は、脈絡を欠いて持ち出すと、唐突感が否めないかもしれません
かくかくしかじかの理由から、要すれば、という意味での bref です
世に住むこと二十年にして、住むに甲斐(かい)ある世と知った。
Ayant vécu vingt ans en ce monde, je compris qu’il valait la peine d’y vivre.
ayant は avoir の現在分詞で、ここは分詞構文
「~するに甲斐ある」という表現を覚えましょう
Cf Ce livre vaut la peine d’être lu.
この本は一読に値する
二十五年にして明暗は表裏(ひょうり)のごとく、日のあたる所にはきっと影がさすと悟った。
A vingt-cinq ans, j’ai eu la révélation que la lumière et les ténébres étaient deux faces d’une même réalité et que partout où naît la lumière, de l’ombre tombe sur nous.
三十の今日(こんにち)はこう思うている。――喜びの深きとき憂(うれい)いよいよ深く、楽(たのし)みの大いなるほど苦しみも大きい。
Aujourd’hui, à trente ans, voici ce que je pense : ... Plus profonde est la joie, plus profonde est la mélancolie ; plus grand est la plaisir, plus grande est la souffrance.
夏目漱石は1867年の生まれなので、「草枕」が書かれた1906年には不惑、40に手が届こうかという歳になっていましたが、それにしても人生を達観しています
本当のところではもちろんそうはいかなくて、もがき苦しむ作家人生でもあったのですが
すばらしいのは嘘を言わないこと、居直らないこと、苦しんでいることを素直に見つめられることでしょうね