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OYAMA CROSSROAD BLUES

mimi-tab.社長の妄想迷走奔走日記

日本人製作家(ルシアー)のポテンシャルにしびれる(前編)

2016-10-21 17:29:34 | ギター
先日、2人のアコースティックギターの製作家(ルシアー)がスタジオに尋ねてきてくれました。荻野裕嗣さんと藤井圭介さん。30代の彼らは杉田健二さんという共通の師匠のもとで学び、独立して同じ富山県に工房を構え素晴らしいギターを制作しています。彼らが作るギターは一般に想像されるマーチンやギブソンといった工場製の大量生産されているものとは違う一品物。それだけに値段は決して安くないけれどデザイン、サウンド、マテリアル、どこをとっても彼らの趣向や楽器、音楽への思いが詰まった個性的なものです。海外では荻野さんや藤井さんも修行したErvin SomogyさんやJames Taylorが使っていることで有名なJames Olsonさん、美しいブラジリアンローズウッドのギターを制作するJeff Traugottさん、Pat Methenyが使用していることで知られるカナダのLinda Manzerさんなどがとても高い評価と人気を得ています。彼ら彼女らは数多くのバックオーダーを抱えて新規の入手は非常に困難、価格もとても高価です。二人もそんな世界の人気ルシアーと同じ土俵で勝負するべく、アメリカ・サンタバーバラ州で開催されたTHE SANTA BARBARA ACOUSTIC INSTRUMENT CELEBRATIONというギターショーに出品して来たそうです。今年のサンタバーバラでのショーには彼ら以外に数名の日本人ルシアーが参加しています。世界で勝負してやろうという日本人が増えているのは頼もしいですね。その帰りにわざわざ時間を割いて新宿・曙橋のStudio FAVREに立ち寄ってくれました。

荻野さんとはTOKYOハンドクラフトギターフェス2016(@東京・錦糸町・すみだ産業会館)で出会いました。会場の入口近くのブースで”オレを見ろ!”オーラをビンビンに出しているギター、それが初めて見るOGINO GUITARでした。


横には吉田丈二さんのJoji Yoshida Guitarsと越前良平さんのEchizen Guitarsというともにカナダの名匠Sergei de Jongeさんのもとで学んだ二人の実力派が並んでいましたが、引けを取らない存在感がありました。ギターはSmall Jumboと言われるシェイプでジャーマン・スプルース&マートルウッド(トップ材&サイド・バック材)、シトカ・スプルース&パデューク、イングルマン・スプルース&マッカーサー・エボニーの三種類が展示してありました。



最初にすでに買い手がついているというジャーマン&マートルウッドを弾いてみます。 TOKYOハンドクラフトギターフェスの会場は普通の展示場なので会場中は常にわんわんと騒がしく、音色を聞いたりするのにはまったく適さないのですが、そんな中でもオレの心を鷲掴みにするような素晴らしい音を響かせました。ズシッとした量感豊かな低音、ショワーッと宇宙まで届きそうな広がりのあるプレーン弦、ギュインギュインとドライブ感を生み出す中域などスケール∞で凄い可能性を感じさせるギターでした。反応がとても早くずっしりとした重厚感を持ちながら光のようなスピード感を併せ持ったまるでフェラーリとブルトーザーを合わせたような印象です。初めて見る迫力フィギュアードのマートルウッドは米国より帰国する際になんと師匠のSomogyさんから譲り受けたオレゴン産のそれとのこと。曰く「Somogyさんはオーダーをたくさん抱えているんですが、その殆どがハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)のため、どうやら自分が生涯で使い切れない木材がたくさんある事に気がついた」ので分けてくれたとのこと。確かにギター製作家は木材フェチ(失礼!)が少なくなさそうだから素敵な木目、素敵な香り、可能性のあるNEWウッドなどに出会ったら思わず買ってしまうことは、想像に難くありません。一方で巨匠にオーダーするクライアントはある程度の出費を覚悟した方たちなので、鉄弦ギターの頂点木材「ハカランダ」を選ぶ方が殆どと聞いたことがあります。バックオーダーを抱えた人気ルシアーたちはなかなか自分の興味だけで材を選んで作品を作る時間は無いのかもしれないですね。

さておき荻野さんのマートルウッド・ギターはゴワンゴワンと騒音・轟音鳴り響く会場でチョロリと弾いても感性に訴えかけてくるギターでした。”うー、これはなかなか素晴らしいですねぇ、こんな環境で言うのも失礼な話かもしれないけれど”と言うと”会場の隅に試奏スペースがあるのでそこで弾きませんか?”とのお言葉。荻野さんは注目のルシアーで訪ねてくる人も多かったのですが、その時はワザワザ試奏ブースまで案内してくれて試奏につき合ってくれました(そんな気さくさも彼の魅力です)。そこでどんなギターを作りたいの?とか、どんな作業場なの?とかこいう音がしていると思うけど作っている本人はどう感じる?とか様々な会話をしました。彼はトップを叩いた時の音の周波数をiPhoneのアナライザーアプリで管理していてそれを参考に音作りをしているところに特徴があるのですが、そんなこともその時に教えてくれました。物凄く真摯でオープンなんだけれど同時に”Somogyさんのところにいた時のデータもすべてとってあるので自分が在籍していた時代のSomogy Soundは再現できます”とか”販売価格についても日本人製作家が海外の製作家の半額くらいで取り扱われているいる現状に不満と不安を覚えていて、同じくらいの価格設定で頑張りたい”などしっかりとした自負・自信・プランも持ち合わせていてとても頼もしい製作家だなと思いました。結局その後、3本すべてのギターを弾かせていただき、忙しい中たくさんの話をしました。翌日はどうしても静かな場所で音を確かめたくなって仕事の合間をぬって、出品後に彼がギターを納品していった楽器店に行き試奏しました。お店の方が言うようにまだまだな点もあるのでしょうが、彼がこれからどんなギターを作っていくのか興味を覚えずにはいられませんでした。(後編に続く)

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