OYAMA CROSSROAD BLUES

mimi-tab.社長の妄想迷走奔走日記

TOKYOハンドクラフトギターフェス2018

2018-06-22 19:16:27 | ギター
今年も行ってきました。極上のマイナーイベント”TOKYOハンドクラフトギターフェス2018”@錦糸町すみだ産業会館サンライズホール。今年も数多くの素晴らしいギターに、製作家さんにお会いできました。

二日間行われる内の初日の11時に行ったのですが入り口はなんと行列!!前売りと当日が同じ値段ということで当日券売り場が混み合うのは分かるのですが例年にはない行列に”ちゃんと弾けるかな?”、”製作家さんと話できるかな?”と不安がよぎり背中が汗ばみました。気の短い方は前売りチケットをおすすめします。


Keystone Stringed Instruments(西恵介さん)



最初に目に入るのが西恵介さんのKeystone Stringed Instrumentsのブースです。西さんのギターには昨年ものすごく感銘を受けました。その後楽器屋さんで御本人に偶然会いましたが、人気の彼の作品に出会うのは極々稀でなのでここに来るのを楽しみにしていました。今年の出品作は昨年のModified-D styleとは違う一見ギブソンを意識したと思わせるOMサイズのギターが2本。サイドバックの材やカッタウェイ(Scooped awayと呼ばれる特殊なもの)の有無で少しづつ仕様が違います。早速弾かせていただきましたがやはりいい音でした。小型のギブソンを意識したサウンドなのですが同時にマーチンOMのような美しい倍音もまとっています。西さんのギターは昨年のものもそうでしたが太い音がまとまりよくガツンと飛び出してくるのでかっこよいですね。倍音が整理されていてレコーディングでも使いやすそうです。”結局、材(マテリアル)も大切なんだけど製作家で音は決まるんですよね”という言葉に説得力がありました。そうは言いつつメイプルはメイプルらしいちょっと重たいキッチリとした音、マホガニーは広がりのあるスッキリした音できっちりとマテリアルの個性をきっちり引き出しているところが憎い。楽器屋さんに西さんのギターかっこいい音だなあ、と言うと必ず”オーダーすごくて待ち長いですよ~”と言われてしまうんですよね苦笑。




凝ったカッタウェイが入ったメイプルサイドバックのモデル



マホガニーのモデルは材の特徴が出た広がりのあるサウンド


製作者の西恵介さん


FUJII GUITARS
(藤井圭介さん)



富山に工房を構える藤井圭介さんのFUJII GUITARS。シンカーレッドウッドをトップに使ったインパクトのあるルックスのギター、それと対象的にフィエンメ・スプルースというストラディバリウスも使っていたとされる北イタリア・フィエンメ渓谷で伐採されるかなり色の白いスプルースを使ったギターを出品していました。指板とブリッジの赤い木材はフェルナンブコと言ってバイオリンの弓に使われる材だそうです。サイドバックがメイプルであることからバイオリンを意識したモデルなのかなと思いましたが、ヨットをイメージしたんだとか。ヨットのマストもフェルナンブコなのです。そのサウンドは藤井さんらしいキラキラとした倍音を含んだサウンドでした。彼のギターはいつも1,2,3弦あたりの倍音が金粉が舞うようにキラキラしていて本当に美しいですね。ロゼッタやバインディング、ネックのヒールなどの凝った細工も彼ならではです。シンカーレッドウッドは見た目の印象とは違ってあたたかくてはっきりした音色です。サイドバックのマホガニーの特色が出ているのかやはり高域の美しいギターでした。ブリッジにスネークウッドというのもスキのないセレクトです。また彼はもう1本、何故か展示台の下に隠し持っていて(?)て彼の作品で初めて知ったカルパチアン・スプルースとマホガニーというベーシックな組み合わせのものだったのですが、これも藤井さんらしい美しい倍音とバランスの良さが素晴らしかったです。今回のギターはどれもインストルメンタルというよりは弾き語りに合わせて作ったので女性シンガーソングライターに使ってほしいということでした。マーチン、ギブソンだけでなくこういう楽器もぜひ一度弾いてみて欲しいですね。


手の混んだロゼッタやセレクトされたトップ材のキルトがとにかく美しい


シンカーレッドウッドは見た目と違ってとてもウォームな音


製作者の藤井圭介さん

二人のブースの間にはOGAWA INLAY CRAFTさんのブースがあって昨年も5人のルシアーによる素晴らしいコンセプト作品が展示されていましたが今年は西 恵介さん藤井圭介さん、そして小川貴之さん3者によるスペシャルコラボレーションモデルが発表されていました。The Day and Night of Morning Gloryと名付けられたこのプロジェクトは西さんと藤井さんがそれぞれ同じ木材の組み合わせで同サイズのギターを製作するというもの(インレイはもちろん小川さん)。同条件でのサウンドを比較するという目的で完成したモデルだそうです。サウンドはばっちり二人の個性が表現されていました。先ほど触れた西さんのカッコよいサウンド、藤井さんの砂金サウンドが出てきて西さんがおっしゃっていた”結局製作家の問題なんですよね”という言葉がより説得力を増しました。数年前にERVIN SOMOGYのトップ材だけが違う3本のギターを使ったCDがありましたがこういう企画は実に興味深いですね。


OGAWA INLAY CRAFT(小川貴之さん)の素晴らしい仕事


OGINO GUITARS(荻野裕嗣さん)



一目見ただけでSOMOGYさんの弟子ということがわかる荻野さんのギター。そのコンテンポラリーな職人魂を引き継ぎつつ、シャープなルックスとは対照的とも言えるウッディなサウンドを意識して製作しています。今回の新作はサイドバックにブラック&ホワイト・エボニーというプレゼンテーション性の高いど派手な材を使ったモデル。エボニーは硬くて重い材なのでサウンドもシャープで反応の良い彼らしいモダンな音でした。低域の重み、中域の厚みも十分。以前彼はサイドをWレイヤーにして剛性を上げたギターを作っていましたが、今は全体が鳴るようにとシングルレイヤーを採用しているということです。その効果は十分に出ていて楽器全体でサウンドするギターに仕上がっていました。ただサイドの強度にはすごくこだわっていて流行りのサイドポートは強度に影響が出るのでやらないとのことでした。師匠の意志を継いだ彼らしいこだわりです。もう1本はすでに販売されている物をオーナーさんから借りてきたというイングルマンスプルース・トップ&ハカランダ・サイドバックのモデル。トップの特性が出ているのか柔らかい音色で弾きこまれている感じの鳴りがしていました。荻野さんは特に若いプレイヤーに人気があるようでお客様がひっきりなし。今回はあまり話ができませんでした。また富山に行かなきゃ(以前仕事で金沢に行ったときに富山の工房に寄らしてもらったことがあるのです)。回転ずしでも十分おいしい素敵な富山でじっくり話したい。


製作者の荻野祐嗣さん


こだわりのマテリアル


Ryosuke Kobayashi Guitars(小林良輔さん)


Sergei de Jongeのお弟子さんということで帰国してすぐのころから注目していた小林さん。出会った頃はSOMOGYとSergeiを合わせた素晴らしいギターを作っていました(こちらの勝手な見立て)。ここ数年はガットも含めて様々なギターを製作しいるようです。昨年のフェスに出品されていた”Yanase Cedar Project”は高知県魚梁瀬杉を使った超個性的なモデルでコンセプトの壮大さと施工のち密さに目と耳とハートを持っていかれた人が少なくなかったと思います。今回もグラナディロを使った個性的なモデルを披露してくれました。これがまた細部まで手の入ったこだわりの逸品。なにしろこの2台の制作過程をみたアメリカにある世界最大の楽器美術館、MIM(Musical Instrumet Museum)のキュレーター(学芸員)の方がオーダーを前提に工房に視察にきたそうですから。彼の作品がアメリカの博物館に並ぶ日は目の前なのかもしれません。ワクワクします。
もう一台はRSというOMをもう少し丸くして胴を厚くしたモデル。ノンカッタウエイ専用シェイプということでカッタウェイが苦手な俺向きのモデル苦笑。ジャーマンスプルース・トップ、ハカランダ・サイドバックのオーセンティックなマテリアルは楽器屋さんのオーダーらしい。なんとも芯の太くパンチのきいたサウンド。プレーン弦のギラッとした感じはヨーロッパ系のトップ材の良いとことが出ているのか個性的でとても良いと思いました。端正なルックスもしまった感じでクールビューティー。後からサイドはホールライニングという構造をとっていることを知りました。これはラミネート構造に近いのですが発想が違うようです。詳しくはリンクをご覧になってください。シンプルに見えてここかしこにこだわりが見られる凝ったギターでした。



Echizen Guitars
(越前良平さん)



小林さんと同じくSeregi de Jongeのお弟子さんで早くからその精巧な作業ぶりで自分を驚かせた越前さん。ここ数年、ますますその技術はもとよりサウンドに磨きがかかってきたと感じています。今回はガットとスティール弦の2本を出品。個人のオーダー品でペアでデザインを合わせてあります。今回は主にガットを弾いてみたのですがこれが素晴らしい出来でした。とにかく反応が早く太くて柔らかな音がパシパシ前に出てきます。弾いていてものすごく気持ちがいい。エレベーテッド・フィンガーボードなどの細かいこだわりや厳選されたマテリアルも効いているのでしょうが”これからはもっと緩く作ろうと思います”という自然体が楽器の持つポテンシャルを引き出しているのかなと思いました。欧米と日本の製作家の作品を比べると日本の楽器は端正だけれどサウンドが小さくまとまっている感じがしていました。なぜだろう?といつも思っていましたが日本人の几帳面さやキメの細かさがギターという木工品の楽器としての鳴りを固くしてしまっているのかなと最近思っています。楽器が鳴るというのは構造物としての堅牢さや緻密さでは測れない絶妙なバランスがあるのかもしれません。だからといって彼の作品が緩いかと言われればその細かく丁寧で神経の行き届いた仕事ぶりには感心するばかりなのですが。彼に”インディアンロースウッドのサイドバックに合わせるのはシトカスプルースとジャーマンスプルースだとどう違うかな?と聞くと”シトカとインディアンは王道の組み合わせですね”というありきたりの答えしか帰ってきません。芯が太いのはどっちかな?と聞けば”ベアクローがいいです”と木で鼻をくくったような返事。これは別に彼がそっけないというのではなく”楽器は結局できてみないとわからない”ということを基準に考えている結果だと思います。僕もそこに賛同します。だから個人的にカスタムオーダーに興味が無いのです。狙ってできるものじゃないところが木工の、楽器の面白さだと思います。


製作者の越前良平さん


今回は大変混雑していたのであまりゆっくり話し込むというわけには行きませんでしたが、ここ数年、ベテランから若手まですごくワクワクする作品を生み出してきているなと感じました。大御所のWater Road(増田さん)さん、エム・シオザキ弦楽器工房(塩崎さん)さん、杉田健司さんはもちろん、その他にもとても興味深い作品が並んでいました。今回は海外からもSomogyさんのお弟子さんの人気ルシアー・Beauregard GuitarsのMario Beauregardさんも参加していましたが、日本人の作品はひけをとっていなかったと思います。マニアックだけれど実に楽しいイベントなので是非足をお運びください。開場は仕切りもないのでしっかりと音を確かめるのは難しいのですが(一応試奏ブースもあります)、感じはわかるし製作者が何を考えているのかを知るのは貴重な体験になると思います。百聞は一見にしかず!!マーチンばかりがギターじゃない!!あとウクレレがたくさんあります。



工具もあります。素人には何がなんだかわかりませんけれどちょっと惹かれます。



木材もあります。以前は音響の反射用に買っていきましたがエボニーなどは固くて加工が大変です。


いつもお世話になっている小売店のBlue-Gさんも出店していました。店長の三上さんがチューニングしているPRE-WAR Guitarsは二人の製作家、Wes LambeとBen Maschalが作るヴィンテージマーチンをレリックを入れて再現した今話題のギター。マーチンをお探しの方は一度弾いてみて欲しい楽器です。


”カポのロールスロイス”と言われるElliottカポ。高価ですが凄く良いです。欲しい!!



変わった楽器もありました。”SHAMIKO"。5分で弾けるのが良いのか悪いのか。



会場はすみだ産業会館なので江戸切子なんかも展示してあります。美しい。


錦糸町といえば魚寅。マグロとタコのぶつ切りの量り売りが有名でいつも行列。場外馬券場があったりJAZZフェスがあったり新日本フィルハーモニックの本拠地すみだトリフォニーがあったりと、個性的な街・錦糸町。

TOKYOハンドクラフトギターフェス2018



コメント (1)

楽器はゆっくり作って欲しい?

2018-05-09 19:21:44 | ギター
先日アコギを調整に出しました。調整というか修理ですね。もともとセンタシーム(トップの板の真ん中の合わせ目)が開いてきてしまったものをびっくり価格で手に入れた個体なので購入後のこういう事態は予想していました。購入したのは3年前。状況は1年ほど前から起きていて一度リペアマンに預けたら”手放したら?”と素敵なアドバイスを頂いた苦笑。実際何度か手放すことを考えたけれど、とにかく音がいい。先日も知人との呑み会に持っていき弾き始めたら止まらない。音が良いって気持ちがいい!!その時は湿度の関係か不都合は出なかったんだけれど先日弾いたら悪い方向に動いていた。もうダメかな~とも思うんだけど弾くとやっぱり音がいい。そこで以前から相談していた購入店のリペアマンのところに持っていった。さてどうなるのか。とても気になるところだ。リペアってすごく良くなってくるときもあるけれど
不具合の解消とともに音が好みでない方向に変わってしまうこともある。仕上がりに感動したこともあればそれを機に手放してしまったことも一回ではない。ドキドキだ。

さて、本題はここから。何故そうなってしまったかということ。最初の購入のときの話だとその時期の工房の湿度が高くて木が水分を含んでいる状態で作ってしまったのではないかという話だった。同じ製作者の作品を持っていてそちらに不具合は出ていないのでその時期はたまたま部屋の湿度の設定が高かったのか?彼の作品、音はいいのだけれど仕上がりにバラつきは感じられるのでそういうこともママあるかなと思う。それと気になるのは製作本数だ。個人製作家としては多い部類に入るのではないだろうか。多いということは必然的に作るスピードが上がる。個人製作家でも手の早い人(日本語だとあまり良い表現ではないね)というのがいるらしい。かのギター製作家族のSergei家も親兄弟で速度にはそうとう差があるらしかった。兄ちゃんが弟に”なんであんなに時間がかかるんだろう?と言っていたのを聴いたことがある。でもそこは生きた木材だからある程度時間を掛けることも大切なのではないかと想像する。もちろん、板は充分シーズニング(乾燥)させてあるのだろうから、ちゃっちゃと塗装まで持っていってしまったほうが良いという説もあるだろうけれど切ったり削ったりサンディングしたりする過程で水分を吸ったり放出したりするだろうから理想的な環境にその都度馴染ませながら作っていったほうが安定したものが出来るのではないかなという気もする。だから数を作るときは複数をまとめて作れればよいのだろうけれど、そうすると器具が複数必要になるしスペースも必要になるから個人製作家の規模では難しいだろうね。

ギターって購入してからも動くし、特にできたてホヤホヤは安定しない。しばらくすると落ち着くもの、多少フラフラしているもの、そのまま安定しないで中古市場を彷徨うものもある。何十年も生き残ったヴィンテージギターなどは自分の印象からするとビシッと安定している。自分は運良く安定したものしか保有してこなかったけれど、今回は自ら不安定なギターを抱え込んだとも言える。さて、どうなるのか。あの素晴らしい音色のギターはこのまま自分の手元で良い音で鳴り続けてくれるだろうか。それとも・・・・。
コメント

魅惑のアーチトップ

2018-03-10 00:12:55 | ギター
先日ふらりと楽器屋に入ったら普通ではなかなか出会えないなんとも美しいアーチトップと遭遇した。まずはダキスト( D'Aquist)。もちろんライセンスモノではなくJames D'Aquistさんが作った70年代の本物。横に並ぶは50年代のエピフォン(Epiphone Broadway)。ノンカッタウェイの18インチ。ギブソンに買収される前のオリジナルEpiphoneは実に美しい!!そしてギブソンのL-5 30's。ヘッドのフラワーポット・インレイも麗しいノンカッタウェイ。

まずは見た目にやられる。弾いてみてもびっくり!ゴツンガツンとしながらもその艶っぽいサウンドにすっかり魅了されました。

ダキストは一番新しいだけあってワイドレンジで良く鳴る印象。オールラウンドに使える、というのは語弊があるのでしょうけれどデザインも相まってとにかくモダンなサウンドです。音量もカッタウェイとは思えないくらい大きい。木製のテールピースやピックガードなど高い技術力が垣間見えます。木の部品が多いせいかサウンドもウッディな温かいトーンが含まれます。
   

エピフォンにはすっかり魅了されてしまいました。これぞアーチトップという腰の強い音でありながら楽器自体は鳴りまくっている。鳴りまくっているのですがダキストのようにワイドレンジではなくある程度狭まった中で下(低音)から上(高音)まで美味しいところだけしっかり音が飛び出してくる感じ。単弦にコクがあります。歯切れ良く刻めるのに音が太い!個人的にこれ大好き。連れて帰りたい笑。
   

ギブソンL-5は今までの2台とは趣が違いました。30年代のヴィンテージらしくトップが薄くて乾燥している鳴りです。とにかく全体が軽い。と言っても決して芯が細いと言うことはないのですが少しフラットトップに近い感触があります。いわゆる”味のあるサウンド”なのですがこれはどう表現したら良いだろう。枯れているのに芯には艶が残っている感じ。エピフォンやダキストに比べると一聴すると線が細く聴こえてしまうのですが録音したりするとしっかり聴こえてくる音。良いギターだなあ。
 

しかもこの3本、どれもばりばりミントな状態なのです。”でもさ、何に使うのこれ?”という意見もありますね。特にノンピックアップのエピフォンは作られた頃はビッグバンドの中で生音でザッ ザッ ザッと刻まれていたのでしょう。孤軍奮闘多勢に無勢。今のPAシステムの中においては扱いにくいだけとも言える18インチの巨大なボディ。でも音色といい見た目といい僕はこの大きなヴィンテージ・エピフォンに大いに惹かれてしまいました。

なかなか出会うことのないこの美しい3本のアーチトップ。可能であれば1本手元に置きたいところですが流石に敷居も高いです(特にダキスト)。自分では無理でも素敵なプレイヤーの手に渡り、ひょんな事でライブやレコーディングで出会って素晴らしいサウンド、そして美しいルックスで魅了してくれればなんとも素敵なことだろう。そんな再会を期待してやみません。身近な誰か、買って笑。
コメント

Vintage Gibson Flat Top

2017-04-15 00:43:54 | ギター
ヴィンテージ・ギブソン。こいつは自分にとってはなかなか手ごわい。

高校生のころ、Gibsonのダブだったかハミングバードを使っていたシンガーソングライターが雑誌のインタビューで「自分のギブソンは美味しい時期を過ぎちゃったみたい」という記事を読んで驚いた。死んじゃうのかよ、ギブソンはと。

20代前半にTV-CMでみたライ・クーダーはピックガードが剥がれた見慣れぬギブソンを使っていた。どうやらロイ・スメックという30年代に作られた元々はスライド用の楽器らしい。それから数年後突然復刻され原宿は竹下通り入り口の楽器屋で遭遇。羨望の眼差しを送った。

30代前半に池袋のI楽器でオリジナル ロイ・スメックに遭遇。弾いたらライ・クーダーの音がしたので感涙。購入を迷うが、ハイポジションにビビリ。”今すぐ買ったらメンテして同じ値段。帰って明日以降で買ったらメンテの値段10万上乗せ!”と言われしばしウジウジしてから購入。しかし、、、、リペア(調整)の影響で音が変わっていてちょーがっかり。てか失望。

同じ頃、トラベルギターが欲しいと考えていた所に安価で売りに出ていたブラックのGibson L-0 30'sを御茶ノ水K楽器で発見。ヘッドのロゴが塗りつぶしてあったりあまりにも安っぽいピックガードがついていたりとなかなかのもの。本物か怪しいくらいの状態だったけれど楽しそうな楽器だったので購入。やたらやかましい音で鳴った。ブレイシングが剥がれたりしたけれどしばし愛用。後に購入価格の倍以上で下取られていくという孝行ギターとなる。

40代、都内某所で500万円の50's J-200を弾かせていただく。ピカピカのそれは厚い塗装のせいかまったく鳴らなかった。その数年後、アリス・モーリスの大元、エヴァリー・ブラザースモデルのオリジナルを弾かせていただく。かっこよすぎ。音はピックガードの音がした。

ストロークでガツンと中域に固まったギブソン・サウンドがあると良いなと考えていた所、ヴィンテージマーチン・レプリカ製作で人気のジュリアス・ボージャスさんのBarndanceというJ-35的モデルの中古品に遭遇。チープすぎず、ワイドレンジになりすぎないこんな素敵なギブソン(本物じゃないけど)は初めて。だが踏ん切りがつかず売れていくのを指を咥えてみていた。そうそう、2002年頃本人が直す時間がなくて他のリペアマンが作ったピラミッドブリッジをつけたHayrideというモデルも素晴らしかった。これはJ-185的なモデル。購入したかったけど経済的に涙。

そして今回、あまりにも美しいオリジナルJ-35に遭遇。あまりにも渋い淡いサンバースト。サウンドは枯れっカレ・ヴィンテージサウンドでトップの薄さは若干感じでしまうもののまだまだ賞味期限は終わっていない。こんな素敵なギブソン、カッチョい-シンガーソングラターにぜひ弾いてほしいです。



*写真のきれいなblogを始めたので写真は主にそちらにアップします。今後はOYAMA CROSSROAD BLUES@g.o.a.t.もよろしくお願いします。
コメント

腕をあげたな越前良平!!ECHIZEN GUITARの魅力

2017-04-13 09:50:29 | ギター
彼の美意識が貫かれたそれはまるで一流の寿司屋で食べる寿司のようだ。緊張と喜びが同居する。

先日御茶ノ水Blue-Gさんから「Echizen Guitar」のプレゼンテーションモデルが出来上がりました!という連絡を頂いたので早速弾きに行った。結論から言うと素晴らしかった。腕を上げたなー!と叫んでしまった。

プレゼンテーションモデルって基本的にはてんこ盛りだ。高級マテリアルと手間をふんだんにかけお化粧を散々施したビカビカなモデル。越前良平くんの作った今回のプレゼンテーションもインレイや高価なロジャーズのペグ、師匠のSergeiさんがたまに引っ張り出してくる”ブラックハカランダ”のサイド・バックなど豪華で高価な仕様だ(インレイはOGAWA INLAY CRAFT小川貴之さんの素晴らしい仕事だ)。ただし、越前さんの作るそれは彼の凛とした美意識が貫かれていて、派手一辺倒ではない。プレゼンテーション・モデルとしてはシックで落ち着いた方であろう。

日本人が好きなのは”地味な見た目でモンスターサウンド”。これは自分が某楽器店で耳にしたお客さんの井戸端会議である。ギラギラな装飾を施しいたこれ見よがしなD-45的なモデルよりD-28みたいなどこにでもあるような見た目のもので弾いたら凄い音がするってのがみんな好きなんだよ、とのこと。この話、聞いたのは15年前くらいだと思うけど妙に納得した。でも越前さんのギターはそういうもったいぶったものでもない。

彼の作品が最初のリリース作品から素晴らしい完成度を持っていることは先に話したとおり。そこはすでに師匠を超えているかもしれない。であれば音はどうか。”こっちが師匠の楽器なんですよ”、越前さんの噂を聞きつけて弾きに来たお客さんに丁寧な説明をする店員さん。早速弾くお客さん。”ああ、予算があれば・・・。やっぱり師匠は違いますね”。オレもそう思った。彼が作品をリリースし始めた頃は音に関してはまだ師匠に及んでいなかったし、彼もそれを自覚していた。Sergeiさんは全てを把握して作っている、と言っていた。4年ほど前、2013年頃の話だ。2016年、久しぶりに東京ハンドクラフトギターフェスに行った。そこで衝撃を受けたのは以前話したOGINO GUITAR。でもその並びにあって行列で弾くことはおろか見ることすらままならなかった越前さんの新作ギターをその後お店で弾かせていただいた。そこで以前と違う感想を持った。以前のすべてがカチッとした感じから開放されていた。見た目はまったく変わっていないのだけれど、緻密な感じが少し緩くなった、と言ったらネガティブな捉え方をされてしまうかもしれないけれど。許容範囲が大きくなったというか。サウンドも随分と開放的になった。変わったな、と思った。

そして今回のPresentationモデル。まず持った瞬間が違う。軽くなった。これは使っている木材が固くて、薄く仕上げてあるという必然から来るのかもしれない。ただ、物理的い軽いということもあるけれどなんだか軽やかになった。弾くとまずその素早い反応に嬉しくなる。そして各弦の音色も太くゴツンとしながらもギラッとした倍音もある魅力的な音で少ない音数で十分満足できる楽器だ。よだれ出そうになった(汚してはいかんよ)。サウンドに開放感があってどこまでも広がっていきそうな感じだ。できたての新鮮さと共に枯れた味わいがあるのはサイドバックのオールドハカランダのサウンドを充分に引き出せているからだろうか。音の深みはトップ材のクオリティーの高さとそれを引き出す技術か。今回のトップ材はベアクロー・ムーン・ジャーマンスプルース。ムーンスプルースはここ数年取り沙汰されている材で、月齢(季節と月の満ち欠け)に応じてその伐採日を決め、伐採した材のことだそう。 燃えにくい、カビや腐食に強い、害虫に強い、 割れ・狂いが生じにくい→よって長く使えるいいとこだらけの素晴らしい材らしい。神秘的で少々眉唾な感もあるが、これは建材の世界ではかなり古くから言われてきたことだそうだ(詳しくはデジマートマガジン 木材〜トーンウッドの知られざる世界 第3回 闇夜に吠えるスプルース 文:森 芳(FINEWOOD)をご覧ください)。嘘みたいな話ですが、実際音が良いと皆さん口にする(かの巨匠アービン・ソモジ氏も言っておられる)。内緒にしたくなるくらい素敵な情報じゃないか(笑)。

越前さんのギターは初めて見た時から完成度が異常に高く、驚かされてきました。そして今回あらたにまた驚かされました。これまでは彼の技術力の高さに目が惹きつけられてきました。それが今回は音に惹きつけられました。抱えたときの感触に惹きつけられました。そうなると他のことは正直どうでも良くなってしまう自分ではありますが、もちろん技術力の高い仕事はこれまで通り。シックなブラックマザーオブパールでハカランダ・バインディングを装飾、ロゼッタにはさらに吉野杉も使いメイド・イン・ジャパン、アイデンティティーをさり気なくアピール。このあたりの繊細さは心憎いばかり。でもやはり楽器なので音なのです。すでに人気製作家である彼にこんなことを言うのもなんですが、一皮剥けた、腕を上げたと言いたいし、大化け寸前と言えるかもしれません。それほどに今回のモデルには魅力が詰まっていましたね。まさに”Presentationモデル”でありました。

今回あらためて越前さんのポテンシャルを実感して、もっとトップの面積の大きなギターを作ってみてくれないかなとか、自分が所有できるなら演奏したくなる楽曲はこれかな?とか色々妄想も膨らみました。とはいえ、今回のモデルが突出していて実は他は、、、ということも楽器ではママあることです。そこは見守っていかなくてはなりませんが、ただこれからの越前良平、Echizen Guitarからはますます目が離せなくなりました。



*写真のきれいなblogを始めたので写真は主にそちらにアップします。今後はOYAMA CROSSROAD BLUES@g.o.a.t.もよろしくお願いします。
コメント

日本人製作家(ルシアー)のポテンシャルにしびれる(最終回)

2016-11-06 22:28:56 | ギター
そんな彼(荻野裕嗣さん)が海外のギターショー(BARBARA ACOUSTIC INSTRUMENT CELEBRATION)の帰りに同じ師匠のもとで修行したルシアー・藤井圭介さんとともにスタジオに寄ってくれました。ふたりとも今回出品された作品を持って!!荻野さんのギターはトップがイングルマン・スプルース、サイドバックがフレームメイプル、デザインはスモールジャンボのノンカッタウエイ仕様です。藤井さんは12フレット接合のOO(ダブルオー)サイズでトップがカルパチアン・スプルース(Carpathian spruce)、サイドバックがキルテッドメイプル。木目は違いますがふたりとも奇しくも同じサイドバック材です。まずは荻野君のギターから弾いてみます。以前、彼と話をしたときに”ノンカッタウエイの方が良い!”と意気投合していたのでワクワクしながじゃらん!相変わらずスパッと反応良く音が飛び出してきます。低音も豊か。でも、いつものズゴン!という感じではなく、中域高域と同じ味わいでスッとでてくる感じです。”今回サイドはダブルレイヤーじゃないんです”。なるほど、Ervin Somogyさんの系列をくむルシアーノ特徴のひとつであるダブルレイヤーではなかったのですね。そしてノンカッタウエイはやはり落ち着きます。音量もそうだし、よりバランス良く自然にサウンドホールから音が出てくる感じがします。喪失感がない。メイプルらしい粘りと腰のあるサウンドで弾いていると”いい音”と自然と言葉が出てしまいます。重量もずいぶん軽く仕上がっています。シングルレイヤーのOGINO GUITARはバランスの良いスポーツカーという感じです。速くバランスが良く素直で運転しやすい。そしてパワーも味わいもあって、ゆっくり流してもタイヤが鳴るほど飛ばしても楽しい。

次は待望のFUJII Guitarを弾かせていただきました。藤井さんのことは荻野さんやお店の方から木工技術の高い細部まで神経の行き届いたギターを作る方だと聞いていたのでとても興味がありました。 ただWebで探しても常にSold Out、”幻のギター”なのです。それが突然目の前に現れたわけすから、ちょっといい感じじゃないですか、この状況は(笑)。小ぶりな12FOO(ダルブオー)シェイプのギターは抱えた瞬間にしっかりと作られていることが分かります。それと素朴な味わいがあります。いかにも手で工作したといった感じとでも言いましょうか、そんな感触(タッチ)です。ヘッドの加工やロゼッタの組木細工などに木工技術へのこだわりがひしひしと感じられます。弾いてみるとシュワーキラキラキラとまるで部屋中に砂金が舞ったような素敵なサウンドが広がりました。この感じは今まで聴いたことがありません。”うっひゃー、はじめてはじめて”と俺のハートが大騒ぎです。低音や中低域はボディサイズから想像されるまとまりの良いサウンド、でも中身はムチッとつまっていて、それでいてちょっとかわいく優しいサウンドです。女性シンガーのバックでこのギターが鳴っていたら瞬間イッてしまいます、トロケてしまいます。いやー、藤井さんにもやられてしまいました。藤井さんのギターには制作にかける彼のエネルギーが凄く入っているように感じました。1本作るのに相当な体力・精神力を使うのではないでしょうか。寡黙な藤井さんでしたが、エネルギーのすべてを制作に注いでいるからかもしれません。

こうやってまったく個性の違うルシアーの最新作品を弾く機会に恵まれ、素敵な時間になりました。その日作業するためスタジオにいた赤工隆(レコーディング・エンジニア)にとっても有意義な時間だったでしょう。限られた時間の中で精一杯話をしました。彼らも僕が持ってきたMerrill C-28(アディロンダック・スプルース&ココボロ)とKevin Ryan Nightingale(シダー&インディアン・ローズウッド )を弾きながら色々と思うところを伝えてくれました。それにしても荻野くんのオープン・マインドな態度には頭が下がります。自分のお客さんを同業者に紹介してしまうわけですからなかなか出来る行為ではありません。そんな荻野さんには是非、自分の理想に向けて進んでいって欲しいです。藤井さんの14Fの作品も是非弾いて感じてみたいです。また彼らの他にも先に名前を出した越前亮平さんや神田丈二さんや僕がまだ弾いたことはないけれど素晴らしい技術と熱い情熱、高い理想を持った日本人ルシアーがここ数年でぞくぞくと作品をリリースしています。海外ルシアーのデザインセンスや付加価値のつけ方、音楽性の高さは認めなくてはいけないところですが、日本人ルシアーたちももう随分良いところまで来ています。すでに秀でている部分もたくさんありますし、ポテンシャルは海外ルシアー以上だと思います。彼らのギターに出会うことがあったら臆することなく弾いてほしいです。きっと新しい発見や気づきがあります。イタリアに行ったときに、日本のイタリア料理のほうが美味しいと思いました。それと同じように西洋楽器のギターも日本人ルシアーの作品が一番美味しくなる日がやって来たのかもしれません。頼もしいかぎりで今後に期待せずにはいられません。

*写真のきれいなblogを始めたので写真は主にそちらにアップします。今後はOYAMA CROSSROAD BLUES@g.o.a.t.もよろしくお願いします。
コメント

日本人製作家(ルシアー)のポテンシャルにしびれる(中編)

2016-10-29 12:53:02 | ギター
東京ハンドクラフトギターフェスで知り合った富山県の製作家の荻野さんとはその後FBでやり取りをしていましたが、今年の7月末、綾戸智恵の仕事(モントレージャズフェスティバルイン能登)で金沢に行くことになったおりに、高岡市の工房を訪ねることができました。ちょうど新作が出来上がるということでタイミングもバッチリです。しかもそれは僕の好きなトーンウッド、ジャーマン・スプルースとココボロを使ったものだということで期待も自然と膨らみます。彼の工房は金沢から新幹線でひと駅の新高岡にあります。話には聞いていましたが工房は1人でやっているとは思えないほどの大きな建物でした。高岡市創業者支援センターの支援でその場所を借りているとのことです。中に入ると大型の工作機械と一緒に漆職人の弟さんから置く場所がないということで預かっている大きな木造彫刻などが置いてあります。その中に作業ブースを別個にたてていました。この容積だと空調代もばかにならないので作業場をたてたそうです。作業ブースの中には整然と並んだ工作器具、木材、スプレーブースがあります。

さっそく前の晩に完成したばかりのという ジャーマン・スプルース&ココボロのギターを弾かせていただきました。これはもうどっしりもりもりと抱えきれないくらいの低音とツヤツヤでピカピカの中域、全体にコーーーーンという深淵で透明なリバーブ感が感じられるサウンドを持った素晴らしいギターでした。そしてあいかわらず反応が速い。どっしり重量感と反応の速さはダブルレイヤーのサイドがもたらす彼のギターの特徴のひとつなのかもしれません。工房を説明してもらい、ギターをさんざん弾かせていただいてから近くの回転寿司屋で昼飯(回転寿司でも高岡(富山)の寿司はネタが新鮮でうまい!そして安い!!因みにそれでも新幹線が通るようになって魚が高くなったと地元の方がぼやいていました。)、その後、コメダ珈琲でお茶をしながらギター談義、ギター業界談義から始まり将来や私生活に至るまで様々な会話の花を咲かせました。彼は一人のルシアー(製作家)として自分の個性を世界中に表現したい、確立させてたいという野心と、そこで得たノウハウを注入し複数の制作者による高品質なギターを量産して価格で販売するろいう野心を同時に持ち合わせていました。それもあり、とやま起業未来塾という自治体が主催する勉強会に通い、支援センターにビジネスプランを持ち込み理解と支援を得て現在の工房を設立して量産を視野に入れて大きな工作機械を用意するなどしているそうです。いわゆる”職人”というカテゴリーに収まらないルシアーです。

実に凛としたたたずまいの新作。いい音でした。
周波数データを元にした音作りや起業家としての振る舞いなどは従来の伝統的な製作家・職人の価値観とは考えを異にします。僕も周波数の話を聞いた時は”今時はそんなか、浪漫がないなあ”と思いました。トップ板をタッピング(叩く)してそれを耳で聞いて感性と経験値と熟練の磨かれた技術で作っていく、そんな作業工程と職人的な仕事は、崇高で求道者的なイメージがあり惹かれます。 荻野くんの話を聞いているとホリエモンの”修行なんかしなくても寿司学校に行けばすぐに寿司は握れる”とか”お金なんか無ければ貯めるとか借りるとかじゃなくて出資者を集めれば良いんだ”という考え方を思い出します。好き嫌いが出る考え方です。ただ、方法やスタイルがどうであれ、彼のギターは音が良かった。重要なのはそこです。彼の考え方は従来のギター製作家の枠に当てはまらないと思うのですが、彼の作品も僕が今まで弾いてきた楽器の枠を超えていくような可能性を感じました。もちろん、未来のことはわかりませんけれど。なにしろ彼は今まで19本しか作っていないですから(2016年10月6日現在)。


*写真のきれいなblogを始めたので写真は主にそちらにアップします。今後はOYAMA CROSSROAD BLUES@g.o.a.t.もよろしくお願いします。
コメント

日本人製作家(ルシアー)のポテンシャルにしびれる(前編)

2016-10-21 17:29:34 | ギター
先日、2人のアコースティックギターの製作家(ルシアー)がスタジオに尋ねてきてくれました。荻野裕嗣さんと藤井圭介さん。30代の彼らは杉田健二さんという共通の師匠のもとで学び、独立して同じ富山県に工房を構え素晴らしいギターを制作しています。彼らが作るギターは一般に想像されるマーチンやギブソンといった工場製の大量生産されているものとは違う一品物。それだけに値段は決して安くないけれどデザイン、サウンド、マテリアル、どこをとっても彼らの趣向や楽器、音楽への思いが詰まった個性的なものです。海外では荻野さんや藤井さんも修行したErvin SomogyさんやJames Taylorが使っていることで有名なJames Olsonさん、美しいブラジリアンローズウッドのギターを制作するJeff Traugottさん、Pat Methenyが使用していることで知られるカナダのLinda Manzerさんなどがとても高い評価と人気を得ています。彼ら彼女らは数多くのバックオーダーを抱えて新規の入手は非常に困難、価格もとても高価です。二人もそんな世界の人気ルシアーと同じ土俵で勝負するべく、アメリカ・サンタバーバラ州で開催されたTHE SANTA BARBARA ACOUSTIC INSTRUMENT CELEBRATIONというギターショーに出品して来たそうです。今年のサンタバーバラでのショーには彼ら以外に数名の日本人ルシアーが参加しています。世界で勝負してやろうという日本人が増えているのは頼もしいですね。その帰りにわざわざ時間を割いて新宿・曙橋のStudio FAVREに立ち寄ってくれました。

荻野さんとはTOKYOハンドクラフトギターフェス2016(@東京・錦糸町・すみだ産業会館)で出会いました。会場の入口近くのブースで”オレを見ろ!”オーラをビンビンに出しているギター、それが初めて見るOGINO GUITARでした。


横には吉田丈二さんのJoji Yoshida Guitarsと越前良平さんのEchizen Guitarsというともにカナダの名匠Sergei de Jongeさんのもとで学んだ二人の実力派が並んでいましたが、引けを取らない存在感がありました。ギターはSmall Jumboと言われるシェイプでジャーマン・スプルース&マートルウッド(トップ材&サイド・バック材)、シトカ・スプルース&パデューク、イングルマン・スプルース&マッカーサー・エボニーの三種類が展示してありました。



最初にすでに買い手がついているというジャーマン&マートルウッドを弾いてみます。 TOKYOハンドクラフトギターフェスの会場は普通の展示場なので会場中は常にわんわんと騒がしく、音色を聞いたりするのにはまったく適さないのですが、そんな中でもオレの心を鷲掴みにするような素晴らしい音を響かせました。ズシッとした量感豊かな低音、ショワーッと宇宙まで届きそうな広がりのあるプレーン弦、ギュインギュインとドライブ感を生み出す中域などスケール∞で凄い可能性を感じさせるギターでした。反応がとても早くずっしりとした重厚感を持ちながら光のようなスピード感を併せ持ったまるでフェラーリとブルトーザーを合わせたような印象です。初めて見る迫力フィギュアードのマートルウッドは米国より帰国する際になんと師匠のSomogyさんから譲り受けたオレゴン産のそれとのこと。曰く「Somogyさんはオーダーをたくさん抱えているんですが、その殆どがハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)のため、どうやら自分が生涯で使い切れない木材がたくさんある事に気がついた」ので分けてくれたとのこと。確かにギター製作家は木材フェチ(失礼!)が少なくなさそうだから素敵な木目、素敵な香り、可能性のあるNEWウッドなどに出会ったら思わず買ってしまうことは、想像に難くありません。一方で巨匠にオーダーするクライアントはある程度の出費を覚悟した方たちなので、鉄弦ギターの頂点木材「ハカランダ」を選ぶ方が殆どと聞いたことがあります。バックオーダーを抱えた人気ルシアーたちはなかなか自分の興味だけで材を選んで作品を作る時間は無いのかもしれないですね。

さておき荻野さんのマートルウッド・ギターはゴワンゴワンと騒音・轟音鳴り響く会場でチョロリと弾いても感性に訴えかけてくるギターでした。”うー、これはなかなか素晴らしいですねぇ、こんな環境で言うのも失礼な話かもしれないけれど”と言うと”会場の隅に試奏スペースがあるのでそこで弾きませんか?”とのお言葉。荻野さんは注目のルシアーで訪ねてくる人も多かったのですが、その時はワザワザ試奏ブースまで案内してくれて試奏につき合ってくれました(そんな気さくさも彼の魅力です)。そこでどんなギターを作りたいの?とか、どんな作業場なの?とかこいう音がしていると思うけど作っている本人はどう感じる?とか様々な会話をしました。彼はトップを叩いた時の音の周波数をiPhoneのアナライザーアプリで管理していてそれを参考に音作りをしているところに特徴があるのですが、そんなこともその時に教えてくれました。物凄く真摯でオープンなんだけれど同時に”Somogyさんのところにいた時のデータもすべてとってあるので自分が在籍していた時代のSomogy Soundは再現できます”とか”販売価格についても日本人製作家が海外の製作家の半額くらいで取り扱われているいる現状に不満と不安を覚えていて、同じくらいの価格設定で頑張りたい”などしっかりとした自負・自信・プランも持ち合わせていてとても頼もしい製作家だなと思いました。結局その後、3本すべてのギターを弾かせていただき、忙しい中たくさんの話をしました。翌日はどうしても静かな場所で音を確かめたくなって仕事の合間をぬって、出品後に彼がギターを納品していった楽器店に行き試奏しました。お店の方が言うようにまだまだな点もあるのでしょうが、彼がこれからどんなギターを作っていくのか興味を覚えずにはいられませんでした。(後編に続く)
コメント

Jason Kostal guitars

2016-07-11 03:09:15 | ギター
先日、今一番勢いのあるルシアーと言われているJason Kostal を弾くことが出来ました。まだ値段が決まっていませんでしたが250万くらいだそうです(その後235万で売りに出ています)。2016年製の新古品です。新古品=新しい中古、ようは中古です。中古で250マンえん!!あれあれ新品価格ってどんなだったっけと彼のサイトを見るとベースプライスは13,500ドルとなっています。今ならロンドンショックで135マンえん。でも今回の個体はオプションが乗っかっています。トップのヨーロピアンスプルースは+250ドル。サイドバックのブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)は+6,500ドル(!!)。カッタウエイ加工で+600ドル。これだけで7,350ドルのオーバーチャージです。でもそれだと210マンくらいにしかならない。今はオーダーを取っていない、手に入れることが難しい幻のギター、夢のギターなので若干のプレミアムがのているのですね。まるでフェラーリみたいです。まあ、いいじゃないですか、それだけ良ければ、価格に見合う価値があれば良いんです。よく”クルマが買えちゃう値段”とか言うけれども250マンじゃプリウスの一番安い奴しか買えないですからね。アコギは250マンで夢と幻が買えちゃうんです。しかもあまり値下がりしません。安い安い(大汗)。さあ、弾いてみましょう!

まず最初に感じるのは大きさです。サイズ的にはマーチンのドレッドノートをひと回り小さくした、いわゆる彼の師匠であるマエストロ・Eirvin Somogy氏が考案したサイズ”Modified D"なので大きいことはないはずなんですけれど、大ぶりな塊を抱いている印象がします。ヘッドが大きめだから?ヒールが下駄の歯のように(失礼!)ガッチリしているからか? そして次に感じるのは重量。ずっしりと重いです。これはサイドがダブルレイヤーになっていることが原因なのですが、ハカランダという比重の大きい材であることも重量の増加に影響しているでしょう。立って弾くのは避けたい楽器です。ゆっくり全体を眺めると随所に作者Jason Kostalさんのこだわりとセンスが感じられます。Stained Glass Rosetteと呼ばれるカラーリングが実に美しいロゼッタ(サウンドホール周りの装飾)、ヘッドの立体的な加工とそれに繋がるブリッジのデザイン。通常エンドピースが付く部分にもその両サイドにうっすらとStained Glass Rosetteと同じ加工をした材でストライプを入れてあります。グッドセンス!!ブレイシングはトップはラティス、バックはラダーとのこと。楽器自体がかなりがっしりしているように感じられるので気が付かないのですが、トップは結構薄くしてあるそうです。

弾いてみるとまず6弦のサウンドが素晴らしい。ドスンとした重厚な低音ですが、低域にいるだけでなく全体を包み込むような倍音が出ていてこれはなんとも美しいサウンドです。6弦が全体を柔らかくまとめてくれています。こういうサウンドにはなかなか出会えないです。よく聞くと5弦も同じトーンです。そして3,4弦はエネルギーを感じるパワフルなサウンド。弾いていると倍音の厚みに時間を忘れてしまいます。1,2弦は落ち着いていてそれでいて沈み込まない絶妙なサウンド・メイキングが施されています。各弦の厚みがすごくて重厚で、いわゆる高級なサウンドです。似ているものがあるとすれば、Somogyさんの弟子(兄弟子にあたります)Mario Beauregardさんのギターとは抱えた印象が似ていると思いました。ただ、トップの厚みやブレイシングなどが違うのでしょうね、鳴り方は違います。その情報量が多くて重厚なサウンドは軽快なプレイには若干トウーマッチな印象もありました。これはきっと”そういう曲やプレイスタルには僕のOMモデルをオーダーしてください!”ということなんでしょうね。雄大なバラードと軽快なラグタイムをKostal Toneで表現しようと思ったら迷わず2本発注です。占めて500マン。それでもポルシェだったら一番廉価なボクスターしか買えない値段ですから、安い安い。。。。でも大丈夫、現在オーダーは受け付けていないのです(何が大丈夫なんだか)。弾いているそばからどんどん鳴りが良くなってきて各弦のバランスも整ってくる感じ。胸が高鳴り興奮し、汗ばみますね(笑)。立ち上がりの速さや豊かな音量、弾いた直後にトップを押さえるとサウンドが相当変化することからやはりトップはそれなりに薄く作ってあるようですが、サイドやネックががっしり作ってあるせいか繊細すぎたり頼りなかったりすることはありませんでした。

ここ数年、個人製作家(ルシアー)が作る素晴らしいアコースティック・ギターがいくつも生まれていると思うのですが、値段は概ね1万ドル以上になってしまっていておいそれとは買えないものになってしまいました。Martinなどの大きなメーカーのものもきちんとした音がするものは個人製作家の作品より高価だったりするし、楽器と工芸品の境目はどこにあるのかと考えてしまいます。ただKostalさんのように彼の美学と研究とが積み重ねられ表現されている楽器は芸術品であり、最新のモダンな楽器であり、それだけの価値が有るのだと思います。体験できたことは非常にラッキーでした。お店の方に感謝します。


なんとも美しいロゼッタ。Stained Glass Rosetteというそうですがガラスではなく木材に着色されているようです。


迫力満点のネックヒール。


立体的な加工が施されたヘッド。


ヘッドに合わせて同じラインでデザイン、加工されたブリッジ。材質はハカランダ


分かりにくいと思いますがおしゃれなラインが2本入っています。殆ど見ない箇所だからこそのこだわりですね。


コメント

MOBILE SUIT GUNDAM THUNDERBOLT ORIGINAL SOUNDTRACK MUSIC : NARUYOSHI KIKUCHI

2016-07-04 01:18:44 | 日々
もう、制作したのは昨年の9月だったので少し前の話になってしまうのですが今月いよいよ”MOBILE SUIT GUNDAM THUNDERBOLT ORIGINAL SOUNDTRACK MUSIC : NARUYOSHI KIKUCHI”という作品が菊地成孔さんのTABOOレーベルから発売されました。アナログ盤も限定生産、劇場限定で発売されるようでとても楽しみにしています。”機動戦士ガンダム”はもう自分などが語るよりも多くの皆さんがご存知な著名な作品なのであります。今回制作に携わるにあたり最新作を読んでみたのですがマジンガーZあたりで止まっている自分にはまったく説明できないくらいの世界的規模かつもしかしたらもう子供では楽しめないくらい、ちょっと前なら”劇画”と言われそうな大人気(おとなげ)な作品です。宇宙戦艦ヤマトにはなんとなく雰囲気が似ていると感じるのですが。

さて、今回はJAZZ SIDEとPOPS SIDEに曲が振られています。THUNDERBOLTに登場する二人の主人公、イオ・フレミングとダリル・ローレンツがそれぞれ”JAZZ好き、POPS好き”で彼らは好きな音楽を聞きながら戦います。原作には曲名付きで彼らが聴いている楽曲が記載されているのです。それもこれも誰もが知っていそうな有名曲です。これを意識しつつ菊地成孔さんが曲を描きおろし演奏・録音し完成させたのが今回の作品です。ですので全編このアニメーションのために書き下ろされた新曲です。しかし、これは原曲にビシっとタイトルが書いてあるわけでそこから離れすぎても読者のイメージが離れてしまうし、近づき過ぎるとリスペクトし過ぎで問題だしと相当な難産だったと思われます。実際、そのあたりのすり合わせをするために作業が中断しかけたことがありました。幸いにして2時間くらい宙に浮いた感じで収まりましたけれどね。

この作品は菊地成孔さんに依頼したというだけでスタッフのセンスと勇気が凄いと僕は思っているのですが、実際にはまず参加メンバーが凄い。まずJAZZ SIDEの大西順子さん。ご一緒するのは初めてだったのでめっちゃ緊張しました。自分的には以前リーダー作を聴いた時に”わ~すげー、このヒトは一筋縄ではいかないなー”と思った大西順子さんです。そしてフリーJAZZというジャンルでご活躍のドラマー服部正嗣さん、菊地さん作品やLiveに参加している永見さん、日本一忙しいスタジオ・ミュージシャンでなんと第一期DCPRGに在籍もしていたと今回はじめて知ったトランペットの西村浩二さんにフリージャズの重鎮・梅津和時さんですから。ではじゃあ、ここで新しい菊地成孔さんの作法が用いられているかといえば実はそのエッセンスはそう多くないです。なぜならやはり原作があるから。あくまでそのイメージを残しつつの菊地さんのFREE JAZZなのです。

そしてここの作品にはボーカリストが数多く参加しています。JAZZではギラ・ジルカさんと矢幅歩さん。Popでは中澤信栄さん、坂本愛江さん、ICI。ギラさんはとてもしなやかにJAZZをお歌いになります。そしてブルジーなのに明るい。リズム感が良いんだなあと思います。数年前に先輩プロデューサーさんにCDを頂いていたり、LIVEなどでの活躍は存じ上げていたのですが今回はじめてお会いしてその歌声に魅了されました。矢幅さんはもうまず見た目がスタイリッシュ。そして今のR&Bやソウルなどのエッセンスが入ったJAZZを歌うことが出来ます。ちょっとソウル色が強くて今回の企画の”どジャズ・シンガー”としては新しすぎるかなと思ってピックアップするのを若干躊躇していたのですが、菊地さんに紹介後、菊地さんの次にプロデュース作品にも参加していただくことにもなりました。そう、大西順子さんの復帰作「Tea Times」ですね。話題です。中澤さんはまさに”King of Soul"。彼の歌唱のスケールの大きさ、大きなグルーブは一体どこから来るのだろう。父親が関脇!というのはブラックミュージックとは全く関係ないし。レコーディングをお願いした時期はちょうど彼がコーラスで参加したDREAMS COME TRUE LIVEのリハーサルと重なっていて、ハードなリハーサルが終わった後にスタジオにやって来てコーラスまでみっちり歌ってくれました。そしてカントリーシンガーの坂本さん。僕がギターのメンテナンスでお世話になっているStream Guitarsの早川さんがバンジョーを弾いているBluegrass Band ”The Blueside of Lonesome"の出演するLive Houseにメンテナンスに出す楽器を持って行った時にたまたま紹介していただきました。その時はLiveは見られなかったのですが、後に歌を聞いたら素晴らしく、いつか仕事がしたいなと思っていたら、割合と早くチャンスが訪れたのです。彼女の歌はカントリー・ソング風ではなく本物のカントリー・ソング。日本人なのに本物のカントリーソングが歌えるんです。何故だろう?そして菊地さんのプロジェクトではおなじみのICI。ICIがロボットという設定はすっかり忘れていました。僕にとってのICIはJAZZ DOMMUNISTERSでのフィーチャリングが印象的なのですが、今回は極めて明快なポップソングを歌っています。彼女、市川愛さんは普段はSolo singerとして活動していて今回はICIと市川愛さんの間位な感じでしょうか。でも、6,000人近い観客を集めたパシフィコ横浜国立大ホールでのGUNDAM EXPOのステージではやってくれました!キャラ炸裂のICIの世界を演ってくれました。

そしてこの作品にはスタジオではお会いできなかったけれど自宅スタジオでスペイシーな作品を菊地さんと作ってきてくれた坪口昌恭さん、POPサイドのバックトラックをあっというまに仕上げてくれた米田直之さん、スケベな、いや素敵なギターを弾いてくれた伊平友樹さんが参加して作品に色付けをしてくれています。

この作品に関わったミュージシャンたちは皆さん一筋縄ではいかない一口噛んだくらいでは味がわからないミュージシャンではありますが、その実、噛めば噛むほど旨味がぐいぐいと湧き出てくるとても”美味しい”方々です。そして好きじゃない人は一度立ち寄っただけで素通りしてしまうだろうけれど、好きになってしまったら一度ならず100回は通ってしまう素敵なレストランのようなミュージシャンたちなのです。NYのフュージョン料理から、南部のソウルフード、テキサスのステーキハウスまで味は様々ですがそれぞれに個性が素晴らしい通いたい場所です。菊地成孔さんと機動戦士ガンダムという機会を得て、少しでも多くの人の耳にみんなの音楽が届くと良いな思います。また、このちょっと変わった(?)チャンスを活かして、活動の幅が少しでも広がれば良いなと思います。この機会を活かすも素通りするもご本人達(発信者&受信者)の問題で、僕に何かできるというわけではないのですが、どうでしょう、ファミレスやコンビニで消毒されたものばかり食ってないでたまには裏道のモンゴル料理屋にでも行ってみようよ、てな感じでしょうか。あれ?分けわからないか。
コメント