【霊告日記】第二十回 連句入門 Fame Music Video
まえがき
私のブログではこれまで数多くの連句論を掲載してきたが、それらの連句論を読まれた方の中には、「連句はじっさいにはどういう風に作られているのだろうか?」という疑問を持たれた人もいるかもしれない。そこで今回は連句入門の記事を特集した。
第一部は私が体験した文京区関口芭蕉庵に於ける最初の連句会の模様である。連句の基本中の基本は<付け>という行為であり、連句の奥義もまたこの<付け>という行為なのである。前句を読んで次の句を付ける。この<付け>という行為についての解説である。
東京文京区:関口芭蕉庵
第二部は連句に関していささかの経験を積んだ後に母校明治大学の現役学生の後輩たちと一緒に連句を巻いた。その連句作品を基に連句の作り方を解説したドキュメントである。いわば「連句実作の実況中継」としゃれてみた。
第三部は現代連句の歴史では画期的イベントとなった「座・連句」の紹介である。このイベントによって若い世代から大量の連句入門者が出た。
WEBでは文章は通常横書きになってしまう。連句は縦書きが原則である。散文は横書きでもそれなりに読めてしまうが文学作品とりわけ詩に関してはやはり縦書きでないと情趣が極端に落ちてしまうと感じるのは私だけだろうか。縦書きで連句を二巻公開できる運びとなったのは嬉しいことだ。
さて以下の三つの文章を読んだあなたはすでに連句の"通"と言っても過言ではない。
第一部 私の体験した最初の連句会
風信子の会の村野夏生さんと別所真紀子さんに招いて頂いて、私が初めて連句の座に連なったのは一九八五年の十二月でした。事前に『風信子』を送ってもらいそれを読んではいましたが、連句については私は何も知りませんでした。
オモテでは事情もよく分からず様子を見ていただけですが、ウラにはいり、四句めの「ゴロンと生きてプツンと死んで」という滝田遊耳さんの前句に、私の出した最初の句は「花を餌に人魚釣る手に波しぶき」だったのです。村野夏生さんは「ウーン、波しぶきが余計だな。短詩では言葉をもっと惜しんで使った方がいい」とおっしゃて、私も「なるほど」」と思いました。「でも、いい句だから、どこかで使いましょうね」と別所さん。その日の捌きは別所真紀子さんが担当でした。結局、「花を餌にして人魚釣るなり」と短句になおしていただいて、ウラの8句目に、初めて私の句が入りました。前句は「ひょっとこの血を吐く酔もありぬべし」で、村野さんの句。
ひょっとこの血を吐く酔もありぬべし 夏生
花を餌にして人魚釣るなり 秀夫
さて、ここからが実は、最初の付句について、というテーマの始まりなのです。連句は付けがたいせつである、このあたりまえのことを誰もが連句初心者に説明しようとします。しかし、私の考えでは、連句初心者は良い付けとは何であるかをいくら説明されても絶対に理解しません。そのように考える覚悟が連句人には、とりわけ実作者たる連句人には、この際、絶対に必要でしょう。初心者に最初から良い付けを期待するのは無理であって、初心者が出した句に良い付句を付けてあげて、そのことによって連句における「付け」ということの意義を悟らせるということが、唯一できるのではないかと思うのです。
「さあ、いい句ですから、しっかり付けてくださいよ」と、別所さんがおっしゃって、風信子の会の連衆はその瞬間から、熟考の態勢に入りました。シーンとした中で、私の句「花を餌にして人魚釣るなり」への付句が考えられているのだなと思うと、なにしろ初めてのことですので感動的な思いに満たされたものです。その瞬間の記憶は、いまでもはっきりと残っています。私にしてみればこの句にいったいどんな句がつくのか、また付き得るのかは見当もつかなかったというのが、その時の実情でした。というより、そもそも、「付ける」ということがどんな行為であるかということはまったくわかっていなかったのです。
別所さんから「さあ、付きましたよ」と見せられたのが、次の川野寥艸(りょうそう)さんの句だったのです。私は、実に意外な気がして、その鮮やかさに、本当に驚いてしまいました。
花を餌にして人魚釣るなり 秀夫
春うらら航空母艦坐礁する 寥艸
こちらでは花を餌にして人魚を釣っている、ふと視線を移すと、巨大な航空母艦が坐礁している。空には飛行機。その機影に海中では人魚が泳ぐ。そして、それらすべてをひっくるめて「春うらら」である。季語が実に活きて使われている。どう考えても自分には出てこない発想だったので、寥艸さんに「すごいですね。驚きました」というと、寥艸さんは「いや、まあ仕方がない」とそれほどのものではないという調子の返答で、それには二度またビックリ。
寥艸さん御自身はこの付け句をご自分の優れた付け句のなかには入れておられないかもしれませんが、私は優れた付け句としてまずこの付け合いを挙げたいとおもいます。「なるほど付けるってこういうことなのか。連句ってなかなか面白いなあ」と、連句初心者に、思わせたからでであって、連句初心者に対して誰もそれ以上のことができる筈はありません。
第二部 連句実作の実況中継 半歌仙「喫茶さぼうる」の巻
連句の会が開かれた神田神保町の喫茶「さぼうる」
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第三部 画期的イベント「座・連句」
←表紙と中表紙
←イベントの解説
←会場で巻いた連句
※参考※ 【連句】連句に関する小作品集①~⑤
★フェイム(名声)に憧れる気持ちを失ってはならない。心はいつもまっさらの新人のままに!!!
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