似てる(渋谷橙のことば)

詩を書いて、演劇をして、飲食店でバイトして、妻ができ、子がうまれた。さて、どうなる。自分の小説みたいな場所。

お茶

2011-10-22 13:26:26 | 

大きな雨がやんで
お茶が温まった
明るさがちがう
悔やみ方も解けて
食事が終わった様子が
聞き届いたら
穏やかなお茶になる
お互いが
いる場面を
風が触ってしまって
混ざってしまって
いい鼓動だと思う

出て行ってしまった後
からの器がまだ温かい
指の軌跡
空は明るい
なめらかな想起に怒られて
手を挙げず
渡っていくひと
点と滅が懸命になること

からの器は冷めて
口を拭う

やって来るだろう



"ちびた石鹸"

2010-08-09 10:32:21 | 
ぱくっ


しません


千年も万年も愛でる


ぼくはどんどん汚くなって

切れた便りで島が浮く


まちがうことなくよむてそう
まちがうことなくよむてそう

駅でそいつを殴ってやった


ぼくはどんどん軟らかくなって
泡にならずに消えてしまう


手紙を洗って絞って干して

土を歩いていくんだね

"波"

2010-08-09 10:21:28 | 
あの星と星は
どんどん離れていって

風飛行機のプロペラの音が
いつまでも回っていた

振り返る
夜を迎える
右も左も鳥の波

明日帰ると言って
欲しがってしまった

風飛行機のプロペラの音が
いつまでも回っていた

"浜辺では"

2010-08-07 18:06:54 | 
浜辺では
下着も上着
金色に新しい光
時間は暮れて無くなろうとしてる
タッチの差で
胸の谷間に滴が流れ
そこまで来た波は渚と結ばれて消える

浜辺では
上着も下着
よそ見しても海
砂は裸になってから着替える
あの子が食べている
きゅうりが星のかたち
燃えて赤く照っている
頬はまるで人

浜辺では
噂も水着
ビキニ型の雲間に太陽
上に下にはみ出して揺れて
夕暮れを掴めずにいる

膝丈に包まれた
トマトを洗って齧りつき
水平線と僕とあの子が
広くひとつであることに
判子を捺して潮風で乾かしておこう
しょっぱくて舐めよう

"車輪の小学生"

2010-08-07 17:46:37 | 
小学生が自転車をこいでいる
何を着てもいいんだ
熊の子 蜂の子 鰻の子

小学生が自転車をこいでいく
何処に着いてもいい
釘の子 梨の子 燕の子

結べそうだ
自転車の子 補助輪の子
三輪車の子 四輪駆動車の子
溝の子 土の子 竹の子 糸の子
鋏の子 毛羽の子
鎧の子

コルクが飛ぶ
追いかけろ


"どこまでも在る味"

2010-07-06 23:55:59 | 
何があるかわからない
教えない

わずかな
あなたが
たくさんあるのだ

見る
話す
読む
見つける

滑りの悪い木の床で
すっ転んでみる

言葉の跡
擦れた光
戯れの先

どこまでも在る
味がある

失われない味が居る

わずかな
あなたが
たくさんあるのだ


"牛乳配達の女の子"

2010-06-26 10:49:08 | 
ヘルメットが宙に浮いて
栗色の髪を夏に投げている

夜は短い

擦り切れ道の梔子の匂い
その白

会うことのない主に
安らかな恵みを届ける

街は
牛か藁か人形だかの鳴き声
朝焼けに眩んで

パンの匂いも白飯もワイドショーも
原付の操る風に流されてしまった

交差点には可愛い孤独が残った

"空になった"

2010-06-23 12:04:42 | 
空になった
箱を乾かし
暗くなったら
眠る

風はいつでも
知らないことを
渡しに来ては
連れ去るから

明るくなったら
目を覚まし
空の箱の
底を開く

内側だった
ところに触れる
風が吹いても
膨れぬように