Watch paper 2020年

時計知識、技術

2020年4月 海の上で輝く懐中時計の色

2020-04-15 11:46:41 | コラム 小論文
INTRODUCTION…アーリーシリンダーとは
BODY…  技術者の作品
CONCLUSION… 内部の美
無彩色のモノトーン世界に、1色だけ鮮やかなゴールドでアクセントを加えれば、とても大きな効果が得られる。色1つでも完結するその芸術性。風景のように計算されて構成されているのであろうか。そういう所から芸術性への道にのめり込む。18世紀半ば頃に製作された懐中時計の比較的初期のシリンダウォッチ構造を通称して『アーリーシリンダー』と分類する。懐中時計はふるい時代のものになるとのいわゆるリューズ位置の部分の考察から始まる。リピーターというベル音を鳴らす機能がついているからである。古時計ではこのリューズを押し込む形式の物が多い。特殊なものでは鍵でまいて稼働用のスイッチとしたものもある。ベルメタル合金の厚型caseであったからこそ良い音色とcase背面の装飾の芸術性が活かされ、風防ガラスを平にしてエナメルの装飾を痛めないように工夫したのだ。本来時間を見るのは一瞬であったので時間を知らせる音と背面の作品を大切にしたのである。もちろん手作業であり、このような精密な細工に投入した合金原料や素材の量に対して、生産効率は低かったに違いない。ベルをハンマーで叩く形式は、時計自体が厚型であったからこそできたともいえる。ベルに使われる金属の材質、透かし彫りされたテンプ受け、中央のガーネット色の伏せ石、リピーターのラックの起動にもチェーンと滑車が採用される点など細部にまで時計師のこだわりがある。さてテンプの天真の修復方法は円盤の径が1.5ミリ、肩の部分にアールをつけて回転軸の太さは0.15ミリくらい…磨きを掛けて表面硬度…厄介である。金属の本当の美しさは統一された部屋の薄明かりに照らされぼわーっとした中にある。夜の航海の途中でふと懐中時計を眺めるのが良い。

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今日の話題…PMSFS鍵巻き鎖引き 懐中時計 鎖引きイングリッシュレバー リピーター機構無し

今日のお役立ち時計… 1865年頃の時計師による手作りの時計。文字盤は中央部に彫金がほどこされておりインデックスのローマ数字は手で切り抜いたと思われる。ケースは裏蓋にギョーシェ状の模様。機械はダストカバー付きでバランスコックには細かな彫金がほどこされ機械の内部にチェーンが使われており力の伝達は鎖によって行われるのでコレクション向き。

次回演目『あ行 アンティーク』
登場語録…時計


2020年4月 完璧なループを構築するアイテム

2020-04-14 18:11:01 | コラム 小論文
INTRODUCTION―違和感
BODY―拒否か経年劣化か
CONCLUSION―ループの構築
アレルギーに注目して記述と分析をおこなわない限り、時計について語ったことにはならない。時計の装着を諦めないのか諦めるのか。時計そのものに少々こだわった言い方になるかもしれないが、時計をしたという事実には『目的』があること、換言すれば装着以前の『葛藤』があることを前提にしている。突然、自身で構築したアレルギーの無い完璧なループが壊れる。初めて露になる金属や革のベルトのアレルギー物質にぶつかったのである。腕時計を着用するという状態は、一定の質量と材質上の特徴、形態や色彩をもった物質的なモノを自身の皮膚に覆い、何らかの違和感、圧力にさらされ、その違和感によって身体が窮屈に感じることもあり得る。当り前のことであるが、時計がモノである以上、それは製作され、社会の中で流通し、保管され、また時として補修される。人間が使用するモノとしてのライフ・サイクルがあり、しかもそれは、他の物質文化とは異なるモノ特有の性質を帯びている。これらの一連の過程においても、人間の五感との間の直接的な相互作用は数え切れないほど存在する。物質性という用語は厳密にいえば、例えば空気や紫外線、放射能など、人間が目にしたり、直接触れていることを実感しにくいようなものも科学的には物質と呼べるわけであり過去には放射性物質の蓄光塗料や、金属も多数使われてきた。そんな物を安易に肌に巻いてはいけない。何度も試着できないので知識の構築する時間を増やし拒否反応なのか経年劣化によるものなのかを見極める。
 肌に接する部分…素材はチタン合金、金属以外のセラミックス、カーボン、プラスチック、純チタンとタンタル、100%のプラチナ、ロレックス、316L以上のステンレススチールが良い。
革ベルトの時計…劣化した革ベルトは替える、3価クロムの処理をした革のベルト。紫外線や汗などの影響により、長期間革ベルトを使っていると、3価クロムが6価クロムへと変化し、アレルギーを起こす場合があるので交換。
人間が何か普段とは別の存在になる(変身する)ということに対する思考を、そうでない思考と区別して考えるうえで、大変示唆的である。これらを時計という物質性の議論に引きつけるなら、その閒の線を引くのがまさにアレルギーの無い材質を探すという行動であり、ここで論じる人間と材質の間でやりとりされる物理的な相互交渉であり、物質的な関与なのである。物質性を帯びた存在としての材質、すなわち一定の質量、質感をもち、自身の五感との間で特有の相互交渉を繰り広げるモノとしての材質で表現した。人が通常と異なる特別な1日を演じるとき、時計を装着したなら必ずそのつけ心地も重視される。その過程に枠づけを与え、アレルギーの無い材質というitemを用いることも有効であるとする思考は、じつに的を射たものにみえる。諦めずに探す事で、新たに構築したアレルギーの無い完璧なループを過ごせるのである。もとより自身も劣化によるアレルギー反応に出くわし、アレルギーの物質性に注目して論を展開することで、自身と時計、またそれらに関連して展開されるアレルギー材質問題などについても、より焦点化して論じることができた。令和においてはアレルギー対策のマスクという語の辞書的な意味として詳細な検討も今後必要である。

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今日の話題…農家
今日のお役立ち時計…梨の木の腕時計 梨の木・真鍮・銅・牛革を使用。船橋の梨農家さんが梨の木の処分に困って製作した。2019年船橋市に寄贈

次回演目『あ行 アンクル』
登場語録…往復運動、慣性モーメント、40%の効率


2020年4月 コレクションさせるアナログの魅力

2020-04-13 15:48:55 | コラム 小論文
アナログ時計 1月 記述
INTRODUCTION―序論―アナログの意味
BODY―本論―表面上の表示と内部構造
CONCLUSION―結論― アナログ時計とは
時計の世界では表面上の針がインデックスをさす古典的なアナログ方式でありイタリアで誕生した『カルティエ』サントス、LEDによる数字で時刻を表示するデジタル方式『ハミルトン』パルサー、『カシオ』Gショックなどが代表である。筆やクレパスなどの旧来の画材を用いて表現することを「アナログ作画」と呼ぶがこれの意味とは少し違う。色彩豊かなスタイル、透明感のある外観、深く豊かな色合いと詳細な陰影を作り出した小型化の腕時計は、メーカーの個性を尊重しコレクションさせるほどの魅力がある。天文学的情報が求められるようになった天文時計とは異なるが、高度な技術力を要する。アナログのよさは、視覚的効果である。針が時刻を指すというsimpleな効果である。さてアナログといっても昔は、例えば振り子時計は振り子運動の1周期を1秒に変換する時点でデジタル処理となり、ステップモーターを利用したものは内部ではデジタルである。内部構造を歴史的に見ると技術革新と各社間の競争になった時計時代が過去にある。超小型化と強い対衝撃性が求められ、電池が内蔵されるという流れが、国や時計業界に打撃を与えたのである。海外では80年かけてタンス並のサイズの能動素子の真空管から、半導体デジタル回路へと変えた。1960年代まで80年という月日を日本はわずか30年という短期間で1967年、世界初のアナログ回路を用いたクォーツ腕時計が登場させてしまった事で時計市場を席巻しクォーツショックと呼ばれる現象を引き起こし、スイスをはじめとする欧米の機械式の腕時計が売れなくなったのだ。特にアメリカ合衆国の時計産業はほぼ全滅状態に陥った。アナログ時計とは一般的には針や文字による視覚が基本で、これと併用する形で鐘やアラーム、クロノグラフなどが用いられるのである。

今日の話題…澄んだ音色
今日のお役立ち時計…ピエール・ル・ロア 1/4リピーター フランス 懐中時計iEp-164118世紀の「鎖引き」のアナログ式のシリンダー懐中時計である。

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次回演目『あ行 アレルギー対策』
登場語録…ベルト、外装


2020年4月 永続的なチクタク音をきく

2020-04-12 15:05:55 | コラム 小論文
2019年 10月 記述
INTRODUCTION―雑音とは
BODY―視覚的
CONCLUSION― 視覚的 相違

時刻の解説はいらない…とてもアナログな手法で聞く、見るを繰り返し行うのみである。
たっぷり時間をかけ、残り一周回り出す分針を眺めている。「チクタク…チクタク」という音が流れていれば、それに対して「からくりが来る」という音声は雑音である。歯車は実際見えない。見えないのは、何か力を失った状態ではなく、「視覚に頼らない」で想像力をもって見る。歯車が歯車を引き上げ、両歯車でしっかり次へ伝わる。きりきりと回されゆっくり伝わる…。針はこれから操られるのを待つかのよう…予測性とな意外性の境目である。針が振り切ったところで、一気にからくりを止めていた力を緩め視覚的時刻として起ち現われ、脳を一瞬に乱す。乱すと表現したが、実際はこの一瞬を待ち期待に答えたと言い換えれる。5分に満たない短い作品とも言える。日本でも鈴が落ちて美しい音が響き渡り時を知らせる常香盤があった。日本人に好まれる快いと感じる「ゆらぎ」が香であるから生まれたのではないか。香が定速で燃える性質を利用し目で追いながら経過した時間を知る事ができ、落語で使われていた。蒔絵や螺鈿の象嵌が入っており、時間をかけて作られたこだわりの外装を持つ時計である。一見すると古民具の「こたつやぐら」や「抽斗」のようにも見える。計測に使われた例は6世紀ごろの事、木枠、棒入れ、灰ならし棒、木のさじ、櫛形の慣らし板、平板等から構成され二~三段からなり、上部は格子状の蓋のようになっており、下部分の香箱の中に灰が入っている。香が燃え尽きると糸が切れ、鈴が落ちて音で時を知らせる仕掛けは日本的でからくりとしては美しい。時計とは「瞬間性」および「永遠性」を表現しているのではないか。「瞬間性」は分針が刻み丁度12時を指したとき、「永遠性」これは絵画で描かれた時計などは動き出すこともなくそこにあり続け、観客に問いかけてくる。視覚的な面では分かりやすく絵画で描かれたあるいは作品に登場している時計を取り上げてみた。絵画で時計に注目して鑑賞したことは無かった。絵画は、生活をする上で時間をどのように使うかということを鑑賞する人にじっくり時間をかけ熟考させる永続的な作品である。時間に色彩はない。これらを形にするという芸術的分野がある。

今日の話題…海と木
今日のお役立ち時計…EINBAND Meer 木製の腕時計でドイツ語で『海』という意味を持つ名前の時計である。Walnut & Mapleを使用したツートンモデルのウッドウォッチである。


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2020年4月 時計の針は内部にも 緩急針とは

2020-04-11 16:37:40 | コラム 小論文
2019年 12月 記述
INTRODUCTION―序論―渦巻きの形
BODY―本論―効率的ながらも不安定
CONCLUSION―結論― 緩急針の有無
『あおり』…縫い物をする際に針に当たらないように糸を48時間通し続ける感覚である。まあこれでは専門的ではないので、もう少しだけ掘り下げてみよう。ひげぜんまいをお話しする前に渦巻型の話を提案してみたい。身近な蚊取り線香は1902年に登場する。蚊取り線香は細長い棒状だったためせいぜい40分、渦巻型になった事では最大7時間燃え続けた。登場する以前の江戸時代に線香の灰を利用したという燃焼時計があった。こちらは灰から棒になって正確な時間を測れる進化を遂げた。この渦巻きの効率のよさを時計に埋め込んで利用したバネというわけだ。たった2gの質量、厚さ0.02mmの物が今回お話しに登場するひげぜんまいである。『あおり』はこのひげぜんまいを挟む隙間の間隔であって機械式の時計を腕につけている方でもなかなか見る機会はない。技能士がピンセットで調整するんだなと、思っていただけたら、修理に期間を要するのも少しは分かるかもしれない。
結果『緩急針のある機械式手巻き時計』とは『数分間の遅れもなく48時間腕時計を動かす安定性』を調整する手間がくっついている訳であるから手動の手間が増えた訳で、安定しにくいのである。緩急針の無い昔のアンティーク時計はfree sprungと呼ばれこの手間もなく修理すれば8割元の歩度に戻るので、現代でも貴重でありながら技能士にもありがたい。

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今日の話題…METガラ
今日のお役立ち時計…2020年は時計をテーマに開催される予定だったメトロポリタン美術館のイベントである。大阪にルイヴィトンのショップが出来たのも関係していた。

次回演目『あ行 アナログ』
登場語録…ステップモーター、脱進機