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一言二言三言

日常思うこと、演劇や音楽の感想を一言二言三言。
現在、半年遅れで更新中……DVDを買う参考にでもしてください。

月影十番勝負第十番  The FINAL SASORIIX 約 yakusoku 束

2006-03-19 | 観劇
作:千葉雅子 演出:池田成志
出演:高田聖子・伊勢志摩・池田成志・加藤啓・池谷のぶえ・千葉雅子・木野花
Sun.12.Mar in 松下IMPホール

凶悪事件を起こした奈美子(高田)は出所後、各地を転々としていた。しかし、どこで身を隠そうとも因縁の相手・北城(池田)の手が伸び、奈美子を追い詰めていく。奈美子は攻勢に出るが――

久しぶりに小劇場系の安い芝居を観たなぁ、と。(舞台を見る機会の多い方にはこの表現を分かっていただけるだろうか) 中盤、再逮捕され護送される列車内では「お?」と2~3千円くらい上がったが、最終的には役者揃えにプラス千円でつけときます。
あえて言うなら、上手な役者さんを使って小劇場ならではの遊びをしているような舞台。そして奈美子の業と彼女と出会う女たちのそれぞれの業を描いた(公演前インタビューでの高田さん曰く)“サイコーにしみったれた芝居”は、元になった映画があるためか、現代ではないうらぶれた雰囲気を醸している。
『月影十番勝負』は高田聖子の魅力を引き出すシリーズと聞いていた。その意味ではなるほどと思う。とにかく終始、高田さんは楽しそうだった。カーテンコールの拍手に応えての様子は心から感謝するような可愛らしい笑顔で、彼女の素直な人柄が透けて見えた。
しかし池田成志はなぜああも不機嫌だったのだろう……挨拶からの戻りのなんて速いこと。新感線も数えるほどしか見ていないが、いつもあんな感じの人なんですか? 重要な役割にしてはあっさり扱われてましたが。ってあんたが演出じゃん。

贋作・罪と罰

2006-02-26 | 観劇
NODA・MAP第11回公演
脚本・演出:野田秀樹
出演:松たか子、古田新太、段田安則、宇梶剛士、美波、マギー、右近健一、小松和重、村岡希美、中村まこと、進藤健太郎
Thu.16.Feb in シアターBRAVA!


江戸開成所の女塾生・三条英(松)には「非凡人には既成の道徳法律を踏み越える権利がある」という確固たる思想があった。そして英は金貸しの老婆殺害計画を実行に移すが、偶然居合わせた老婆の妹までも手にかけてしまうことで、心に重い石を抱く。事件の担当捜査官・都司之助(段田)は、英に対して疑惑の目を向け、執拗に追求する。一方、英の親友・才谷梅太郎(古田)は、罪の意識に苛まれ苦しむ英の身を案ずるが、彼もまた同時代のより大きな歴史的事件の渦中にいた。尊王倒幕の機運高まる幕末の真っ只中、無血革命を目指す坂本竜馬と、竜馬の密通を疑い武装蜂起を煽る志士たち。背後で暗躍する溜水石右衛門(宇梶)の存在。新しい時代の扉が開く時、英はどんな答えを出すのか。

野田秀樹の舞台は走り回るとは聞いていたけれど、本当にランニングシューズ履いてましたね。衣装替え以外はステージの周囲で自分専用の椅子に座って待機。時代のうねりを皆で見守っているようにも見える。効果音も自分たちで作る。一体どれほどの練習量なのだろう。もちろん、大阪に来るまでに相当数のステージをこなしているわけだから、完成度も高くなっていたに違いないが、この絶対的な集中力の持続には感服するしかない。
今まで見た舞台の中で一番好きな演出だと思う。一番好きなお話というならキャラメルの『TRUTH』が譲らないけれど、この舞台は全ての点で完璧に思えた。
席に着き、通常舞台がある場所にも観客席を設けられ、劇場中央に特設舞台を設置する対面式舞台を見た瞬間、世界に取り込まれる感覚があった。舞台と客席の境界が曖昧になっていた。これだけでも今から始まる出来事への期待が高まる。
『志のために人を殺していいのか』と言うテーマはあまりに重い。その重いが暗く見せるのではなく、サービス精神旺盛に笑いをまじえ、スピード感あふれるエネルギッシュな展開が観客を逃がさない。そしてなにより綺麗だ。
小説然り、舞台然り、すべての物語には作り手の"色"がある。野田さんは極彩色だった。鮮やかで淀みのない赤や緑。ステージを覆う純白。衣装やライティングを選ぶ以前、演出を考える段階ですでに頭の中には、これらの色が踊っているのではないだろうか。
さらに凄いと思うのが、全員が演技することを楽しんでいるという点。このハードな舞台をまったく息を切らすことなく、幕末のどこか浮き足立った様子を表しながら、しかし完璧に仕上げた。出演者全員をその気にさせる演出家、それが野田秀樹なのだと感じた。
松は少年声と話し方で女性剣士という中世的な雰囲気と、優等生で生真面目な英の性格をうまく伝えていた。象徴的な真っ赤な袴姿もよく似合っている。松たか子は女優というより“いい役者”だ。
英の妹・智役もどこのベテラン女優さんがやっているのかと思っていたら、若干20才の美波で、マジョリカマジョルカと言われて、おお!などと感心した。(若者の話題に疎い…) 堂々とした演じっぷりはなかなかのもの。野田さんとセットの役だったけれど、彼女の方が上手い気がした……いえ、科白が聞き取りやすかったという話なんですが。野田さんのあれは1つのキャラというか。どっかで見た時も婆アだったなぁー。誰にも譲れないんでしょうな。きっと。
そして段田さん。他で見るより生き生きしてた気がします。気心が知れているからやりやすいのもあるだろうし、古巣に帰ってのびのびしてる感じもし、5才は若返ってましたね。うん。
舞台の古田新太は相変わらずの二枚目。おバカなことやってるのに決めるところは憎らしいくらい決めてくる。ルパン三世のような人だ。
とりあえずこの舞台、もう1度見たい。

クラウディアからの手紙

2006-02-26 | 観劇
脚本・演出:鐘下辰男
出演:佐々木蔵之介・斉藤由貴・高橋惠子 他
Wed.15.Feb in シアター・ドラマシティ

無実の罪で終戦後ソ連の収容所に送られ、98年にようやく帰国を果たした人間のドキュメンタリー。
朝鮮に渡った民間人・蜂谷弥三郎(佐々木)は、終戦後、同僚の密告でスパイ容疑をかけられソ連軍に拘束される。引き離された妻・久子(高橋)は乳飲み子を抱え命がけで帰国して帰りを待ったが、日ソ条約が締結後すべての日本人が開放されたがその中に夫の姿はなかった。刑期を終えてもスパイとして法務局からマークされた蜂谷は出国を許されなかったのだ。そして収容所で覚えた技術で美容師となり、差別のと戦いながら暮らしていた彼は、自分と似た境遇のロシア女性クラウディアと出会い、ロシア国籍を取得し以後38年間夫婦として助け合って暮らすことになる。ソ連崩壊でようやく自由を得た蜂谷だったが、日本への望郷の念を持ちながら帰ろうとはしない。一方クラウディアは夫を元の妻へ帰そうと、必死の思いで領事館にかけ合っていた。別れの間際交換した手紙に彼女はこう記す。「私は十分あなたと幸せな時間を一緒に過ごせました。この後のあなたの時間は、50年1人で待ち続けた久子さんにあげて下さい。私は他人の不幸の上に私だけの幸せを築くことはできません」

全体としてはバラバラな演出だな、という印象。
斉藤由貴の熱演、舞台人佐々木蔵之介の魅力、高橋惠子の存在感ある美しさも、エキストラの動きがグダグダで台無しだった。
パフォーマンスをまじえた演出を試みるなら、踊れる役者を揃えてほしい。立ち姿から鈍いというかぬる~いというか。どうにも場面がしまらない。
シリアスな雰囲気の中で、やたら大きい音で驚かせたり、急に細かな笑いを入れようとしてみたりと、演出の方向性は定まらない。さすがにラスト10分は涙で前が滲んだが、これは役者の力量と、実在のクラウディアさんの愛情の深さに胸打たれたからだろう。
舞台としては今ひとつだが、戦争の名の下、否応なく巻き込まれ運命を捻じ曲げられていった人々、想像も及ばない過酷で非道な仕打ちの中で亡くなっていった人々がいるということを、目に見える形にしてくれた、という意味では価値があるが、できればもう少し普通の芝居にして欲しかった。観客も年配の方が多かったことだし。

BIGGEST BIZ ~最後の決戦! ハドソン川を越えろ~

2006-02-26 | 観劇
AGAPE store♯11
作:後藤ひろひと 演出:G2
出演:松尾貴史・三上市朗・八十田勇一・松永玲子・菅原永二・坂田聡・篠原ともえ・粟根まこと・後藤ひろひと
Sun.12.Feb in シアター・ドラマシティ

ニュージャージー州の一角、シナトラをこよなく愛する男・神崎(後藤)が経営する雑貨店に、ワケありの強盗・摩耶と潤一(篠原、菅原)がやってくる。レジの金目当ての簡単な仕事のはずが、次々におかしな連中が集まり始め、勘違いが勘違いを呼び、いつの間にやら事態は世界的規模の大事件に発展! 何億ドルというレベルのビジネス・ゲームに変貌を遂げていく。BIG BIZ、BIGGER BIZに続く第3作、完結編。

一度キッチュを見てみたいと思っていたのです。昔からああいう人好きなんですね。インテリなのにちょいテキトーみたいな。
で、BIGGEST BIZ。これだけでも面白いけれど、その楽しさは前2作を見た人の半分くらいだったのだろうな。なんせ登場人物が姿を現しただけで、会場は笑いの渦なのだ。健三(松尾)は一体何をしたんだ? 結城(粟根)はどんな酷い目に遭わされたんだ?? など気になる気になる。余裕があればDVD買うかもしれません。実はTシャツほしかったんだけど。(DVD予約の列を迂回したら出口に出てしまった)
とにかく個性的キャラ勢ぞろい。一見ドワーフのような地球外生物(天才ハッカー)皿袋(松永)、おどおどしてるばかりなようで連中に巻き込まれることを一番楽しんでそうな木太郎(八十田)、本来どういうキャラだったのか分からないほど壊れた結城。貧乏くじだった加賀(坂田)はきっといい人に違いない。
粟根氏はいつもながら声がいいなと思う。最初以外まともに喋るトコなかったけど。苦笑。
アキバ状態の川島はMOPでは見たことのない三上氏でおかしかったな。あんな一面もあるのね。
キッチュは――ほんと器用な人だ。1人で手品したりマイムしたり、ほとんど遊んでるだけで何もしてないんだけど、そこにいるだけで周囲全体を混乱に陥れる存在としてはぴったり。潤一の「だんだん分かってきた。この人は何も考えてない」は名ぜりふだった。
その中で潤一はあまりにフツーの情けない青年で、たぶん結城も加賀も最初はそうだったのだろうな、と思うにつけ可哀そうに見えた。最後は良かったね~とほのぼのした。
篠原ともえも可愛いかったな。しっかり者の彼女を好演。肌の綺麗さに芸能人は違うなぁ、などと思ったり。でも終演後挨拶の時は大王に手を払いのけられてたけど。笑。
その大王は大王で。大王であり大王なので。大黒柱ってとこでしょうか。どーんとね。

新春 天空狂言

2006-01-09 | 観劇
Mon.2.Jan in 大阪能楽会館
大蔵流狂言『夷毘沙門』『木六駄』『長光』

今年は全然天空じゃなかったですね。梅田センタービルの裏側にある、めっちゃ地上の会場。元旦に行かなかったので振舞い酒には当たれず。チッ。笑。

正月気分で狂言見に行って、まさか神谷明さんを見るとは……3年前から門下生ということで、前説の任を預かったそうですが……声優さんは声だけの方がいいよね、うん。いや、普通のおじさんなんだけど、台本無しで面白いかっていうとそうでもなく。
最近、声優の90%が正しい日本語の抑揚がつけられないんだそうです。日本語は第2音が上がることが多いけれど、これを若い子たちは平坦に言ってしまうんだとか。なるほど、最近の声優は皆同じに聞こえるなと思ってたら、そういう理由もあるんですね。現代的言語文化の推移と申しますか。あとは偶然呑み屋で千之丞さんに会って弟子入りをお願いした……というくだりしか覚えてないんですが。すんません。
巻き込まれて門下生になった茶風林さんなる声優さん(この名前調べるのにコナンのHP見たら、子供時代に知ってた名前があって嬉しかったり。若い人はさっぱり分かりません~)も呼ばれて出てこられ、タヌキちっくな外見の感じのいい方でした。最後に千之丞さんが呼ばれ、神谷さんの質問に答える形で、教室に来る生徒さん(3才~90才)のことなどをお話。そんなところでしょうか。あ、茶風林さんが狂言はせりふを覚えるまで所作に入れないので、早く覚えて正座を解きたい、というようなことも言ってましたね。今の人は15分が限度でしょう、と千之丞さん。

『夷毘沙門』
有徳人 松本薫 ・ 毘沙門 茂山あきら ・ 夷子 茂山千五郎
有徳人が娘に婿を取りたいと、鞍馬の毘沙門と西宮の夷子に願かけをすると、美人と聞いた双方が婿になりたいとやってくる。争う2人に有徳人は婿になりたければ宝をくれと催促したところ、2神は鉾と釣り針を与え、福の神としてこの家に留まることになる。
神様がおバカなとこが狂言だなぁと思うのですが。ギリシャ神話と通じるものがありますね。但し、狂言の神様は可愛いらしいです。

『木六駄』
主人 茂山宗彦 ・ 太郎冠者 茂山千之丞 ・ 茶屋の亭主 茂山七五三 ・ 伯父 網谷正美
太郎冠者は大雪の中、主人に使いを頼まれる。伯父に木六駄(薪を積んだ6頭の牛)と墨六駄、酒樽を届けろというのだ。12頭の牛を追いながら何とか途中の茶屋にたどり着くと、あいにく温まるための酒が品切れ、仲良しの主人の口車に乗って使いの酒樽で宴会を始めてしまう。やがて雪がやんだが、酔っ払った太郎冠者は木六駄を主人に与え、墨六駄だけで出発する。携えた手紙には進物の品が書かれており、自分が変名したため木六駄が墨六駄を持っていくと書いてあるのだと言い訳するが――
「ちゃっと来い、ちゃっと来い」とふらふらしながら牛を追う姿と、「迷惑な」と主人への恨み言をいう太郎冠者がユーモラスでした。茶屋の主人も悪気のない顔で太郎冠者をのせますが、実は1番悪い人だったのかも。得してるし。

『長光』
田舎者 茂山童司 ・ すっぱ 茂山茂 ・ 目代 茂山宗彦
市に出かけた田舎者の刀をすっぱが狙い、自分のものだと言い張る。そこへ目代が仲裁に立ってそれぞれの話を聞くが、すっぱは田舎者の話に聞き耳を立て、同じ返事を繰り返す。それに気づいた田舎者が小声で目代の質問に答えるようにし始めたので、すっぱはあたふたと頓狂な答えを返すこととなり、最後は力づくで刀を持ち逃げしてしまう。
前2品の熟練の演技を見た後なので、やはり若々しさを感じます。宗彦くんにはマイペースというイメージを持っていましたが、昨年までとはまた違うマイペースさに変化したような。ちょっと疲れているようにも思えましたが、気のせいでしょうか。(年末年始の茂山家は忙しいらしいですねー。京都なので奉納舞が多いと聞いたことがあります)

歌わせたい男たち

2005-12-01 | 観劇
二兎社 作・演出 永井愛
戸田恵子 大谷亮介 小山萌子 中上雅巳 近藤芳正 
Wed.23.Nov in シアター・ドラマシティ

卒業式2時間前の都立高校の保健室。元シャンソン歌手で音楽講師の仲(戸田)は、伴奏をするため苦手なピアノを練習しているうちに体調を崩していた。そこへ花粉症の薬を取りに来た校長(大谷)に、国歌だけはなんとしてもとプレッシャーをかけられる。卒業式には都議会委員、教育委員関係者が列席するのだ。斉唱拒否、着席者を出してはならない。保健室には推進派の英語科教諭片桐(中上)適当な保健教諭(小山)そして拒否を宣言している社会科教諭の拝島(近藤)が集まる。

歌わせたいってそういう意味だったのかと……都立高校の現状、不均衡な日本をちょっと横から見る感じ。客観的、と書けばいいのか。
とは言っても、演技派揃うコメディなのでちゃんと面白い。右往左往する人々の滑稽さに、笑いが続いた。
どのキャラクターもいかにもいそうな憎めない"日本人"
みんな悪気はない。ちょっとずるい所があったり、必死だったりするのだ。

美術は保健室を対角線で見せる。横にしたら新喜劇になるんだな、とそんな小さな発見に喜ぶ。
時計も普通に動いていた。終演時刻が卒業式の開会時刻。それで2時間後なのだなと納得。しょうもないことが嬉しい。

クロノス

2005-11-20 | 観劇
演劇集団キャラメルボックス 脚本・演出 成井豊 in 新神戸オリエンタル劇場
原作 梶尾真治「クロノス・ジョウンターの伝説」
Fri.11.Nov

物質を過去に飛ばすマシン『クロノス・ジョウンター』の開発に関わることになった吹原(菅野)は、片想いの女性・美子(岡内)の命を救うため、クロノスに乗って事故の直前へと飛ぶ。けれど過去に留まることのできる時間はわずか。反動は大きく……

初めて菅野さんがカッコよく見えた……と言ったら失礼になるが、可愛らしいとかほのぼのとか、そういうイメージだったのですよ。これまで。
それがあらまあびっくり。主役のオーラが!
オープニングのダンスシーンでもう、目が追っちゃいます。紛れもなくこの人が主役、と分かる輝きのようなものがあるではないですか。上川さんやおっかーさんがいたらまた変わるのかもしれないけれど、今までの菅野さんと全然違う、と思った。
主役の自覚なのか(初めてではないのだけど)役への思い入れなのか、菅野さんは指の先まで吹原であり、自分勝手で刹那的で純粋な吹原の感情がダイレクトに伝わってきた。誰もが馬鹿な行動だと思うのに、応援せずにいられないような強引さを持っていた。一皮剥けたというか、脂肪と共に(ゴメン)被っていた仔狸さんの着ぐるみを脱いだようだ。
『風を継ぐ者』の沖田総司役で、菅野さんのファンになった女性が多いようだが、今回のこの役、彼女らの目にどう映っただろう。原作がある分、いかにもキャラメルキャラメルした作品ではない。客層も違ったように思えた(全体的に年齢が高かったような…)しかし私は好きだ。
岡内さんは私の好きなヒロイン役だったし、畑中くんも美味しく育ってきた。畑中くんは清水くんとイメージが重なる。『TRUTH』で気に入って一瞬でいなくなってしまった彼に――帰ってきてくれないかなぁ……それはさておき頑張ってほしい。方向的にはおっかーさんらしいんだけど。
ラストの演出は憎らしい。何度となく見たくなるラストだ。
辛くて優しくて、その情熱が羨ましくなる。そんな作品。

納涼 茂山狂言祭 2005

2005-09-05 | 観劇
Sun.28.Aug in 大槻能楽堂
大蔵流狂言『萩大名』『月見座頭』新作狂言『死神』

リクエスト狂言ということで、今回は冒頭に千之丞さんの解説つき。
中世まで完成したものを古典、それ以後を新作というそうで、『死神』は西洋の寓話?を落語にしたものを、20年ほど前に狂言に作り変えたということ。新作が繰り返し演じられるのは珍しく、他の1回で終わってしまう新作に対し、古典における狂言の形式にこだわらなかったことが、これまで50回以上公演されている理由ではないかとおっしゃっていました。
さて、なぜ中世までを古典と言うかといえば、戦後になるまで新作が作られなかったためなんだとか。江戸時代、能や狂言は大名などのお抱えであったため、所望された演目以外は演じることができず、自然定まったものだけが残っていった、というわけです。
ちなみに、庶民は見ることができないので、特別にお呼ばれした時には"お"をつけて『お能』『お狂言』と呼んだそうです。だから今でも、歌舞伎に"お"はつきません。
私は門外漢なので、あえて見たことのない演目を選んで観に行きます。ですから他の役者さんとの違いは分からないのですが、この日は皆、当たり役なんだそうです。死神――確かに奇妙といえば奇妙。

『萩狂言』
大名 茂山千作 ・ 太郎冠者 茂山茂 ・ 庭の亭主 茂山千三郎
遠国の大名が太郎冠者の案内で萩が見ごろの庭を見にいく。庭の亭主は必ず歌を所望するというので、太郎冠者が萩を読み込んだ和歌を教えるが、風流とは程遠い大名にはさっぱり覚えられない。
ニッと笑う千作さんのお茶目さが魅力。80半ばとは思えないハリのあるお声や演技に、昨年見たときよりお元気なのではないかと思った。舞台を降りるととても小さな人だが、あの大きさはさすが役者というべき。この人がいるから、一門の舞台には、いつも楽しさがにじみ出ているのだろうな。

『月見座頭』
座頭 茂山千之丞 ・ 上京の男 茂山正邦
十五夜、月の代わりに虫の音を楽しもうと、1人の座頭が野辺に出かけた。そこへ月見に来た男と意気投合し酒宴となる。謡い、舞って良い気分で別れるが、男は途中でからかってやろうと立ち戻ると、別人を装って喧嘩をふっかけ、座頭を引き倒してしまう。
目を閉じ、杖を頼りに歩く千之丞さんの静かな演技に惹かれた。情緒豊かな表現力。謡いの一ヶ所でプッと吹いてしまったが、誰も笑わないので笑うところではなかったのだろうか。

『死神』
男 茂山千五郎 ・ 死神 茂山あきら ・ 召使 丸山やすし 茂山茂 茂山童司 ・ 奥方 松本薫
借金に追われた男が、自殺を考えているところへ死神が現れる。なぜか男を気に入り、死ぬ病人と助かる病人の見分け方を教える。足元に死神がいるときは助かるので呪文を唱え追い払えというのだ。かくて名医と呼ばれるようになった男だったが、足元にいる死神がいなくなり、再び金に困り始める。重病の長者をなんとか助けてくれと依頼され、出かけていくがやはり枕元。金に目が眩んだ男は一計を案じ――
千五郎さんは「おるよな、こんなおっちゃん」な調子のいい男。あきらさんの飄々とした死神。どちらもいい奴なのか悪い奴なのか。

ラヴ・レターズ

2005-08-17 | 観劇
寺脇康文  戸田恵子
作 A.R.ガーニー  訳・演出 青井陽治  in シアター・ドラマシティ

真面目なアンディと自由奔放なメリッサ。幼い頃からかけがえのない相手として想う2人が、違う道を歩み、時に重なりながら交わし続ける手紙のやりとり。

もう16回目なんですね。そんなに続くならば1度観なくてはと足を運ぶ。
会場内はレディースデーなのかといわんばかりに女性客で埋め尽くされていた。
もちろん、今作は男性が見ても充分面白いはずだが、乙女は寺脇氏の爽やかなアンディに心ときめかざる得ない。
カッコいいなぁ。周りにいないものか。(いません。いても相手にされません)
それにいい声だー。ぜひ京極堂を……あわわわわ。失礼。
子供時代から始まったので、
「ア、アンパンマン……!!」
と、つい心で戸田さんに呼びかけてしまったのは謝ります。ごめんなさい。TVと寸分変わらぬ素敵なお声と演技でした。
音楽もないライティングだけの朗読劇とあって、役者の力に左右されるところが大きいと思うが、両氏はさすがである。
後半、戸田さんの悲痛な涙声には、こちらもずっと目が潤みっぱなしだった。
寺脇さんの、優しく切ない声には胸が痛くなった。
こんなふうに生涯、深く心を通じ合わせる相手に出会うことができたら、と願わずにはいられない。それはどんなに悲しくても幸運なことだろう。
あまりに良すぎたので、他のペアはちょっと観れない感じだ。
ああ、もう1回観たいなぁ。

キレイ ―神様と待ち合わせした女―

2005-08-07 | 観劇
鈴木蘭々 高岡早紀 阿部サダヲ 片桐はいり 橋本じゅん 宮藤官九郎 大浦龍宇一 松尾スズキ 秋山菜津子 岡本健一 ほか
作・演出 松尾スズキ  in シアターBRAVA!

『ここ』ではない日本。3つの国が対立する中、少女(鈴木)が地下から出る。記憶はない。最後に「穢れた」という言葉を聞いたから、名前は『ケガレ』  リサイクル加工食品会社に回収したダイズ兵の死体を売るカネコ組に拾われ、小銭を溜めることと、ハリコナ(阿部)にキレイな花を見せてもらうことを楽しみに暮らす。大人になったケガレ(高岡)はそんな自分を辿って、忘れた地下での忌まわしい出来事を思い出していく。過去と未来が入り組みながら、アイデンティティを取り戻していく少女の軌跡。

あとでキャスト確認してびっくりしたんだけど、蘭々ちゃんに変更してたんだねぇ。酒井若菜だと思い込んでたからさ。違う顔に見えるなぁ、と4時間弱、若菜に見える表情を探してしまった。遠かったからさ……そりゃ見つからないさ。
クドカンに会いたくて会いたくて、追加公演でやっとチケットを手に入れた今作。
良かったっす、クドカンさん。脚本、監督だけでなく役者としても素敵です。背、意外と高いですね。やじきたの宣伝でTVに出てたほわんとしたあなたが、あんなにカッコいいとは意外でした。悪役でしたけど。舞台映えするハリのある声にも驚きました。ウーマンリブ、がんばってチケット取ります。
はっ、ついラブレターを書いてしまった。舞台の感想に戻る。
大阪初日だったからか、一幕はなんとなくぎこちない気がした。私は耳が悪い(気がする)ので聞き取れないせりふが多かった。そのため皆が心持ち早口で勢い込んでいるような印象を受けた。二幕では少し落ち着き、見やすくなった。
TVで見る高岡早紀は華奢で神経質な雰囲気があまり好きになれなかったが、案外舞台ではいいなと思った。スタイルがよく上品だ。蘭々と同一人物の設定は違和感がなく、まったく違うはずなのに重なって見えたりもした。
岡本健一もいい。阿部サダヲが岡本健一になるわけはないのだが、なってしまうのだから面白い。カッコつけで、賢くなってもダメダメで愛すべき人物だ。過去のケガレとハリコナが微笑ましいカップルなので、その対比も良かった。
反対に秋山菜津子は過去も未来も演じ、それが別人のようであった。過去は可愛らしく、未来は美しい。ケガレとの友情は心に響く。
豆豆橋本じゅんは……気持ち悪かったなぁ。でも物語上一番不幸でオイシイ役だったのは彼である。お笑い担当なのに(全員そうなんだけど)「これが生き恥だ! 生き恥をさらすことが生きている実感だ!」には、思わず納得させられてしまった。
ミュージカル専門の役者はまったく出ていないはずなので、熱唱後に拍手が起きないのは致し方ないか。ミュージカルファンで、これから観る予定のある方は、そこのところ大目に。
大人計画ファンも、私に対して大目に。

LAST SHOW  +α

2005-08-07 | 観劇
原子力の廃棄物処理場について、物語上不要でないかという意見があるようなので、生意気ながら(いつものことである)少々見解なんぞを。

確かにストーリーだけを追えば不要でしょう。しかし、舞台上「高速増殖炉建設」という言葉は繰り返されます。
つまり「ここは原発を抱える街である」ということ。その街に暮らす人々は日常的にそれを意識しなくてはならない。登場人物もしかり、何気なく過ごしながらもいつも一抹の不安を抱えている。
原発の不安は物語の不安につながるが、現実の私たちの社会が抱えている問題故に、その不安は観客にも容易に想像がつきやすい。最後の爆発もまた、これから起こる惨劇に対する悪い予感を誘引するものであり、反対に外の大きな出来事と無関係に動く人々に対しての異常さを感じさせる演出と取れる。
親子の愛情も、食べると言う行為も、原発も、指し示す方向は同じである。相乗効果をもって、私たちに人間の業というものを投げかけているのだ。

そういえば、北村有起哉って五足の人だったんだよね。関西弁上手いね~。関西の役者さんだと思ってたよ。
清盛の耳になって禿頭(カムロと読んでくれ)にしてからが特にいい感じ。今回の役も汚れてない率直な人柄が良かったと思うであります。

LAST SHOW

2005-08-06 | 観劇
風間杜夫 永作博美 北村有起哉 古田新太 中山祐一朗 市川しんぺー 
作・演出 長塚圭史  in シアター・ドラマシティ

琢哉(北村)は初のディレクター番組で、捨てられた動物を引き取っていることで話題の渡部(古田)のアットホームなドキュメンタリーを撮ろうと張り切っていた。だが、カメラマンの中島(中山)に渡部の裏を撮れと説得されてしまう。夫の才能を信じて支える新婚の妻・美弥子(永作)は名子役で有名だったが、今は生活のためのバラエティーばかり。そんな2人の元へ幼い頃に別れた父(風間)が訊ねてくる。父の奇怪な行動、渡部の謎。物語は恐怖へと転がり始める。

コメディ風味のサスペンスというべきか。
望もうと望むまいと人は生まれる。その事実を踏まえた上で、愛情はどう表現すればいいのか。愛情とは何か。
この命題に共通の答えはない。私たちは演出家個人の、もしくは物語のために選んだ答えのうちの1つを見るだけである。納得できるかできないかは人ぞれぞれの価値観によるだろう。仕方ない、と思う人もいれば、生理的に許せない人もいるだろう。
すべての親がすべての子供を無条件に愛せるわけではない。それが現実だ。
まともな人はそれを認められない。道義的におかしいと思う。そこに疑問を投げかけたらどうなるだろうか。もしその存在が他の愛を阻害することになったなら。
生まれてくるはずだった子供に「あなたがいい、あなたじゃなきゃ嫌」と言った美弥子。「生まれたかった」と言った子供。
生まれ、愛される可能性だけは奪ってはいけない。その権利は誰にもない。
「食べちゃいたいくらい可愛い」と人はいう。では実際食べたらどうなる。その人の血と肉が自分をつくり、その人を理解することができるだろうか。食べられた側は愛されたと実感してくれるだろうか。なぜ自分は父に憎まれたのか。なぜ子供は奪われてしまったのか、その答えは見つかるだろうか。

風間杜夫を見たのは2回目である。前回は仲代達矢との2人芝居『愛は謎の変奏曲』だった。TVで有名な俳優を舞台で見てガッカリするという話はよく聞くが、上手い人はどこで見ても上手いものである。前回とまったく違ったが、気味の悪さ、不安感を与える人物像がとても恐く似合っていた。この手の役は実力と存在感が必要なのでぴったり。
他の役者陣も若いが上手い人ばかりでした。人数が少ないからか、それぞれの役柄がしっかりしている。もしかしたら当てて脚本書いたのかもしれませんね。古田新太につられて観にいったのだけど、相変わらず頓狂な役が似合った。カッコいい役やらせたら(遠目で)本当にカッコいいのに。
最後列だったので北村有起哉がユースケサンタマリア、中山祐一朗が八嶋智人に見えた。すんません。
まとまりが悪いが、あまり明るい気分になれない話だったので無理やり終わる。

水平線ホテル

2005-07-25 | 観劇
劇団M.O.P 作・演出 マキノノゾミ in 松下IMPホール

第2次世界大戦下のイタリア。世界的スパイ【GGX】の情報を追って秘密警察によって占拠されたホテルオリッゾンテ。【GGX】は一体誰なのか? 秘密警察を出し抜き、宿泊客たちは無事脱出することができるのか?

――下手な説明で申し訳ない。
6年ぶりの劇団員総出演だそうです。
はて、初めてM.O.Pを見たのはそれくらいだが『サニー・サイド・ウォーク』だろうか……と思って調べたら、その1つ前『最初の嘘と最後の秘密』でした。そりゃそうだ。緑子さん出てなかったもん。しかしタイトルといいチラシといい、面白そうだなぁ。再演してくれないかなぁ。『ある日、嵐のように』(NHK)っぽいかなぁ。いや『ジンジャーブレッドレディはなぜアル中になったのか』のが近い? 『ちゃっかり八兵衛』じゃないわな。
閑話休題。近鉄小劇場亡き後、ワッハ上方を経てIMPホールである。近小の舞台は小さいように感じていたので、むしろ良かったようにさえ思う。でもここ、案内の人いないのね。自分の席が分からず右往左往し、とりあえず一番後ろまで登って会場の様子を眺めている演出家さんとかち合ったが、思わず目をそらして逃げた。ワッハでも入口ですれ違って怪訝な顔をされた前科がある。私が向こうを知っていても、向こうは私を知らないので挨拶しても驚かせるしな。まさか「マキノさんサインください! ついでに私の席はどこでしょう!?」てわけにもいかない。またしても怪しい軌跡を残し、場内を彷徨った。
久しぶりの緑子さん、やはり上手い。ゆっくりと暗転していく場面の首の動き、素晴らしかった。ここはどの役者さんも上手いのだが、緑子さんが出ると舞台に華が開く。マキノ氏の演出の面白さは人間模様にあるが、氏の描く中で最も魅力的なのは、緑子さん演じる強さと切なさを胸に抱いた女性だろう。
正直言うと、緑子さんと小市さんが出ていれば満足なのである。今回はこの2人が恋人役だったのでなお嬉しい。M.O.Pの看板と言えば緑子・三上なのだが、どっちも存在感ありありキャラなので、並ぶと濃すぎっちゅーか……小市さんくらいがちょうどいいなぁ、と思うのですが、いかがでしょう? 楽日の挨拶の際も仲が良さそうで、終了後も好感の持てるカップルでしたよ。
マキノ氏の作品は「悪人が出てこない」と言われるらしい。これ、正確には出ては来るけどどこかコミカルで憎みきれない、なんでしょうね。それから最近は『黒いハンカチーフ』で目指した映画『スティング』のように、危機的状況でも絶対主人公たちが一枚上手、生き残ってスカッとするというのもありますね。エンディングで、もしかしてレイ生き残ってるんじゃ!?と期待したが、さすがにそれは無理だった。敵は欺けても病は欺けないのね。そして脂っこい(汗くさいわけではない)カップルが……
しばらく1年1本ペースが続くようである。鬼が笑っても来年の案内が待ち遠しい。