櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

響きと踊り(オイリュトミー:レッスンから)

2015-04-23 | レッスン・WSノート
子どものころ感動した音楽が心の中でいつまでも響き続けている。
心に響いた言葉は、いつしか人生を支える杖とさえなる。
響き、とは。
何かが響く、とは。
いまこの音は、どんな風に響いてくるのだろうか。
彼が発するこの言葉は、いかなる響き方で私の心に届いてくるのだろうか。

そんなことに思い馳せながら音や言葉に耳を澄まし、それらが震わせている空気や熱の変化にカラダの動きで溶けこんでゆく。
身を軽くし、関節を和らげ、空気と一緒に音や言葉に揺さぶられ震えながら、響きそのものに近づいてゆく。
そんなことができたら、私たちは、私たちの心と心の関係を、私たちと世界の関係を、さらに私たち自身を、もっと深く受け止めることが出来るのではなかろうか。という思いが、オイリュトミーという踊りには託されている。

この、オイリュトミーを学び、自分のダンスクラスに取り入れて教えるようになって長い。
週5コマあるレッスンの中で、毎週水曜日の夜7時と、土曜日の午後1時。二つのコマでオイリュトミーの練習を行う。

水曜日は作品練習を主としたオイリュトミークラス、土曜日はオイリュトミーの初級作品と現代ダンスの作品を交互に楽しむレギュラークラス。どちらか片方に来る人、両方に来る人、都合によって交互に来る人、様々な参加の仕方で練習を楽しんでいる。

土曜日クラスのオイリュトミーでは「リグ・ヴェーダ」というインドの古典の冒頭詩を踊っている。
基本の動きだけで構成したシンプルな振り付けを踊りながら、宇宙の始まりを格調高く歌う言葉に身を浸す。
踊りながら、まだ何も無い世界に現れた生命の始まりにイメージを巡らす。
このオイリュトミーと交互に練習している現代ダンスにもその体験は反映して、メンバーの動きはどこか静かで大きな呼吸をしているようでもある。
まだ開いて日が浅いクラスなので人数も少なく、じっくりと会話をしながら練習をすすめる余裕が、このクラスにはある。
踊る、ということが日々の生活にどんなふうに結びついているか、という話題がよく出る。そこから踊り独特の感覚の育て方や、美意識や、あるいは哲学的な話題になることもある。踊りながらでないと出て来ない会話もまた、ひとつの響きかもしれない。
むつかしい動きをマスターするよりも、踊りながら何に想いを馳せ、何を感じ取ってゆくか。
そのようなことが、はるかに大事な気がする。


水曜日のクラスは、言葉を踊るレッスンと音楽を踊るレッスンを週替わりで行なう。
4/22の回では、ピアニストに来てもらって音楽の響きと一体になって踊る練習を進めた。
いま取り上げている曲は、バッハの無伴奏チェロ組曲の第一番プレリュード、そのピアノ版である。
チェロの為に書かれた譜面は自然に歌える音の高さで耳にも体にも優しい。
それをピアノで弾くと、音の粒がくっきりと捉えやすくなる。
音の一つ一つに個性があるのが、わかる。
それを丹念に身体で感じ取って動きに落とし込んでゆくと、ふだんは聴覚の奥にまどろんでいた世界がカタチや熱を帯びて、思いがけない雰囲気が広がり始める。
1フレーズずつ、ゆっくり弾いてもらう。
そして聞こえてくる音の一粒一粒に丁寧に身振りに合わせてゆく。
なだらかな音の階段を、あるいは柔らかな音の跳躍を、カラダが受け止めてゆく。
カラダが歌う。
ゆっくり、そして徐々に本当の速さに。やがて一つのメロディに溶けこんだ身体の動きが生まれてくる。
その瞬間、音と心が響き始める。
そんな作業を繰り返しながら、やがて一曲を踊り終える日のレッスンは感動的だとクラスメンバーは言う。
僕もそう思う、心から。



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