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りゅういちの心象風景現像所

これでもきままな日記のつもり

ヒミツノヒビキ 瀬戸屋敷編

2010-04-20 03:37:25 | 秀 春 作 品
昨年9月10月に3会場を巡回した造形作家秀春氏の個展の話です。今日は個展「ヒミツノヒビキ」のスタート地点となった「あしがり郷瀬戸屋敷」での展示の様子をご紹介します。

秀春氏は生まれ育った足柄に戻り、この地域に創作のための拠点を置いています。
展示プランの精度を高める意味もあって、個展の企画を立ち上げた際はかならず瀬戸屋敷の土蔵を使ってシミュレーションをします。音楽で言うところのリハーサルやゲネプロに近いですね。この古民家は開成町が管理運営をしていて使い勝手もよいのですが、なんといってもこの土蔵の空間が魅力的。長い時間をかけていろんなアイデアを試すには、もってこいの場所なのです。また、秀春氏がはじめての個展を開いた、氏にとって大切な場所でもあります。

      

江戸時代の名主の屋敷がそっくりそのまま、よい状態で残されています。見渡す限りの田んぼに囲まれていますが、そもそも水の豊富な場所で、石でしっかり作られた水路が屋敷を囲み、農業用水がなかなかの勢いで流れています。水にまつわる逸話や苦労話の多い土地でもあり、二宮尊徳の功績とも無縁ではありません。小田原、栢山にある二宮尊徳の生家はここから近いのです。
開成町のお隣、南足柄市にはAsahiビールの工場があるのですが、このあたりの良質な水資源に目を付けての工場建設だったのですね。実は、ビール工場見学のルートにこの瀬戸屋敷が織り込まれていることもあって、大型バスでいろんな方々がやってくる場所でもあります。芸術目当てでない方々の感触を得ることができる。多義的に、広い空間である土蔵を使えることは大きな利点でもあります。
興味のある方は開成町のHPをご覧ください。


        

秀春氏の作品世界をひとくちで言うのは難しいのですが、僕なりの言葉で譬えるなら「造形物語」とも呼ぶべき世界なのだと思っています。
作品によって、あるいは作品と作品の関係から、背景に語りが見えてくるような瞬間があります。見ているうちに物語の存在を感じることができるのです。僕はそんな背景まで写し取るような写真が撮れたらなぁ、という思いでファインダーをのぞいています。

さて、このごろでは多種多様なギャラリーが揃っていて、作品発表の場も根気づよく探して行けば、作品を主体にした場を選ぶことができるようになってきました。ですが、この土蔵を満たすような光はいわゆるギャラリーでは得難い質の光だと思っています。

        

日本の伝統的な家屋を満たすひかりには、どこか深いところで共鳴し合うようなトーンがあります。それが、例えば高度に洗練された屋敷や書院、神社や仏閣などに限ったものではなく、一地方の名主の屋敷にまで、あまねく存在している。谷崎潤一郎の言っていた「陰翳礼賛」の感受性は、決して特殊なものではないのだ、と思うと同時に、この国の精神風土に深く静かにあり続けていたことを教えてくれるように思えるのです。
ただ、カメラで捕まえるのは本当に難しい。
魅力的なだけに、何度も悔しい思いをさせられている場所でもあります。

        














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