錯視を使った絵画で有名な、M・C・エッシャー の作品に、 『 上昇と下降 』 Ascending and Descending というのがあります。
城の屋上の階段を、永遠に上り続けると同時に下り続ける人々が描かれています。
筆者は昔からエッシャーの不思議な世界の大ファンで、気の遠くなりそうな白と黒だけのエッシャー作品のジグソーパズルに何枚も挑戦したりしておりました。
『 上昇と下降 』 も、暗示的かつ神秘的で、大好きな作品の一つです。
でも、最近、『 上昇と下降 』 という言葉を聞くと、違うイメージが浮かぶようになりました。
一つはフランス語と英語の関係。
キャパの小さい筆者は、フランス語に力を入れると英語を忘れ、英語に力を入れるとフランス語を忘れます。
フランス語ばかりやっていたら、冗談抜きで、英語のABCが一時分からなくなり、大人の日本人として、かなり恥ずかしい思いをしました。
また、her sons などの表現に、違和感を感じました。…どうして名詞が男性複数なのに、所有代名詞が女性単数!?…と、感じたのです。
もう一つは、フランス語、英語、それぞれにおいて。
自分が一時到達したレベルでも、放っておくと、どんどん下がっていきます。維持するためだけにも、かなりの努力が必要です。
一時、「 フランス語で考える 」 ことを心がけていた時期は、かなりの長さの文章を書くことが出来ましたが、現在は、さっぱりです。
また、昨年の今頃は、「 当然!」 と思っていた、英語の information は Uncountable noun ( 不可算名詞 ) ということを、一昨日まで、すっかり忘れていました。
日常生活でフランス語にも英語にも全くかかわりない実生活を送っている筆者は、普通に生活しているだけで、知っていたはずのことを、どんどん 忘れていく一方です。
レベルを上げようと努力する、ということは、実は、レベルを下げないように努力している、ということなのかもしれません。
フランス語、英語を両立させるための、これからの学習方法を、現在模索中です。
上昇は難しいとしても、下降をなるべく食い止めていきたいと思います。
『 上昇と下降 』 の絵の中の人物達が、上昇していると思いながら下降し、下降していると思いながらも上昇し、結局は変わらぬ高さを延々と巡っているように。
この絵だけを見ていると、シジフォスの神話のように救いがない感じもしますが、少なくとも、「 ( ほぼ ) 同じ高さを保っている 」 という点では、筆者の願いと合致しています。
ちなみに、「上昇する」:ascend の語源はラテン語の asendere 、「下降する」 :descend の語源 は desendere だそうです。
英語では ascend 、descend の両方が残っていますが、本家に近いラテン語の直系子孫 : decendant のフランス語の方は、動詞 descendre はありますが、ascendre という動詞はないようです。
ascendre の痕跡は、
ascendence (アサンダンス)「先祖、血統、上昇」
ascendant (アサンダン) 「上昇する」
ascenseur (アサンスール)「エレベーター」
ascension (アサンシォン) 「上昇」
ascentionner (アサンショネ) 「登攀する」
等の形でのみ、残っています。
フランス語(にあったとおぼしき)動詞 ascendre がどこへ行ってしまったのかは、目下、謎です。
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何屋もエッシャーが好きで、エッシャーの展覧会があると必ず観に行きます。「上昇と下降」は、あまりにも有名な絵ですが、原題は全く意識していませんでした。というか、そのような英単語を知らなかった(恥)
ascenseurの語源も分かってスッキリです。なんで「エレベーター」が、こんな綴りの単語なの?って思ってました。思ったなら調べればいいのですが‥だから万年初級者から抜け出せないんだよなぁ。
でも、消えた動詞の謎、など考えていくと、とても面白いですね。これからは、もっと考えてみよう。
『上昇と下降』の英語の題名は、私もつい最近知りました! descend に対する ascend という語も、その時、はじめて知ったのですよ~
英語では残っていて、ご先祖のラテン語に近いフランス語にない語って、他にもあるみたいです。
「方言」には、昔の言葉が地方に残ったことに起源するものがあるそうですが、消えた ascendre もそんな現象のひとつなのでしょうか…う~ん、ミステリーです!!
簡単なことも「これ知ってたはずなのに!」ってなりますよね。
なのでそのあと英語に力入れ始めたら、今度はドイツ語があやしくなって・・・(汗)
フランス語とドイツ語を同時にやり始めの頃は、二つの言語が混じってたし、二つ以上の外国語の両立って難しいですよね。
Krisさんは、たくさんの外国語を学ばれているのですよね。私もイタリア語とドイツ語を学びたいと思っていましたが、英語もフランス語もまだまだ怪しいので、次には行けそうもありません。
トルシエ氏が日本の監督だった頃、日本のマスコミのインタビューに英語で答えている最中、興奮してくると、時々フランス語の単語が混ざっていたりしましたよね。フランス人でもフランス語と英語が混じるのね~(^_^;)と思って聞いておりました。
トルシエ氏は興奮して話されるので混じってしまったのでしょうか…???
反面、問題なくスイッチしておられる方もたくさんおられますよね。
外国語の切り替えって、どうすればスムーズに行くのでしょう…
本当に難しいものですね。