シンガポールでは、これまでに書いた映画のほか、5本の映画を見てきました。そのうちの4本を簡単にご紹介しておきます。
『Junga(ジュンガ)』(インド映画/タミル語)
ヴィジャイ・セードゥパティの主演なので、わくわくしながら見に行ったのですが、伝説のボスと言われるジュンガ(ヴィジャイ・セードゥパティ)のこれまでを辿る、という筋立てで、A.ラージェーンドラン(丸坊主の細身のコメディアン)やヨーギー・バーブ(アフロヘアのコメディアン)らが脇を固める、丸っきりのコメディ映画でした。コメディ映画が悪いわけではないのですが、ヴィジャイ・セードゥパティにやらせるには軽すぎる役で、いまひとつ彼らしさが出ていません。冒頭、昔はバスの車掌をしていて...というところで、お、ラジニカーントのパロディか、と期待したのですが、映画プロデューサーとしてパリに乗り込んでとんでもなく豪華なホテルに泊まったり、母親(これもコメディエンヌのサランヤ・ポンヴァンナン)を助けるお金を作るために大金持ちの娘(サエーシャー・サイガル)を誘拐したりと、もう筋がメチャメチャ。ヴィジャイ・セードゥパティの自己プロデュース作品なのですが、あんたは俳優だけしてなさい、と言いたくなる作品でした。
Junga Official Trailer | Vijay Sethupathi, Sayyeshaa, Madonna Sebastian | Siddharth Vipin | Gokul
『Satyameva Jayate(真実のみが勝利する)』(インド映画/ヒンディー語)
これも、8月15日に合わせて公開された作品ですが、一番やってはいけない、でもインド映画ではたびたび繰り返される、「法の裁きを我が手で下す」作品でした。幼い時に、警官だった父親が汚職の汚名を着せられて、抗議の焼身自殺をしたことから、汚職警官を人一倍憎む画家のヴィール(ジョン・アブラハム)。袖の下を要求したり、罪なき人をひどい目にあわせる警官がいると、彼らを襲って焼死させます。やがて、警察側もその意図を知り、有能な警部シヴ(マノージュ・バージペーイー)に事件を担当させ、犯人を追い詰めようとします。ところが、実はシヴとヴィールは兄弟だったのでした...。というストーリーで、冒頭から遺体を焼く薪の山が組まれた上に汚職警官が縛り付けられ、生きたまま燃やされる、というショッキングなシーンが出て来ますが、一般道路の上にその薪の山をどうやって築いたんだ? 等々、疑問が山と出てくる設定ばかり。国旗に敬礼するという愛国シーンが強調されて何度も登場するものの、いかにも形だけ、という作品で残念でした。
Official Trailer: Satyameva Jayate | John Abraham | Manoj Bajpayee | Aisha S | Milap Milan Zaveri
『Buy Bust(麻薬捜査)』(フィリピン映画)
実はこの映画、IMDbで『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』の主演女優チュティモン・ジョンジャルーンスックジンを調べたら、出演作の中にリストアップされていたので見るのを楽しみにしていたのでした。ところが、スカッドの新メンバーの訓練シーンから始まり、マニラ最大のスラムと言われるトンドで悪の親玉を始末するための作戦が繰り広げられる、というストーリーなのですが、全然リンちゃんことチュティモンが出て来ません。とうとう最後まで出てこずじまいで、見終わって脱力してしまいました。映画は、このトンドでの大作戦シーンが約1時間を占め、住民全員を敵に回してしまったスカッドが、1人、また1人と殲滅される中、ヒロインのマニガン(アン・カーティス)がいかに生き残っていくか、というのがそれはそれはしつこく描かれます。アクション映画としてはすごいと言えますが、いくら立ち向かって来たとは言え、そんなに一般人を殺してもいいの???という、ドゥテルテ大統領の顔が後ろに見えるような作品でした。
BUYBUST (2018) Official Trailer
『Nong, Pee, Teerak/Brother of the Year(一番の兄貴)』(タイ映画)
こちらは、さわやかなタイ映画でした。タイ人の母親と西洋人の父親を持つ兄妹は、父親がいなくなってしまったあと田舎で母の手で育てられ、今はバンコクの家に住んでいます。妹(ウラッサヤー・セパーバン)が日本留学から帰国してみると、生活にも女性にもだらしない兄貴(サニー・スワンメタノン)のせいで家の中はメチャクチャ。妹は日本企業に就職し、日タイ混血の恋人(ニックン)もできて日本人の母親にも気に入られ、結婚の運びになるのですが、兄貴がすねて結婚式をすっぽかす始末。夫が日本に転勤になり、そこで子供も生まれたのに、兄貴は一度も訪ねることもせず...、という、大人になり切れない兄貴のダメさ加減を描く作品です。ニックンはもちろんのこと、ウラッサヤー・セパーバンの感じの良さが映画をさわやかサワディー(笑)にしていて、気持ちよく見ていられました。ただ、日本関係の描写は「?」なものも多く、ニックンの名前は何と「モチ」さん。彼の母親役や上司役は日本人が演じており、かろうじて文化摩擦映画から救っていますが、もうちょっと細部もリアルにしてくれてもいいのになあ、と思いました。
BROTHER OF THE YEAR: Official International Trailer (2018) | GDH
これらの作品は、みんなゴールデン・ヴィレッジ(GV)のシネコンで見たのですが、シンガポールでは四の五の言わず、年齢さえOKなら旅行者でもシニア料金である半額チケット(4.5シンガポールドル=約400円)にしてくれます(香港では、住民カードを見せろ、とかいうシネコンあり)。おまけに今回は、平日昼間に見ることを奨励するためか、「シニアお楽しみスタンプ」まであって、シニア料金で見ると1回ずつスタンプを押してくれるカードももらいました。平日の夜でシニア料金になってなくても(9.5~10シンガポールドル=約800円)気前よく押してくれるので、私も見事スタンプを7個ゲット、ホットドッグ&ホットコーヒーというセットを無料でご提供いただきました。ホットドッグ、パンにソーセージが挟んであるだけなんですが、暖かくしてあって、ケチャップ&マスタード塗り放題。1食助かりました。そうそう、最後に見たのが趙又廷(マーク・チャオ)主演・徐克(ツイ・ハーク)監督の『狄仁傑之四大天王』で、これは土曜日だったため料金が13シンガポールドル(約1100円)もした上にスタンプカードの配布はなく、おまけにCGが多用してあるだけで全然面白くなく...というわけで、紹介は省略します。ツイ・ハーク、最近は冴えませんねえ。
あと、シンガポールでは「サリーを洗濯に出す」という変なミッションもやってきました。日本だとサリーのクリーニング代が1枚2600円もするので、シンガポールの方が安いだろうと思って3枚、ブラウスと共に持ってきたのですが、3軒ほど聞いてみると「1枚15シンガポールドル(約1200円)で、2週間かかる。4~5日でやってほしいなら5割増し」というのが相場のようで、ちょっとあせりました。そして、最後の所で「あそこなら早くやってくれるかも」と紹介してもらったリトル・インディアの「Dhobi(洗濯屋)」(上写真)というお店で、サリー&ブラウスで1枚18シンガポールドル、4日で仕上げる、と言ってもらえたのでした。ここは美容室のようで、そのかたわらクリーニングも扱っているようです。まあ、こんなバカなミッションを実行なさる方はないと思いますが、ご参考までに。
その近所のお店では、タミル語映画のDVDを売っていたり、8月26日のラクシャー・バンダン祭のためのラーキー(飾り紐)も売っていたりと、まさにリトル・インディア。今回は、バンコクの最後の方でビッグ・トラブルが発生し、それを数日引きずっていたため内心どよ~んとしていたのですが、リトル・インディアのヒンドゥー寺院に参ったおかげか何とか解決してやれやれ。でもホッとしたのも束の間、今度はホテルのWifiの調子が悪くなるという災難に見舞われ、ものすごくしんどいシンガポール滞在となりました。今、香港に移動してきて、さくさくとネットが通じる嬉しさをかみしめています。来年からは大学の非常勤の授業がなくなるので(定年で雇い止めとなります)、無理して夏休みに来なくてもいいのですが、さて今度は旅行費用が捻出できるかが問題ですね。資料収集、情報収集のためにも、また来年もシンガポールに来られるようがんばることにします。
これ、『牢獄処刑人』のエリック・マッティ監督の最新作で、製作発表から公開まで延々と待たされて、すっかり待ちくたびれてしまった作品なのです。
撮影に入る前に、主演のアン・カーティス、ブランドン・ヴェラ(格闘家)がトレーニングしている動画などがネットにアップされたりして、むちゃくちゃ期待していたのですが。
おそらく、日本でもなんらかの形で上映されることになると思っているので、それまでじっと我慢ですね。
『牢獄処刑人』の方が、ドラマの組み立て方としてはずっとうまかったと思います。
ヒロイン映画にしたかったのでしょうか、アン・カーティスのがんばりぶりはすごかったですが.....。
彼女とヴィン・ディーゼルにちょっと似た若い男優(これがブランドン・ヴェラでしょうか)が活躍するアクションはいいかげんうんざりするぐらい見せてくれるものの、お、いいな、と思うアクションシーンも少なかったです。
悪の親玉も、単なる狂気の人みたいな描き方で凄みがなかったし...と文句ばっかり言ってますが、ああいうしつこい系&汚れ系アクションは好きな人もいるかも知れないので、日本でどこかが買うかも知れませんね。
トンドのドローン空撮が一番の迫力でした。